第38話 ヴァイス、リリーエを操る 勇者ヴァイス視点
【勇者ヴァイス視点】
「こんにちは。ドラフィール伯爵令嬢」
学園の昼休み。
俺はリリーエ・フォン・ドラフィール伯爵令嬢に挨拶する。
なぜ俺が声をかけたのか?
それはリリーエが、ファルネーゼに生徒会入りを拒否されたと聞いたからだ。
利用するチャンスだ……!
俺はそう思った。
「えーと……ごめんなさい。あなたはどなたかしら?」
「えっ? 俺のことを知らない?」
「うん……知らないわ」
入学時に魔力測定器を破壊した俺だぞ?
そんなすごい俺を知らないなんて……
しかも平民でこのAクラスに入ったのは俺が史上初だ。
なのにどうして……?
「…………俺は、ヴァイス・ランドです。ほら、魔力測定で規格外の能力を発揮した――」
「き、規格外の能力……? うーん……そ、そうなんだ。すごいんですね……」
リリーエは苦笑いを浮かべる。
なぜだ……?
俺は何かマズイことを言ってしまったのか?
リリーエは攻略対象ヒロインの一人だ。
俺の好きな銀髪のヒロインで、性格はツンデレ。
普段は高飛車でツンツンしているが、主人公と二人きりの時はデレるタイプ……
そっか! ツンデレだから俺に今ツンツンしてるのか!
内心では俺にデレデレしているに違いない。
「それで、ランドさんはあたしに何の用ですか……?」
「ドラフィールさんは、生徒会長になりたいのでしょう?」
「……っ! どうしてそれを……?」
俺が作ったヒロインなのだから、知っているのは当然だ。
リリーエは、生徒会長になりたがっている。
この学園の生徒会長になることが、リリーエの子どもの頃からの夢。
プレイヤーはファルネーゼかリリーエか、どちらを生徒会長にするかを迫られる。
主人公が選んだほうのヒロインが、生徒会長になるのだ。
「俺がどうして知ってるかはどうでもいいじゃないですか。……それよりも、俺がドラフィールさんを生徒会長にしてあげますよ」
「あたしを、生徒会長に、してくれる……?」
「そうですよ。俺はドラフィールさんの味方です」
俺は優しい微笑みを浮かべて見せる。
本当の味方だと思わせるために。
ブライラントを嵌めるための計画。
計画の成功のためには、リリーエの存在が不可欠だ。
「ど、どうやって……?」
「まず、ドラフィールさんの敵を明らかにしましょう」
「あたしの、敵……?」
リリーエは困惑した表情を浮かべる。
「ドラフィールさんの敵は、ファルネーゼさんはありません。真の敵は、ブライラントです」
「オウガが、真の敵……?」
「そうです。よく考えてみてください。本当なら生徒会入り間違いなしのドラフィールさんが、どうして生徒会に入れなかったのかを……」
「……えーと、それってオウガのせい、なのかな?」
俺は思わずにニヤリと笑ってしまう。
ここで一気に畳かけて、リリーエを洗脳してしまおう。
「その通り! すべてはブライラントのせいなのです! ブライラントがファルネーゼさんにリリーエさんの悪口を吹き込んだのです。そのせいでリリーエさんはファルネーゼさんに嫌われてしまった……!」
「どうしてオウガがそんなことを……?」
「ブライラントは、ずっとリリーエさんに避けられていたことを憎んでいました。それでリリーエさんが生徒会に入りたいというのを聞いて、ここぞとばかりに復讐そようとしたのです」
「……たしかに、昔のクズなオウガならやるかも、でも……」
リリーエは半信半疑な様子だ。
下を向いて、俺の言葉を信じるか悩んでいる。
……ふう。仕方ない。これは使いたくなかったが。
「催眠魔法――ブライラントを憎め」
俺の右目が赤く光る。
赤い光を見たリリーエは、ぼんやりした顔をする……
よし ! 催眠にかかった!
本当ならリリーエにエロいことをさせたいから催眠魔法を取っておきたかったが、ブライラントを倒すためには仕方ない……
クソ! リリーエのおっぱいを揉むまくりたかったのに!
「……あたしは、オウガが憎い、憎い、憎い……」
「ふふふ。そうだ。それでいい。一緒にブライラントに復讐しよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます