第42話 気炎万丈
ランタンの炎を足に浴びた
「
隆二の忠告で
直感でわかった…破裂すると。
直後、
俺は慌てて携えている最後のランタンを自身の足元に投げつけた。
立ち昇る炎に隠れタブレットを構え、身を屈める。
ぐっ…。
咄嗟に防御したが、いくつか防ぎきれずに針が体や脚に刺さっている。
辺りを見渡すと洞窟の天井、壁、地面が、おびただしい数の針で埋め尽くされていた。
不幸中の幸いか
横目で隆二を見やると涼しい顔で立っていた。
どうやら
「ムーア…ムーア」
遠くからステラさんの声が聞こえる。
俺は慌てて出口付近に目を向けた。
無数の針はイリーナたちのところまで届いており、ムーアが皆を庇い無数の針を一身に受け止めていた。ムーアはそのまま地面に倒れ込み動かなくなる。
くそっ、こんな広範囲に攻撃を仕掛けてくるなんて。
周囲の針はすぐに水となり再び洞窟の中央へと集まり始めた。
「真芽夫!また体が元に戻るぞ」
イリーナたちも心配だが
俺がそう考えるより早く隆二は駆け出していた。
まだ形状が定まっていない
今更、剣での攻撃か?
俺の疑問を打ち破るかの如く、大地が裂け
“
…なんだこの熱気は、まさか…溶岩?
突然の溶岩の発生で足元の水は一瞬にして水蒸気となる。
「あっつ!危うく自分まで丸焦げになることだった」
「隆二、一体何をしたんだ?」
「
「いや、簡単に言うが常識的に考えて無理だろ…」
「俺なら出来て当然だろ!」
隆二は不敵な笑みを浮かべる。
「…ったく、その自信はどっからくるんだよ」
正直、今まで剣聖とやらの力をナメていた。
名前負けしていると思ってた自分が恥ずかしい。
「
突然、隆二が俺を突き飛ばす。
「ぐっ!」
倒れざまに隆二に目をやると足元から突き出た水の槍が隆二の腹部を貫いていた。
よく見ると隆二の足元にかなり小さくなり
「このっ!」
俺は
イリーナから授かった盾の魔法も当の昔に効力を失っている。一度でもあの槍を受ければ致命傷だ。
こいつを殺らなきゃ隆二が死ぬ。
サイズダウンしたお陰か
俺はタブレットで槍をいなしながら
キュルルルル。
なんだ…?
思いのほかタブレットでの攻撃が効いている。
もしかしてチートアイテムはマナで構成されていないのか?
俺は立て続けにタブレットでの打撃を浴びせ、疑問が確信に変わる。
次第に
「これで、終わりだ!」
俺はトドメの一撃を
勝利を確信したその時、
至近距離で小型の爆弾が炸裂したような衝撃が全身を襲う…。
俺はそのまま膝をついた…。
くっ…体が動かない。また俺は何もできずに殺られるのか。
俺は全てを諦め目を瞑った。
「ぶっ焦がせ!」
“
その時かつて俺を導いた、聞き覚えのある怒号が響き渡る。
俺が
周囲を包む熱気の元を辿ると、そこには…。
「アリス!」
「まったくだらし無いわね」
俺は見慣れた元女神の顔を見るとどこか安心したのか、そのまま意識が遠のいていく。
「あっ、ちょっと…」
アリスが何かを言っている気がするが目の前が真っ暗になった。
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気が付くと俺はベッドの上にいた。
起き上がろうと体を起こそうとするが全身が悲鳴を上げているのと、二人の元女神の抱擁により、俺の左右の手は拘束されていた。
赤レンガの部屋の壁を見てサルーバの町に戻れたんだと安堵のため息が漏れる。
隆二やイリーナや他のみんなは無事だろうか…。
どうやらこの部屋にはベッドが一つしかなく、何故か右のベッド脇にはアリス、左のベッド脇にはりこが、俺の両手に覆い被さるように座ったまま寝ている。
…こいつら無茶して俺たちを助けに来たんだな。
徐々に体の感覚が戻ってくると俺の両手に柔らかい何かが乗っている事に気付く。
東のアリス山は
西のりこの関は小ぶりで弾力があり、なんとも収まりがいい。
「んっ…」
俺の両サイドから艶かしい声が漏れ聞こえる。
俺は本能の赴くままに両手の指を小刻みに動かしていた。
次第にアリスの吐息が荒くなる。
俺はふと…アリスの方に顔を向けるとそこには、闇夜に輝く二つの丸いなにかがアリスの背後に浮かんでいた。
「うおっ!」
「マメオ、うるさいわよ!」
「あれ…よかった、意識が戻ったんですね」
「おい…そんなことより、アリス…後ろ!」
「なによ、起きて早々」
アリスが後ろを振り向くとわなわなと体が震えていた。
「貴様!性懲りもなく!」
アリスの怒りの鉄拳が二つの浮遊物を殴り飛ばした。
「ぐへぇ〜!ひどいでわありませんか
この聞き覚えのある気持ち悪い喋り方は…。
「カリメル王子!どうしてここに?」
「こいつに王子なんて不相応よ。剥奪していいわ」
「アリス先輩。さすがに酷すぎますよ。別に変なことをされた訳でもないんですから」
「そうでありますよ。私はアリス様の全身の体毛を数えて記録に残そうと徹夜で勤しんでいたといあのに。あんまりです」
アリスとりこの表情が暗闇でも分かるぐらい一瞬にして引きつる。
「死ね!」
アリスのドスの効いた声を最後にカリメル王子はその生涯に幕を下ろした。
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