第37話 リリーエをファルネーゼに会わせたところ

「はじめまして! ファルネーゼ様! あたしはリリーエ・フォン・ドラフィール伯爵令嬢です! よろしくお願いしますっ!」

「…………」


 放課後。

 俺はリリーエを生徒会室へ連れて行く。

 ファルネーゼにリリーエを会わせたわけだが……


「…………」


 ファルネーゼはリリーエが挨拶しても、ずっと黙ったままだ。


「ファルネーゼ様……?」


 リリーエの笑顔はどんどん曇っていき、不安そうな表情でファルネーゼに聞く。

 それでもファルネーゼは沈黙している……


 どうしてなんだろう? 

 ファルネーゼは誰にでも愛想が良いはずなのに。


「…………ドラフィール伯爵令嬢、あなたはブライラント様の婚約者だそうですね?」

「はい。そうですけど……」

「わたしの受けた報告によれば、あなたは婚約者のブライラント様を、ずっと避けていたようですね?」

「えっ? いや、別にそんなんじゃ……」


 リリーエは不意をつかれたように焦る。

 額から冷や汗をかいていた。


「まさか誤魔化す気ですか?」

「……たしかに少し疎遠でした。ですけどそれは、お互いに忙しくて……」


 リリーエがそう言うと、ファルネーゼの目が鋭く光る。

 何かを察したような顔だ。


「あなたは毎年開かれていた、ブライラント公爵家とドラフィール伯爵家との新年の宴も、毎年欠席していたようですが?」

「えっ? どうしてそれを……?」


 ブライラント公爵家とドラフィール伯爵家は、領地が隣同士だ。

 毎年、両家の交流のために新年の宴が開かれていた。

 ファルネーゼの言う通り、リリーエは毎年理由をつけて欠席していたっけ……


「しかも自分のメイドに、『キモデブのオウガと会うぐらいなら死んでもいい』と、愚痴っていましたね?」

「そ、そんなことまで……?」

「わたしは何でも知っていますよ」


 ニコニコと笑うファルネーゼ。

 だが、目はまったく笑っていない。

 一方のリリーエの表情は氷ついている……


「ドラフィールさんは、生徒会に入りたいそうですね?」

「そ、そうです……っ!」

「これから、わたしが何を言うかわかりますか?」


 ふっと一瞬だが、ファルネーゼの表情が柔らかくなる。

 今までのピリピリした空気が少し良くなるが……


「えっと……あたしを生徒会に入れてくれるとか、ですか?」

「ふふ。ハ・ズ・レです」

「では、何と言うおつもりで……?」

「ドラフィールさん、わたしはあなたの生徒会入りを絶対に絶対に絶対に認めませんから……っ!」

「そ、そんな……!」


 ぶわっと、リリーエの目に涙が溜まる。


「ブライラント様を粗末にする人は、わたしは許しませんから!」



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