第30話 氷の姫騎士、脱いでしまう
「着きました。ここが郷土料理の店です」
「お。うまそうだな……」
エステルの領地、ベアハルト侯爵領の郷土料理の店まで来る。
店の看板には「ハムザック」と書いてある。
「ハムザックっていうのか」
「ええ。パイ生地にハムと野菜を挟んで焼いた郷土料理なんです。きっとおいしいですから」
前世の料理で言うならハムサンドみたいなものだ。
ゲームの絵で出てきた時はそんな感じだったと思う。
俺たちが店に入ると店員がやって来て、
「いらっしゃいませ! あっ! エステルお嬢様っ!」
店員たちが全員、エステルにお辞儀する。
ベアハルト侯爵の令嬢だからな。
領地の人間が多いこの店では特別扱いらしい。
「二名分、予約していました」
「はい。お嬢様のためにVIPルームを用意しました」
VIPルーム……?
そんな部屋、ゲームに出てきない。
居酒屋風の店に、VIPルームは似合わないが……
「こちらでございます」
店員が俺たちを案内する。
階段を上がって、廊下の壁に突き当たる。
「お嬢様のために、特別に用意しました」
店員が壁を押すと、壁が動く。
壁の中に部屋があって、中に入る。
「すげえ豪華な部屋だな……」
高級そう絨毯が惹かれて、これまた高級そうなテーブルと椅子。
さらに部屋には、香水の爽やかな匂いがする……
そして驚いたのは——
「ベッドがある?!」
「はい。エステルお嬢様とブライラント様が、朝までゆっくりと『お楽しみ』できるようにしました」
「お楽しみって……?」
「では、お料理をお持ちしますので、少々お待ちくださいませ」
店員が部屋から出て行って、二人きりになる俺とエステル。
若干だが気まずい空気が流れるが……
「オウガ様、座りましょう」
エステルに席を勧められて、俺は座る。
昼間なのに、部屋の中は少し暗い。
ロウソクの灯りでエステルの顔が照らされる。
本当に秘密の場所、という感じだ。
「……オウガ様と二人きりになりたくて、特別に部屋を用意させました」
「そうなんだ……本当にここはすごいね」
「はい。それでオウガ様に話があります」
「何かな?」
「その……あたしをオウガ様の、奴隷にしていただけませんか?」
「…………」
奴隷——氷の姫騎士から想像できない言葉。
たしかにゲームのキャラ設定では、エステルはドMで「くっころ」されたい願望がある。
ただ、奴隷になりたいとはまでは主人公ヴァイスにも言ってなかった。
……まさか、俺を試しているとか?
OKを出したら斬り捨てるとか……?
生徒会役員にふさわしくない! とか言って……
俺がエステルの意図を考えていると、
「突然ごめんなさい。でも、どうしてもわたしは気持ちが抑えられなくて……。わたしはオウガ様のような強い男性に従うことをずっと夢見てきました。オウガ様にすべてを捧げることがわたしの願いなのです」
「いや、でも、奴隷はなあ……」
いくらなんでも女の子を奴隷にする趣味はない。
ちゃんと断らないとダメだ。
……と、思っていたら、
「わたしに、オウガ様の証をください……」
急にエステルは立ち上がって、ブラウスのボタンを外していく。
「わたしは身も心もオウガ様のものになりたい……」
しゅるしゅると服を脱いでいって、
「オウガ様、わたしの初めてを奪ってください。めっちゃくちゃにしてください……」
エステルは、生まれたままの姿になる。
本当に一糸纏わぬ、何もつけていない状態。
白い絹のような肌と、出るところは出て引っ込むところは引っ込んだ、肉感的な身体……
「オウガ様……っ!」
裸のエステルが、俺に抱きつこうとした時——
「ぎゃあああああ!!」
店から悲鳴が聞こえた!
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