第25話 混沌
結論から話すとマメオとアーサーの
思春期の少年と少女が入れ替わる話しなら王道展開だが、イケメンとブ男が入れ替わるなんざそうそう無い。てか、需要も低いだろう。
「まさか、アーサーとやらとマメ坊が入れ替わってたとは驚きだ」
「マメオ様が生きていて嬉しいけど、入れ替わってるってのは訳がわからにゃいにゃ」
五郎とメルルも他の皆と同様に驚いている。
「おい、イリーナ!手鏡を持ってないか?」
「ありますけど…」
ややこしいが現マメオの中の人であるアーサーがイリーナから手鏡を奪い取る。
「あれ、この顔どっかで見たことが…」
マメオ版アーサーは鏡を見て何やら考え込む。
「本当にマメなんですよね?」
「りこ、隠しててごめん。久しぶり…」
俺とりこが積もる話しをしかけたところで、マメオ版アーサーが突然の大声を上げる。
「あっー!マメって、
「えっ…俺ら会ったことありましたっけ?」
「あっそうか、俺が転生者だからわかんねえのか。
「りゅう…じ?ええっ!」
驚愕の事実に言葉を失う。
昭和や平成の頃のような話しだが、不良グループとの抗争に参加して亡くなった。
俺が引き籠もるキッカケになった親友だ。
「えっ、あの隆二さんですか?」
りこも驚いたようにマメオ版アーサーもとい、隆二を見る。そうか、りこは女神の特権で俺の前世の情報は把握していたんだっけ。
「ん、お前は誰だ?こんな可愛い娘、一度会ったら絶対忘れねえんだけど…」
「可愛いだなんてそんな事ないですよ…」
「そうよそんな事ないわよ」
隆二の言葉に照れて謙遜するりこ。
それにアリスが被せて同意する。
「ちょっと、アリス先輩そんな事ありますよ!」
「隆二…俺の顔でたらしを発動しないでくれ」
隆二は前世ではツポーツマンタイプのイケメンだった。それに天性のたらしだ。
「別に思った事を言ってるだけだよ」
「話が…わかんない」
状況についていけていない。レメリアが困惑して目を回している。
「そっか、そうだよな。とりあえず説明するから待ってくれ…」
そんな時、玄関に呼び鈴代わりに付いていた、鐘の音が鳴る。
「まったく、誰だよこんな時に」
俺は若干苛立ちながらも扉を開ける。
そこには清楚な白いドレスを着た銀髪の幼女が立っていた。
「来たのじゃ!」
見覚えのある幼女に聞き覚えのある声。そして、既にお馴染みとなりつつある展開。俺は幼女が話し終える前に扉を閉めた。
いや、ただでさえややこしい状況なんだ。これ以上、面倒事を増やさないでくれ。
俺は見なかった事にして話し合いを重ねている皆の元へ戻る。
「マメオ、誰だったのよ?」
頭を抱える俺にアリスが尋ねる。
「いや、ただの迷子だ」
「おい、真面夫!お前、迷子なら助けなきゃいけないだろ」
「ああ、待て待て、俺の言い方が悪かった。大丈夫な迷子だ」
「ああっ?迷子に大丈夫もなにもないだろうが」
隆二は絵に書いたような熱血野郎だ。変なスイッチが入り玄関に向おうとする。
すると、次の瞬間、物凄い爆音が玄関の方から聞こえてきた。
「おい!マメオ!神を無視するとは何事じゃ」
ジジイ言葉に小麦色の銀髪幼女は勢いよく俺たちがいる寝室に入ってきた。
「えっ!神様!」
「神様じゃないですか?」
アリスとりこは見覚えのある姿に声を上げる。
「ちょっと今は来られても困る。ただでさえ状況がややこしいんだ。これ以上情報量を増やさないでくれ!」
「せっかく来てやったのに、その態度はなんじゃ!」
「えっ、このチビスケが神なのか?」
五郎は神様をまじまじと見つめる。
「なんじゃこのチクチク頭は!不敬じゃぞ」
「ちょっとみんな一旦、落ち着いてくれ!」
「なあ真芽夫、お前の言ってた迷子ってこの女の子か?お前が行かねえなら俺が家まで送ってやるよ」
「誰が迷子じゃ!」
状況は混迷を極めている。
俺は早々に事態の収拾は諦めて椅子に座り、皆が落ち着くまで天を仰いだ。
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