第13話 新居お披露目
俺たちは丸一日掛けて、なんとか自宅の山小屋まで帰ってきた。
帰りの山道で倒した筈の
「おーい!アリスー!帰ったぞ」
なんだかんだアリスと会うのも3日ぶりだ。
あんなズボラな元女神でも、会わなかったら寂しいもんだ。
「マメオー!ざびじがっだー」
山小屋の扉を開けるとアリスが涙と鼻水を撒き散らしながら抱きついてきた。
「おいっ!アリス…ぐるじい」
女神の抱擁により、柔らかいなにかが当たる。
「マメオ様から離れなさいにゃ!」
見兼ねたメルルがアリスを引き剥がす。
「なによアンタ!てか誰よ!」
アリスは初対面にも関わらずメルルを威嚇する。
「この娘は俺の世話役のメルルだ。仲良くしてやってくれ」
メルルを紹介すると、何故か勝ち誇った顔でアリスに向かって腕組みをしている。
「マメオ、私という者がありながら世話役ってなによ!」
「私という者ってか、お前、料理も掃除もなんにもできないだろうが。せいぜいばあちゃんの見守りぐらいだろ」
「なによ!マメオの癖に生意気ね」
「おい、りこからもなんとか言ってくれ」
「おいおいマメ坊、愛されてんねえ」
「どこがだよ!」
「そのチクチク頭は誰よ?」
アリスは今度は五郎に噛みつく。
「おっ!この髪型の良さが分かるとはアリス
「ちょっと、アンタ今、なんつった?」
アリスはドスの効いた声で睨みつける。
「なにってアリス
次の瞬間、五郎の体が宙を舞う。
「しね!」
アリスに歳の話はタブーのようだ。俺も気を付けよう。
「そう言えばアリス、俺がオルバ山の巫女って話しは知ってるか?」
「巫女?何よそれ、頭湧いてんの?」
「いや、お前に訊いた俺がバカだった」
そうだ、そもそもコイツはばあちゃんが世話係だということも把握してなかった。女神時代に俺の情報なんてほとんど閲覧してなかったのだろう。
そして、ばあちゃんはばあちゃんで認知症も相まってか、俺の事をホントの孫だと勘違いしている節がある。
「ちょっとマメオ何一人で考え込んでいるのよ!私にも教えなさいよ」
魔を封じる巫女か…。
ただのしきたりやお
何が起こってもおかしくないから、時間がある時にオルバ村の歴史を漁ってみてもいいな。
「ちょっとマメオ!むじじないでよ」
アリスがまた泣き出したので、俺はそのまま思考の海に浸りながら外に出る。
しばらく考え事をしたがら夕焼けを眺めていた。
…まったく、数日前まで俺とばあちゃんだけだったのに、いつの間にやら大所帯になったな。
これまでの人生で家族の
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翌日。
早朝にも関わらず自宅前には全員集合していた。
昨夜は五郎が簡易的な山小屋を人数分建ててくれたから寝床の取り合いにならずに済んだ。
「それでは紳士淑女の皆様、お待ちかね新居のお披露目になります」
五郎はそう叫ぶとどこからか布袋を取り出した。
その復路を地面に置くと右手に召喚したなんたらの金槌で袋を叩く。
次の瞬間、既に見慣れた光景になりつつある放電の瞬きが視界を白く染め上げる。
ようやく発光が収まると俺たちの目線は上へと注がれる。
「うおーー」
「わーー」
「すごいです!」
「うわーー」
「はて」
などそれぞれ思い思いに感嘆の声をあげる。
オルバ山の一角に突如巨大な大木が出現した瞬間であった。
「すごいな、10階建てのマンションぐらいあるんじゃないか」
大木の枝部分にはカラフルに彩られたツリーハウスが、まるで木の実のように造られている。
「ルームツアーをしてやりたいとこだが俺はもう限界だ。マナが足りねえ」
五郎は疲れ果てて大の字になって仰向けに地面に倒れる。
「五郎、おつかれさま。こんな立派な家を造ってくれてありがとう」
俺は深々と五郎に頭を下げる。
「約束だからな。いいってことよ」
五郎への労いの言葉を掛けたのは俺ぐらいで、他の奴らはいの一番に新居を探索し始めた。
「みてみてマメ!根本の扉の先は食堂みたい」
りこが目の前の扉から目を輝かせながら顔だけだす。
「マ、メ、オー、一番上は展望台よー!」
上空からはアリスの声が降ってくる。
五郎が回復するのを待って、俺も新居を見て回った。
一階部分にあたる根本の扉の先は大広間になっておりエントランスやら食堂やらいろんな要素を兼ね備えているらしい。
内部の壁に沿うように螺旋階段が上まで伸びており、その途中に各居室へ繋がる扉があるようだ。
そして、螺旋階段の果てにアリスがさっき叫んでた展望台があるそうだ。
素敵な新居なのは間違い無いが、唯一欠点があるとすれば階建を登るのがしんどいってことぐらいか。
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