第5話 魔法学園へ入学する
「これで領主から解放された!」
「オウガ様が領主になられたほうが良かったのに……オウガ様こそ領主にふさわしいお方のはず」
次の日、馬車の中。
俺とアンジェリカは、ブライラント公爵領から王都にあるセプテリオン魔法学園へ向かっていた。
フィンに領主を任せたおかげで、俺は自由を手に入れた。
だが一応、貴族として生きていくためには魔法学園へ通う必要がある。
具体的には就活のために魔法学園を卒業したほうがいい。
楽な地方騎士の仕事にでも就いて、平和に気ままに暮らそう。
——それが俺の目標だ。
しかしその前に、勇者の主人公に関わらないようにして、破滅フラグを潰さないといけない。
魔法学園でオウガは主人公のヴァイスと出会う。
すでにヴァイスは勇者の資質に目覚めているが、それを周囲には秘密にしている。
知っているのは幼馴染のヒロイン——クリスティアだけだ。
オウガは魔法学園で何度かヴァイスと戦う。
それで毎回、オウガはヴァイスに負ける。
プライドがボロボロ傷ついたオウガは、魔法学園を卒業して領地に戻った後、領地の少女たちを犯しまくるのだ。
まずに入学試験での戦闘イベントがある。
「ヴァイスとの戦闘、どうすべきか……?」
俺は窓の外を見ながら、これからのことを考えていると、
「オウガ様との学園生活、とっても楽しみです! 一生懸命お仕えいたしますっ!」
妙にテンション高めのアンジェリカが、隣から話しかけてくる。
領地を出たことがないアンジェリカにとって魔法学園への同伴は嬉しくて仕方ないのだろう。
「ありがとう……俺も楽しみだ」
「王都には美味しいお菓子がたくさんあるんですよ! 丸くて真ん中に穴が空いてるお菓子ですとか!」
「……ドーナツのことか?」
俺がドーナツと言った瞬間、アンジェリカは目を輝かせる。
「それです! ドーナツをオウガ様と一緒に食べて……王都の街を回るのです。それから夜にオウガ様と——ああ、今からもう楽しみすぎて……っ!」
一人で「ぐへへ……」と妄想の世界に突っ込むアンジェリカ。
いったい何を想像してるのか知らないが、とりあえずスルーしたほうが良さそうだ。
まあ……アンジェリカのことは置いておいて、まずは入学試験をどうすべきかだな。
目立ってはいけない。目立てば余計な注目を集めて、ヴァイスとヒロインたちに影響を与えてしまう。
無難にひっそりと適度に青春しながら、魔法学園を卒業したい……
★
「おい。あいつ、悪徳領主の息子の、ブライラント公爵令息だろ」
「自分の父親を領地から追放したらしいぞ」
「マジでゴミだな……死ねばいいのに」
セプテリオン魔法学園の敷地に入るとすぐに、俺の姿を見た貴族たちがヒソヒソと噂してくる。おい、お前ら聞こえてんぞ!
もちろんゲームの設定では、ブライラント公爵家は悪徳領主として嫌われている。
王国の東部を外国から守っていることを大義名分にして、領地で民衆から搾取しまくっている最悪な貴族だと思われている。
まあ実際、間違ってはいないのだが……
「オウガ様は素晴らしい領主様なのに……まったく貴族のくせに愚かですね。死ね」
ふーっとアンジェリカが俺を嫌う貴族たちを見てため息をつく。おいおい、死ねはちょっと言い過ぎだぞ?!
「父上のせいでマイナススタートだから仕方ない。これから巻き返していけばいい」
「さすがオウガ様です! でもゴミカス貴族どもの評価など気にしなくても私が始末をしておきますから」
いやいや始末はガチでやめてくれ。貴族を殺したら学園でまったり青春するどころか逃亡者生活になるじゃん!
ていうかアンジェリカってこんなブラックな性格のキャラだったけ? ゲームの設定とキャラ変わってないか……?
あ、そっか。アンジェリカはゲームではオウガに心を開いていなかった。
オウガが虐待しまくったせいで本当の性格を隠していたから、今までわからなかったのか……
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