第4話 奴隷少女と出会う






街に入るととてつもない眠気が襲ってきたが、今は一文無しなので建物の影で眠った。


そして夜が明けた


まずは情報収集だ。

街の人に話しかけるといろんなことを話してくれる。

旅人は食料補充などでお金を落としていってくれるため、この街ではかなり歓迎されている。聞いたところによると、この街はトラジの街というらしい

主力産業は水を生かした農作物の栽培というのが表向きだが、近くを通り過ぎる亜人族を見境なしに襲い奴隷として売り出すという黒い裏のある街だという。


この世界には人権という概念が存在しない

それ故に力のあるものだけが生きることを許されている

それを体現するかのようにこの街では、貴族街やメインストリートは輝いている一方、街の地下にはもう一つの影の街ができていた。


トラジの街地下にあるこの影の街と言われる街はスラム街であり、闇マーケットの中心地である。

情報をもとに僕は武器も持たず、純粋な興味と安っぽい正義感を携えてスラム街へ向かった。

そこで自分がどうなるかも知らずに…


ーーーーーー トラジスラム 第一区画 ーーーーーー



影の街と呼ばれるこの街は全部で第三区画まであり、今踏みしめているこの場所はトラジスラム第一区画である

スラムに入ると、電球が所々についているだけの大きな洞穴といった印象で、人間が住んでいるとは思えない環境だった。

そんな街で僕は呑気に「闇マーケットを暴こう」と動き回ってしまった。

何も見つからず、眠くなってきたので宿屋を探そうと振り返った刹那、誰かに殴られて、意識を失う。



意識が覚醒し、辺りを見渡す。

そこで発見したのは檻の中にいる自分自身であった。

硬い地面、繋がれた鎖、自分では見ることができないが、首輪らしきものがついている。


「そんな…」


放心状態で現状を評価する

こんなところで現代社会に生きていた平和ボケしている自分に後悔する


「何故自分はこうならないと錯覚してしまったんだ」


その世界は前の世界と違って残酷である。

自分の行動一つ一つに関わる情報を鵜呑みにすると命すら危うい。そんな世界だと今更気づいてしまった。

このままここで待っていても待っているのは死だ。

生き抜くためになんとか脱出しようと考える。

ジョブは使えそうなスキルはない

ステータスはわからない

アイテムもないため何もできない

とにかく暴れてみても体に鎖が食い込むだけで成果はない。

全身血塗れになって抗うことを止めた。

そう絶望して7日が経った。

全てを諦めたその日、やっと向かいの檻にいる少女に気づく

一人でずっと過ごすことに耐えられなかった僕は少女に話しかける


「そこの君、少し話し相手になってくれないかい?」


少女は口を開いて倒れ込んだまま目線だけこちらに向けてくる。

拘束は僕よりもゆるいが、かなり衰弱していて

話す気力もないようだ。

それでも孤独を紛らわせるために話しかける


「名前を教えてくれないか?」

「……」

「こんな洞窟じゃじゃ天気もわからないよな…」

「……」


一人で話し続ける気もなくなって最後にぼさっとつぶやく


「もう一度でいいから満天の星空をみて見たかったな…」




「星空をみたことがあるの?」


少女からの第一声は名前でも自己紹介でもなく、純粋な興味だった。


「上の街からここを見に来たから、その前は星空を見るのが好きだったよ。 でも星座とかは僕の知ってる並びと違うから分からないけど…」


「星空は何色なの?」

「藍色かな?」


そんな感じで会話は白熱していった。気づけば寝ることも忘れて次の日になっていた。

この会話だけが日々の生きがいだった。


その1ヶ月後…


「お前早く出ろ」


今まで食事を出していた監守から突然牢屋から出された。

ここよりは明るいスラム街へ出る


向かいの少女も一緒に外へ出た。


「お前はもう賞味期限だよ 餌代もかかるし殺処分だ

な(笑)」

薄笑いの監守がそう少女に告げる

星空の話を聞いてくれたあの少女に。


どうやら僕は奴隷として売れて、彼女は売れ残り続けてしまったらしい。だが、



僕の中の人格が崩れ、段々と湧き上がってくる怒りに耐えられなくなる。

全ての思考を怒りに乗っ取られると同時に星見の力が解放される。





「貴様だけは俺が絶対に殺す」


ーーメインジョブ 調合師が星見に干渉

   セカンドジョブ ポイゾナーに進化しましたーー


ポイゾナー

星見のセカンドジョブ

体内のあらゆる元素から液体の物質を作ることができる。代償として使用された元素が体内から生命維持ができる最低限まで減少し、欠乏状態となる。



怒りとともに水酸化ナトリウムの液体を監守にかける

「ぐああああああ」


溶けていく監守を背に少女とともにスラム街へ逃げる


スラムの電球の光とともに


失っていた希望を取り戻す。


「スラム街から脱出するぞ」


スラムの影で風を切って進むのであった












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Stargazer 星屑夜空 @hoshikuzuyozora714

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