第35話 メインヒロインにフラれる ヴァイス視点

【ヴァイス視点】


「で、わたしに何の用ですか?」


 次の日の放課後。

 俺はメインヒロインのエステルを呼び出した。

 呼び出した理由はひとつ。

 エステルに、告白するためだ。


「ふっふっふ……キミにとっていいことだよ」

「?」


 エステルは不思議そうな顔をする。

 やはりエステルは、ブライラントに洗脳されている。

 もしかしたらヤツも催眠魔法を使うのか?

 ……まあいい。

 主人公である俺が、メインヒロインに告白するのはおかしい。

 普通はヒロインから、主人公にグイグイ行くのが普通だからだ。

 しかし、エステルをブライラントから救うためだから仕方ない。

 主人公の告白すれば、エステルは絶対に即オチする。


「エステル、俺はキミが好きだ……!」

「?!」


 エステルは驚いた表情を見せる。

 いや、これは喜んでいるのだ。

 なにせ主人公の俺が「好き」と言っている。

 主人公から愛を告白されて、喜ばないヒロインなどいるだろうか。 


 もうすぐ、エステルは俺は抱きついてくる。

 俺が身構えていると——


「……えーと、好きとはどういう意味?」


 少し曇った表情をするエステル。

 エステルはプライドがとても高い。

 心の中では喜んでいるが、自分の気持ちを素直に出せないのだ。


「ふふ。好きとは、キミを愛してるということさ」

「そうですか……でしたら——」


 ふう……と、深呼吸するエステル。

 もちろんエステルの答えは——


「ごめんなさい。受け入れません」

「えっ?」

「わたしはヴァ……すみません。名前を忘れてしまいました。あなたが好きじゃありません。だから告白は受け入れられないのです」

「ははは……冗談だよね?」


 俺はエステルに問い返すも——


「本当です。あなたと付き合うのは無理です」



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