第27話 生徒会長、曇ってしまう ファルネーゼ視点
「はあ……ブライラント様」
あたし、ファルネーゼ・フォン・アンダルシア
セプテリオン魔法学園の生徒会長……なのだけれど。
自分の寮の部屋で、物思いにふけっていた。
「ファルネーゼ様、お茶をお持ちしました」
メイド兼護衛の、セシリアがお茶を淹れてくれる。
幼い頃からあたし専属のメイドだ。
だから一番気ごころが知れた仲。
「……ファルネーゼ様、何かあったのですか?」
「やっぱりわかってしまったのね」
「はい。ファルネーゼ様のことは、子どもの頃から知っていますから」
セシリアにはウソはつけない。
あたしのことは、誰よりもわかっているからだ。
「……ブライラント様のことよ」
「まさかブライラント様を好きになったとかですか……?」
「ち、違うわよ……っ! いや、違わないけど、そうじゃなくて……っ!」
セシリアにブライラント様のことを言われて、あたしは焦ってしまう。
たしかにあたしは……ブライラント様に好意を抱いている。
素敵な男性だと思っているし、もしお付き合いとかできたら――
いや、それはダメだ。
だってあたしには婚約者がいるのだから。
しかも、王族の婚約者が……
「恋煩いでなければ、いったい何を悩んでいるのです?」
「あたし、生徒会長で本当にいいのかなと思って……」
ルーナ孤児院での一件。
そう。盗賊が襲撃してきたのだ。
その時、あたしは生徒会長なのに何もできなかった。
学園でモンスターとの戦闘する授業もあったけど、実戦は経験していなかった。
「あの時、あたしは誰も守れなかったの……」
「……仕方ないですよ。急な出来事で、誰も予想できないことでしたから」
セシリアはあたしの肩に手を置いて、優しく笑いかける。
すごく優しいな、セシリア。
やっぱりあたしの親友だ。
だけど――
「たしかに誰にも予想できないことだった。でも、ブライラント様はあの屈強な盗賊たちからみんなを守った。あたしは何もできなかったのに……」
「ファルネーゼ様……」
もしもブライラント様がいなかったら、あたしも子どもたちも死んでいた。
あの盗賊たちは、平気で人を殺すような連中。
たまたま強いブライラント様がいたからよかった……
「あたしは……生徒会長なのに。みんなを守る責任があったのに。なのに、あたしは……何もできずに……」
「大丈夫ですよ。ファルネーゼ様は立派な生徒会長です。ご自身を責めないでください」
「きっとブライラント様は……あたしに失望したわよね。こんなあたしが生徒会長だなんて……」
「そんなことないですよ。ブライラント様はファルネーゼ様をきっと認めています」
やっぱりセシリアは優しい。
早くブライラント様に追いつきたい。
ブライラント様のように、強くなりたい。
ブライラント様に、認められるような女性になって……
「ブライラント様、いつかあなたに追いつきます」
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