第26話 旧友


 1時間後…。

 ようやく皆が落ち着いたため、状況の整理を始める。


 とりあえずマメオ版アーサーのままだとややこしいので、前世の名前の隆二で呼ぶことになった。


 合わせて俺も外見はアーサーだが本来の中身である、マメオと呼ぶことで落とし所をつける。


 人数も増えたため、寝室からリビングに移動して話を続ける事となった

「そんじゃ、神様。とりあえずここに来た理由と、なんで俺らが入れ替わっているのか説明してくれ」


「んじゃ。まず、ここに来た理由は弊社、株式会社テンセイが倒産したからじゃ。人手不足で転生者の案内が追いつかず、契約を打ち切られての。今後の転生はAIロボットとタッチパネルでの手続きに移行したとのことじゃ」

 神様はまだ触りしか話していないのに既に涙目だ。


「まさか、デジタル化の波が異世界にまで押し寄せてきてるとは」


「でも、アリスやりこみたいにブラックな環境で働く人が減ったならいいんじゃないか。てか、今更なんだけど異世界転生の案内って金になるのか?」

 お互い見た目は変わったが、隆二りゅうじと昔みたいに会話しているのが懐かしく、ついついニヤけてしまう。


「負債は35億ミリカにのぼり自己破産の手続きをしたのじゃ。なので一文無しじゃ。何でもするから養っていただき…」

「わかった」


 何でもという魔法の言葉の影響で、元神様が話し終える前に俺は二つ返事で了承する。


 りことアリスからの視線が痛い…気がする。  


「それで?どうしてご主人様は入れ替わったにゃ」


「それなんじゃが原因はいくつかある。一番の原因はその青頭が蘇生魔法なんぞ使ったのからじゃ。蘇生魔法が禁忌とされている理由の1つが、転生者が死亡時に上位空間に魂を引っ張られるんじゃが、蘇生魔法をそこで使うと魂を器に引き戻すから互いに引っ張られて魂が思いもよらぬ方向へ飛んでしまう。アーサーが殺された時に蘇生魔法を使ったため魂が浮遊していたところで、同じ状況だったマメオの器に入り、逆にマメオの魂はアーサーの器に入ったのじゃ。


「いや、でもその話は変じゃないか?時系列でいえばアーサーが先に死んだんだろ?俺が死んだのはその数日後だぜ」


「マメオ、この前説明したけど、転生時に時間を遡って過去に戻った場合、歴史が上書きされる可能性があるの。たぶんマメオは2度目の転生時にアーサーが死んだ瞬間の過去に転生してアーサーの器に入ったから、アーサーが元の器に戻れなくなって彷徨ってたんだと思う。そこで丁度同じ状況になっていたマメオの器に入ったんじゃないかしら」


「それならアーサーっていうか、隆二の魂はアーサーが死んでからマメオが死ぬまでの数日の間、彷徨ってたってことになるのか?」


「たぶんじゃが、そうじゃの」


「危うく浮遊霊になるとこだったな」

 隆二は笑えない冗談を笑いながら言っていた。



「2度目の転生の時に、蘇生魔法で魂が引っ張られるのに、普通に転生の間?とやらに行けたのは何でだ?」


「あれはお主の精神世界で話してたにすぎん。転生の儀自体はお主の精神世界で行われる。魂が上位空間まで昇りきったら転生はできないのと、死後時間が経てば経つほど意識は薄れていくから、転生の儀は鮮度が大事なのじゃ」


「なるほどな。よくわからんが小難しい話はいいんじゃねぇか?結果を受け入れるしかねえだろ」

 馬鹿っぽく聞こえるが五郎が芯を食ったような発言をする。


 レメリアは既に話を理解する気はないようで、壁に鳥の絵を描いている。


「それより、入れ替わった魂を戻す方法は無いのか?俺はこんなとこでだらだらしている暇はねえんだ。早く王都に帰らねえと」


「儂もこんなケースは初めてじゃから何ともいえん」


「なら状況を再現するしかないか」

 隆二はおもむろに立ち上がり、俺の腰に差している細剣レイピアを抜きとる。


「えっ…」

 次の瞬間、隆二は俺の胸に細剣レイピアを突き立てた。


 皆の悲鳴が聞こえる中、俺の意識は途切れた。

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