第39話 ファルネーゼの婚約者を騙す リリーエ視点
「バルトフェルト殿下、お話がありますっ!」
あたしは教室で、ファルネーゼ様の婚約者——バルトフェルト・フォン・アルトリアに声をかける。
バルトフェルト様はアルトリア王国の第二王子。
金髪碧眼のイケメン。
今までは恐れ多くて話したことなかったけど……
ある計画のために、あたしは話しかけた。
「キミは……誰だ?」
「す、すみませんっ! あたしは、リリーエ・フォン・ドラフィール伯爵令嬢です……っ!」
あたしは慌ててバルトフェルト殿下に、お辞儀する。
この国の貴族は上から順に、王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵に分かれている。
基本的に王族は侯爵以上の貴族としか会話しない。
伯爵令嬢のあたしは、本当なら殿下に話かけてはいけないのだけれど……
「そうか。で、わたしに何の用だ?」
よかった! 普通に話してくれそうだ!
バルトフェルト殿下はお優しいと評判だった。
伯爵令嬢のあたしの話も聞いてくれるみたいだ。
「実は……殿下にお知らせしたいことがあって」
「それは何だ?」
「……ここではお話し辛いです。できれば二人きりでお話したいのですが」
あたしは真剣な顔で、バルトフェルト殿下に頼み込む。
ここでバルトフェルト殿下に断られたら、あたしの計画はおしまいだ。
……お願いっ! OKが出ますようにっ!
「深刻そうだな。よし。二人きりで聞いてやろう」
「……っ! ありがとうございますっ!」
あたしの願いが神さまに届いたのか、バルトフェルト殿下は笑ってOKしてくれた。
やった……っ!
これで計画を進められる。
「では、放課後にわたしの部屋に来い」
「はい……っ! わかりました!」
★
バルトフェルト殿下の部屋。
すごく大きくて豪華だ。
王族と特待生しか入れない、特別寮にあった。
「で、わたしに大事な話とは何だ?」
「はい……バルトフェルト殿下に、見せたいものがあるのです」
あたしはカバンから、水晶玉を取り出す。
これは魔道具——記録水晶。
水晶玉の中に映像を記録できる。
「記録水晶か……? わたしに見せたい映像があるのか?」
「はい。バルトフェルト殿下にとってショッキングな映像だと思いますが……」
そう言ってあたしは、記録水晶に魔力を流す。
記録水晶の中に映像が映り出して——
「これは、我が婚約者のファルネーゼだ。隣にいる男は——」
「この男は、オウガ・フォン・バルトフェルト侯爵令息。あたしの婚約者です」
記録水晶の中に映っているのは、オウガとファルネーゼ様だ。
二人きりで、ファルネーゼ様の部屋にいる。
「? 二人きりでいったい何を……な、何っ?!」
バルトフェルト殿下の表情が、青ざめていく。
オウガとファルネーゼ様がやっていること——二人は裸になって抱き合って……
大人の男女がやることを始めて……
「ど、どうやってこの映像を手に入れて……?」
さっきまでクールな雰囲気だったバルトフェルト殿下は、かなり動揺している。
それもそのはずだ。
自分の婚約者のファルネーゼ様が、オウガに寝取られているのだから。
「最近、オウガがファルネーゼ様とすごく親しくしていると噂があって……あたし、心配になってメイドにオウガを調べさせていたのです。そして、浮気の現場を押さえることができました」
「き、キミは大丈夫なのか……? 自分の婚約者がこんなことをしていて……」
バルトフェルト殿下は、激しく落胆している。
ファルネーゼ様を、本当に愛していたのだろう。
……この映像は、実はフェイクだ。
ランドさんが作った映像。
これをバルトフェルト殿下に見せて、オウガを王族の婚約者を寝とった罪でハメるためだ。
「あたしも婚約者に裏切られて泣きました……本当に耐えられなくて……」
あたしは泣きマネをする。
昔から演技は得意だ。
よく子どもの頃から両親を騙していたし。
「わたしも裏切られた……」
「バルトフェルト殿下、あたしと一緒に二人に復讐しませんか?」
「ふ、復讐……?」
「ええ。あたしたちは婚約者に裏切られた仲間です。このままじゃ許せないでしょう」
「そうだな……復讐か。何か計画があるのか?」
「はい。あたしに計画があります……」
バルトフェルト殿下を引き入れることに成功。
計画の第一段階を達成した。
オウガ……これでアンタは終わりよ。
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