第20話 メインヒロイン二人に迫られる

「ブライラント様、ありがとうございます! ブライラントさんのおかげで、魔導士部と剣士部の争いが解決しました……っ!」


 ここは生徒会室。

 ファルネーゼが、俺に頭を下げる。

 生徒会長に頭を下げられて少し恐縮だ……


「ブライラント様の活躍は、学園新聞にも載っています」


 ファルネーゼのメイド、セリシアが机に新聞を置く。


「学園新聞に取り上げられたんですね……っ! セリシア、なんて書いてあるの?」

「えーと……『オウガ・フォン・ブライラント公爵令息、学園一の魔術師グラス侯爵令息に大勝利……っ!!」だ、そうです」

「さすがブライラント様っ! すごいです!」


 手を叩いて、まるで自分のことのように喜ぶファルネーゼ。

 まさか新聞にまで書かれるとは思っていなかった。

 おいおい。最初からすげえ目立ってしまったじゃん……


「ちょっとわたしにも見せてくれないか?」


 エステルが身を乗り出して、新聞を手に取る。

 それから食い入るように新聞を読み始めた。


「(……うん。この写真のオウガさんはカッコイイ。あとで切り抜いて保存しておこう)」


 エステルが小さな声でつぶやく。


「……? 何か言ったか?」

「あ……っ! いや、何でもない……っ! 新聞に書かれていることが事実かどうか確認しているだけだ……っ!」


 なぜか顔を真っ赤にして言うエステル。

 新聞に書かれていることが事実か確認するなんて、やっぱりエステルは真面目なキャラだな。


「ところで……今日の生徒会の議題は、ルーナ孤児院の件です」


 ファルネーゼが、黒板に「ルーナ孤児院」と書く。


「ルーナ孤児院か……?」

「あら、ブライラント様、知っているんですか?」

「いや、知らない……」


 俺は実は知っている。

 ルーナ孤児院イベント――

 王都の郊外にある孤児院を生徒会メンバーが訪問して、子どもの世話をヒロインとするイベントだ。

 ここで一緒に行くヒロインが、確定ヒロインのルートになる。

 

「では……っ! 今年、ルーナ孤児院に行くのは、わたしとブライラント様にしましょう!」


 ……と、ファルネーゼがそう言うと、


「え……っ!! ちょっと待ってくださいっ!」


 エステルが急に立ち上がる。

 いったいこれはどういうことだ……?

 ヒロイン二人が、名乗りを上げている??

 ていうか、本来なら主人公ヴァイスがルーナ孤児院に行くはずなのだが?


「エステルちゃんはダメです。ブライラント様と一緒に行くのは生徒会長の私です」

「ず、ずるいですっ! わたしがオウガさんと行くのですっ!」


 バチバチと火花を散らす、二人のヒロイン。

 これはゲームになかった展開だ。

 ファルネーゼ√とエステル√が、同時に始まっているのか??

 

「では、ブライラント様に聞いてみましょう……」

「そうですね。それで白黒ハッキリします」


 おい。この流れは……

 かなりヤバそうな予感がして――


「ブライラント様、どっちと行きたいですか? わたしですよね??」

「オウガさん、一緒に決闘をした仲ですよね? わたしと行きましょう!」


 ファルネーゼとエステルが、俺をじーっと見てくる。

 メインヒロイン二人から、同時に迫られる俺。

 いったいどうすれば……?

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