第3話 オウガ様は将来の勇者です アンジェリカ視点

【アンジェリカ視点】


「オウガ様は変わりました……」


 まるで別人になってしまったようです。

 怠惰で毎日ゴロゴロダラダラしていたのに、急に剣も魔法も努力し始めて、しかも夜は本で熱心に勉強しています。


 それに――


 あたしに、「ありがとう」と言ってくれる。

 アルトリア王国では、平民は貴族に絶対服従です。

 貴族が平民に感謝の言葉をかけるなんてあり得ません。

 しかも気配りもできて、あたしが疲れている時は早く休むように言ってくれます。

 お父様のブライラント公爵とは大違いです。

 オウガ様は本当に良い領主様です。


「オウガ様のためなら……どんなことでも」


 他の使用人たちも、オウガ様を慕っています。

 もちろん……あたしもオウガ様を慕っています。激しく。


 「オウガ様が領地を継げば、ブライラント公爵家はさらに発展するでしょう」


 オウガ様ならきっと、スキル付与の儀式で「剣聖」を与えられるはず。

 だってオウガ様は「聖人」のようなお方ですから。

 まだ子どもですけど、将来はとても立派な人――もしかしたら「勇者」になるかもしれません。


「ずっと、ずっとお側にいさせてください……」


 あたしはオウガ様に、密かに忠誠を誓うのでした。


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