第2話 来ちゃった!
俺、マメオはなんやかんやで18歳を迎えた。
転生後の俺の家族はどうやら祖母だけのようだ。
どうも俺の一族は前世でいう村八分のような扱いを受けているらしく、俺とばあちゃんは2人っきりで人里離れた山奥で暮らしている。
でも、正直前世の家族とは一切交流が無かったからなあ。
おまけに社会との繋がりも無かったから転生後の方が人と話してるぐらいだ。
そんなことを考えながらなんとなく悲しくなったが、気を取り直して
毎朝のルーティーンである推しの“りこりん”の配信を観なければ!
何故かは分からないが前世の頃と同じように生配信があったり、定期的に動画が更新されている。
この世界と前世の世界は並行世界で時間の流れは一緒なのかとか、いろいろ考察してみたが結局考えるだけ無駄だと思い諦めた。
俺とばあちゃんは2軒の隣接した小さな山小屋で別々に住んでいる。
食事は毎食ばあちゃんの家で一緒に食べるようにしている。
俺は年季の入った山小屋の木の扉をノックする。
「ばあちゃん…漬物を漬けたやつを持ってきたんだけど、朝ごはんにしよう」
「おお…まめちゃん、いつもありがとね。まめちゃんのお陰で美味しい物が食べれて嬉しいわ」
この世界は冷蔵庫が無いため
動画で調べて
「まめちゃん、ご飯はまだかい?」
…こんな調子で食後10分もすれば食べたことを忘れてしまう。俺がしっかりしないと。
俺はばあちゃんと軽く雑談をして、狩りに出る。
その後は畑の野菜の手入れをして、日課のランニング、夜の推し活と順調な日々を歩んでいる。
分からない事があれば全て
毎日同じ事をするのも飽きてきたので最近では、合気道と剣道の練習を始めた。
…あくまで動画を参考にだが。
この世界も例に漏れず魔物がいるため、ある程度は身を護れるようにする必要がある。
こうして日々のライフサイクルを終えた。
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就寝後、何かに引っ張られるように夢の中に落ちる。
「よっマメオ、久しぶり!」
目の前には金髪ギャル女神のアリス様が座っていた。
どうやらこの異世界では、正しく転生者を導けているか、女神様は毎月、転生者の面談をしなければならないらしい。
アリス様の目の下にはクマができていて、激務なのが窺える。
この18年のモニタリングを受けてで判ったのは女神の役割が思ったより事務的というか、会社の業務よりな気がしていた。
ほとんどまともに社会に出たことが無いため、あくまで動画で学んだ範囲での想像になるが…。
俺はアリス様との不要なトラブルを避けるため、動画で調べた“女性スタッフのマネジメント”を駆使しながら出来る限り女神様の機嫌を損なわないように心掛けていた。
「アリス様、いつもご苦労様です。アリス様はどんなにキツくても真面目にお仕事をこなされてますね。神様もアリス様の事をしっかり評価して下さっていますよ」
まず、女性は仕事の結果だけでなく過程も褒めよ。
心情に寄り添い、結果を出す過程でどれだけ頑張っていたのかを見て評価している事を相手に伝えた方が良いとのこと。
これは本来、上司が部下に対して行うもので、今の俺とアリス様は本来立場が逆だが上手くハマってるので気にしない事にした。
「マメオ~あんただけよ。私の大変さを分かってくれるのは。まったく、神の野郎ったらいつもあれしろこれしろって命令してくんの。この前なんかさ、この仕事をすれば将来のお前のためになるって言って仕事を更に増やしやがって!」
この18年でアリス様の俺への態度は180度変わった。口調は粗雑だが、俺への嫌悪感は感じられなくなった…気がする。
「そうですね。神様も理不尽ですよね。アリス様はこんな頑張っているのに。ただ、神様なりにアリス様の事を考えて下さっているんですよ」
ここで頭ごなしに否定したり、いきなりアドバイスするのは相応しくない。まずは相手の感情を受け止めて、その上で言葉を選びながらアドバイスをする必要がある。
「ちょ…あんたなに、ニヤついてんのよ」
おっと、前世になって社会に出ていなかった俺が転生後に、マネジメントの勉強をしていることが少し可笑しくなって顔に出てしまった。
「いえいえ、すみません。久しぶりにアリス様と話せたのでなんだか嬉しくて!」
これはマニュアルにはない咄嗟の対応だから誤解しないでほしい。前世でブ男がこんな言葉を吐けばセクハラ扱いされる可能性があるので要注意だ。
「あんた…なに気持ち悪いこといってんのよ!あんたもこの前面談したキモオタと同類ね」
「不快にさせて申し訳ございません」
…何故か異世界転生時に容姿までは変えられない。というかそんな説明もなく転生後もそのままの容姿だった。
異世界という過酷な環境のなかで贅肉は一切無いが鏡が無いため自分の姿をまじまじと見ることなんてない。…正直、前世でも鏡なんざほとんど見なかったが。
「…ちょっと言い過ぎたわ。別にそこまで謝んないでいいわよ。私も話せて嬉しい…」
…あれ?
アリス様なんかデレてない?
流石に俺みたいなブ男にそれは無いとかぶりを振る。
その後もこの前面談した奴が、裸体を透視出来るチートアイテムでアリス様の裸体を見てきたなど長い時間、愚痴が続いた。
俺はいい加減疲れてきたが、それを顔に出さないように、さも興味ありげにアリス様の話を聞き続けた。
それから数日経ち、いつものスローライフを送っていると突然自宅の山小屋のドアをが開いた。
…そこには見慣れた金髪ギャルが立っていた。
「えっ!アリス様!」
「来ちゃった!」
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