第10話 転生者
気付けば寝入ってたようで夜が明けていた。
隣で眠るりこりんの頬にも涙の跡が残っている。
俺たちは特に昨日の話題には触れずに
「りこさん…」
「りこでいいですよ。私もマメって呼びますから」
軽く雑談をしているとようやくオルバ村が見えてきた。屋根をカンバラの葉で覆っている木の家が20軒ほど建ち並んでいた。
畑仕事をしている人々はボロ布を衣服代わりにしていている。
「なんか寂れた村ですね。ホントにここに建築が出来る奴なんているんですか」
「御婆様の話もかなり昔の事だろうし。とりあえず訊いてみましょうか。すみませーん」
りこが畑を耕している痩せ細った男性に声を掛けるが反応がない。
目に生気は無く無言で作業を続けている。その後も村人に手当たり次第声を掛けるが同様に反応がなく、お手上げ状態だ。
「なんか、みんなゾンビみたいですね。元女神なら何か知らないんです?」
「うーん、私たちは担当の転生者のことしか知らないんですよね。アリス先輩なら何かご存知だったかもしれませんが、私は担当したのマメだけですし」
ばあちゃんは何十年も山を降りていなかったから当時と村の状況が変わったのか?
「おい!あんたら何者だ?」
突如、背後から声を掛けられる。
振り向くとツーブロックでオレンジ頭の少年が建っていた。
歳は俺よりちょい下ぐらいだろうか。
「俺たちは山に住んでる者だ。家を建て直してもらいたいんですが、三郎って右官をご存知ないですか?」
「三郎?誰だそりゃ。村の
ばあちゃん、三郎しゃなくて二郎じゃねぇか。
「そうなんですね。それは残念です」
りこが、あからさまにショックを受けている。
「ところで貴方は?」
「俺は
「洗脳?この村でいったい何が起こってるんですか」
りこが首を傾げて質問する。
「転生者の領主がチートアイテムで村人を洗脳して強制的に作物を作られせてるんだ。おかげで過労死する村人が後を絶たない」
…ヒドイ事を、予想はしていたが転生後、悪事を働く者もいるだろう。そいつの担当の女神はなにをしてるんだ。
「五郎さんは洗脳されずに済んだんですね」
「そうだなどうやらそのチートアイテムは転生者には効かないらしい」
「…えっ、五郎さんも転生者なんですか?」
「も、ってことはお前らもか?」
「そうですね。俺たちも転生者です」
「そうか…なら話は早い!」
何故か五郎は嬉しそうだ。
「…話が早いって、何か私たちにさせる気?」
「ああ、とりあえず領主をぶっ殺すのを手伝ってくれ。あいつのせいで二郎爺は死んだんだ」
軽口で言っているが、五郎の目は本気だ。
「ぶっ殺すって穏やかじゃないですね。俺たちは殺しの手伝いはしませんよ」
…そうだ。いくら相手が悪人とはいえ俺が私刑を手伝う訳にはいかない。
「なんだお前、意外と良識人だな。でも、俺らが止めねえと死人が増え続けるぜ」
「…マメ」
りこが何かを言いたげにこちらを見ている。
…そうだ。ここがいくら異世界とはいえ、無闇に人は殺せない。俺は道を踏み外す訳にはいかないんだ。
「どうした、だんまりか?」
五郎は真っ直ぐな目で俺を見てくる。
この真っ直ぐな目…アイツにそっくりだな。
俺は前世で
もし、あの時あいつを助けていれば…。いやせめて止めていれば。
俺は過去の記憶が呼び起こされ、どうすればいいか分からなくなっていた。
「マメ!貴方は何のために転生してまで2度目の人生に
りこは俺の
まったく…痛いところを突いてくる。
「…わかった手伝うよ。ただし、殺しは無しだ。あくまで村人たちの解放が目的だ」
「おしっ!それでも構わねえ、ならぶっ殺しは無しでぶっ飛ばす。それに、タダって訳でもないぜ。領主をぶっ潰してくれたらお礼に俺のチートアイテムでお前らの家を建て直してやるよ」
「えっ、五郎さんのチートアイテムって建築系なんですか?」
りこが興味津々に五郎に詰め寄る。
「おいっバカ、
ふっ、
こうして、五郎に案内されるまま領主邸に向かった。
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