第21話 皆殺しにしてしまえ 勇者ヴァイス視点
【勇者ヴァイス視点】
「そろそろルーナ孤児院イベントか……」
俺は特別校舎の近くにある木に登って、望遠鏡から生徒会室を見ていた。
ファルネーゼが黒板に「ルーナ孤児院」と書いている。
これから、ルーナ孤児院イベントが始まるらしい。
「クソ……っ! 本当なら俺があそこにいるはずなのに……っ!!」
俺は下唇を噛む。
俺は主人公で、勇者で、そしてこのゲームの製作者だぞ?
つまり――この世界の神だ。
神をないがしろにして、あんなかませ犬の悪役がメインヒロインたちに囲まれているなんて……!
あり得ない。
あり得ない、あり得ない、あり得ない。
絶対にあり得ない……っ!!
「あれ……? またファルネーゼが黒板に何か書いて……?」
えーと……『ルーナ孤児院へ行く人:ブライラント、ファルネーゼ、エステル』
間違いなく、そう書いてある。
「嘘だろ……。ルーナ孤児院イベントは、主人公とヒロインの二人で行くはずなのに……」
俺の書いたシナリオでは、ルーナ孤児院でどのヒロインの√か決まる。
一緒にルーナ孤児院へ行くヒロインが、このゲームの「確定ヒロイン」になるはずだ。
「……つまり、メインヒロイン二人のハーレム√だと!?」
そんなハーレム√は、俺の書いたシナリオにはなかった。
このゲームに「ハーレムエンド」は存在しない。
一人のヒロインとのトゥルーエンドか、好感度が足りない時はバットエンドになるだけだ。
その二択しかないはず……
「まさかモブ悪役のブライラントが、ハーレム主人公になった……?」
ゲームの製作者である俺でさえ、まったく想定していなかった展開。
たしかにこのゲームは同人エロゲで、商業エロゲではできない過激なエッチシーンが売りだった。
だが、俺はヒロインと一対一のラブコメが好きだから、基本的に一人のヒロインを主人公が選ぶことにしていた……
「ふ、ふざけるな……っ! 悪徳領主がハーレムを作るなんて……っ!!」
俺は望遠鏡を握りしめる。
あまりの怒りに、俺はぶるぶると身体を振わせてしまう。
「……絶対に殺してやる。ブライラント」
ルーナ孤児院は、王都の郊外にある。
人気のない、寂れた場所にある。
ブライラントを殺すには、絶好のチャンスだ。
「俺はこの世界の神だ。だから何をしても許されるはず……」
そうだ。ルーナ孤児院に盗賊を送り込もう。
金ならある。クリア後にしか入れない隠しダンジョンから、レアアイテムをたくさん取っておいたからな。
大金で高ランクの盗賊を雇って、ブライラントを殺させる。
そこに勇者である俺が颯爽と登場して、盗賊を倒す。
これで、メインヒロインたちは俺に惚れるという計画だ。
まあ……孤児院の子どもが死ぬかもしれないが、どうでもいい。
神である俺は、何をやっても許されるからだ。
「くっくっく……! ブライラント! お前は死ぬんだ……っ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます