チートなんていりません。世の中真面目にこつこつ生きることが大事です。

那須儒一

第1話 お馴染みの展開

 俺、不二ふじ 真芽夫まめおは不治の病に掛かりよわい38歳という長寿でこの世を去った。


 38歳がまだ若いというのが大多数の意見だろうが、暇を持て余していた俺に取っては退屈で長い人生だった。


 高卒ニートでパチンコに入り浸る毎日。

 定職についたこともなく、日々充実している社会人を横目にパチスロ以外は自宅に引き籠っていた。


 挙句の果てに不摂生が祟り、気付いた時には余命先刻を受け生涯を終えていた。


 今際いまわきわの後悔はもう少し真面目に生きてたら違った人生があったのではないかということと、BOOTUBEブーチューブの推しの配信が観れなくなること…。


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 …これが死後の世界ってやつか。

 穏やかな光に包まれたあと、

気付けば修道女のような装いで、気怠そうにしている金髪の女性の前に座っていた。


「ここは後悔の大きいクズニートが二度目の人生を歩むための転生の場よ」


 なるほど、これが親の顔より見た異世界転生物って奴ね。それにしてもギャルみたいな女神だな。俺の知る異世界物の女神はもう少しおしとやかだったが…。


「あたしは女神アリス。クズニートには次こそは幸せな人生を歩んでもらいたいっていう建前は置いといて…本音は仕事だから仕方なく、前世の記憶と共に好きなチート能力やチートアイテムを授け異世界へ転生させます」


 この女神様、自分からチートとか言ってるし、とうとうメタ発言をしやがった。俺みたいな転生者多いのか対応が雑だ。


 目の前の女神は貧乏揺すりをしながら、俺を急かすようにチートとやらを選ぶのを待っている。


 …しかし、俺は死ぬ直前決めたのだ。今度こそ勤勉に生きようと。

「女神様。お言葉ですが、僕は死ぬ直前に誓ったのです。次の人生では真面目にこつこつ生きようと。だからチート能力やチートアイテムなんていりません。真っ当に生きます」


 女神様は最初から俺を蔑むような目で見ていたが、その表情がUMAユーマを見るような驚きの表情へと変わった。


「はあっ、あんた湧いてんの?あんなみたいな気色悪いクズニートは、大人しくハーレムを築ける魔法とか透明になる指輪とかにしときなさいよ。クズは生まれ変わってもクズのままよ」


 ここまで言うか普通…流石にヒドすぎでは?


 俺はその場限りのやり取りだと我慢した。

「いえ、私の決心は固いです。次こそは真面目に生きたいのです」

 

「なに悟ってんのかわかんないけど、別にあんたが心を入れ替えたところで醜い見た目と中身は変わんないのよ?まあ、なんでもいいんだけど、とりあえずなんかチート能力やチートアイテムを選んでくんない。いらないって選択肢はないのよ。あたしは早く今季のアニメを観ながらお菓子食べたいから適当に決めちゃって」


 異世界でもアニメとか観れるのか?

 俺は女神様の言葉であることを思い付いた。


「それならBOOTUBEブーチューブを異世界でも観れるようにして下さい。それで充分です」


「わかったわ…はい」

 女神様が手をかざすと俺の手元にタブレットが現れた。


「それでは良き異世界ライフを」

 女神様は棒読みで雑にバイバイと手を振ると、いきなり見えない力に引っ張られ目の前が真っ暗になった。


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 俺はフジ・マメオ、10歳。

 転生したのに名前はそのままで手元にいつでも

召喚できるタブレットを所持していた。


 ただし、タブレットと言っても出来ることといえばBOOTUBEブーチューブを観れるだけ。

 チート性能なのはバッテリーという概念が無く、充電無して永遠に使えることと、このタブレットは落としたり水に浸けても破損しないことぐらいだ。


 とりあえず真面目にこつこつ生きようにもこの世界の勝手が分からない。


 俺は何気なく動画検索して気付いたのだが、この異世界の情報も何故か動画で配信されてるのだ。

 そのため“初めての異世界”という動画を観てこの世界を知ることから始めた。


 また、推しの配信も観れるため俺は気付けばこのBOOTUBEブーチューブを頼りに異世界ライフをスタートしたのだった。


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