第24話 覚醒

 アリスに促されるまま家の外に出る。今夜は月明かりに照らされて、やけに明るい夜だ。


「ねえ、あんたマメオなんでしょ?」


「…えっ!」


 唐突に図星を突かれ、俺はそれ以上言葉が出なかった。別にマメオだった事を隠していた訳でもないしバレても問題ない。


「…なんで、分かったんだ?」


「なんとなくよ。あと今のキョドった顔とか陰キャっぽい反応とかが、マメオそのものだったもん」


「悪かったな陰キャで…」


「って、ごめんなさい。そんな事を言いたかった訳じゃないの…その、助けてくれてありがとう。でもまさか、死んでから転生してまで助けてにきてくれるなんてね」


「俺もまさかこんな事になるとは思ってなかったよ。でも転生したのに、なんで数日前まで時間が遡ってたんだ?」


「ああ、それね。女神にならないと分からないことかもだけど。時間は前にしか進まない訳ではないの。後ろに戻る事もあるのよ」


「へぇ、そうなんだ」


「現にその身で体験してるでしょ」 


「その場合、元いた世界はどうなる?新しく歴史が上書きされるのか、それとも平行世界に別れるのか…」


「少なくともこの異世界では上書きされるわ。だからマメオは死なないし。私たちも生きてるのが事実であり真実になるの」


「それならなんで俺は死亡扱いになって転生したんだ?」


「それは私にも分かんないわよ。今の女神に訊いてみたら?」


「そうだな次の面談で問い詰めてやる。てかそいつ、転生時に女神じゃないって言ってたぞ」


「えっ、でも転生の儀が出来るのって女神ぐらいしか…あっ、いや、アイツがいたわ」


「もしかして神か?」


「あんたも薄々気付いてたのね。たぶん人手が足りないんだわ」


「そもそも何で女神って仕事があるんだ?営利目的なのか、神が雇用主なんだろ?」


「神っていっても下請けみたいなもので、もっと上がいるのよ」


「本社みたいなもんか」


「そうね。これ以上説明するのこのマナで形成された世界、アクアリグネの根幹を説明しないといけなくなるから、ここまで」


「ちょっとその話、気になるけど…」


「説明するのがメンドイのよ。そんな事よりにこれからどうするのよ?」


「そうだな。とりあえず今気を失ってるマメオが何者なのかによるな」


「あんたはイケメンになったからそれで満足なんでしょ。それにあんな可愛い娘たちを連れて」

 アリスは口を曲げ皮肉を言う。


「確かにイケメンになったけど、りこやメルル、五郎にばあちゃん、あとついでにアリスがいないのも寂しいもんだぜ」


「なによ!私はついでなのね。私を一番にしなさいよ」


「はは、冗談だって。とりあえず今晩は寝ようぜ」


 寝室に戻ろうと家の扉を開けようとしたらアリスに襟首を引っ張られた。


「うっ、なにすんだよ」


「また、前みたいに私と寝てくれる?」


 振り向くとアリスの目は潤んでいた。


「そうだな。元の体に戻ったらな。あとお前のイビキが収まったらな」


「はっ、何言ってんのよ。女神はイビキなんかかかないわよ」


「元女神な。ほら、馬鹿言ってないで寝るぞ」


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 こうして久々にアリスと雑談した俺は、久々にぐっすりと眠れた気がした。


 早朝。アリスと俺から全員に向けて今回の一連の転生について説明する。


 驚く一同だが、一人だけ反応が違った。


「えっ、じゃあアーサーは死んだの…」

 イリーナの顔がみるみる蒼白くなる。


「…たぶん、その可能性が高い」

 そうだ、イリーナだけはマメオではなく、アーサーの侍女だ。その事実を突きつけるのはあまりにも酷な話。


「なら、記憶喪失なんてデタラメで、今まで嘘をついてたの?」


「…ああ、すまない」


 イリーナはそのまま膝から崩れ落ちた。


 他の者も何か聞きたい事はあっただろうが、そんな空気では無くなっていた。


「あれ…イリーナ…何泣いてんだ?」

 その時、眠っていたマメオが目を覚ます。


「なんだ?知らない顔ぶれもいるじゃねえ…えっ俺?」

 マメオは俺と目が合うと、狐につままれたように目を見開いていた。


 そのことが意味するのは1つしかない。

「もしかして…お前はアーサー?」







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