第40話 なんか呼ばれた


 俺たちはゴーレムエリアにやってきて、狩りを行っていた。


「おらぁ!」


 俺はいつものように蹴りでゴーレムの両腕を粉砕した後に、両足を潰して逃げられないようにする。これで三体目のゴーレムをゲットだ。


『やはりマスターに武器は不要なのでは?』


 そんな俺の動きを見てか、マクスウェルがそんなことを言ってくる。


『違うわよマクスウェル。武器は手加減用に必須よ』


 そして通信でツッコミを入れて来る立花。なにかが間違っている気がするが、なにも間違っていないのが困りどころだ。


「ガトリング砲やヒートブレードは、本来なら強そうなはずなんだけどなあ……」

『ご安心ください。強い魔物の素材で作れば、今よりは強くなると思われます。それでもマスターが蹴った方が威力は高そうですが』

『いいじゃない。武器を失っても弱体化しないわけだし』

「そりゃそうだろうけどさ」


 現状だと武器を持った方が弱体化するのだ問題なんだよな。


 ガトリング砲を撃つよりも、近くにある石を拾って投げた方が強いってなんだよ。色々とおかしいだろ。


『そういえばマスターは配信チャンネルを作らないのですか? 話題性もありますが』

「大変そうだしなあ」


 配信者というのはすごく大変そうだ。


 俺はあまり詳しくはないのだが、企業Vtuberは毎日配信しているように思える。


 やってることはゲームプレイなどとは言えども、仕事でやるゲームはすごく疲れるだろう。言動などにも気を使わないとダメだし、キャラを演じる必要もあるのだから。


 そんな彼らだがいつ休んでいるのだろうか? なんか配信スケジュールとか見たら、ほとんど毎日配信してる気がするのだが。


 もしかして休んでないとか? いやそんなことはないとは思うのだが。


『副業にすれば儲かるみたいですよ。例えば今のマスターの映像を普通に流すだけでも、お金になるのではないでしょうか』

「流石にならないんじゃないか? 配信ってみんな色々頑張ってるだろうし。俺はダンジョン潜るのに精いっぱいで、視聴者に気を使う余裕はないぞ」

 

 投稿動画とか配信で人気が出る人は、大抵の場合は見る相手のために色々と工夫しているイメージだ。


 常にコメントに気を配って返事をしたり、面白がらせるために小粋なトークをしたりとかで。俺はそういうの自信ない。


『それについては問題ないわ。貴方の場合は【生身でダンジョンに潜る】という唯一無二の個性があるもの。工夫は面白さの点数を上げるためであって、絶対的な面白さがあれば工夫なしでも見てもらえるわ』


 そういうものなのだろうか。


 でもやはりやってみるのが面倒と思ってしまうな。ダンジョンに潜るだけで大変なのに、さらに配信もするのは……。


『ちなみにマスターがうまくやれば、月に百万以上は稼げると思いますよ』

「よしさっそくやってみるか。どうやればいいんだ?」

『あいかわらず現金ね、貴方』

 

 現金のなにが悪い! お金は大事だぞ!


 特にダンジョンに潜るなんてやってるんだからな! いつ大怪我してもおかしくないのだから、少しでも多く稼いでおくべきだろう。


 するとマクスウェルが淡々と告げて来る。


『ではチャンネルの開設をしておきます。配信も言ってくださればいつでも可能です』


 なんて優秀なAIだろうか。チャンネル開設なんて絶対面倒な作業だろうに、一言お願いしただけでやってくれるとは。


「ありがとうマクスウェル。お前がいて本当によかったよ」

『おかしいですね。私は魔物を倒すサポートなどもしてきたのですが、今までで一番感謝されている気がします』


 実際している可能性が高い。


 だって登録作業とかめちゃくちゃ面倒に決まってるしな。住所とか名前とか色々登録して、パスワードを保存しておいてとかで手間がかかる。

 

 それを一言でやってくれるのだから便利過ぎるだろう。


『ちなみにそんな優秀なAIを作ったのは誰かしら?』

「わかってるよ。立花にも感謝してるさ」

『わかればいいのよ。貴方が私から離れたら、大変なことになるから覚えておきなさい』


 確かに立花の言う通りだろう。


 まだ俺は今の日本の常識を完全に理解してないし、立花に面倒を見てもらわないとヤバイことになりえる。


 さっきのスサノオの件だってそうだ。立花があいつをハメてなかったら、テロを未然に防げなかったかもしれない。


 うん、やはりは立花のお世話になるべきだな。 


 ただ立花とてずっと俺の近くにはいないだろう。なにせ彼女は俺のそばにいるのは、俺のデータを取るメリットがあるからだ。


 逆に言えばデータを取り終えたら不要になる。それまでに自立できるように動かないとな。


『おっと。マスター、有馬美羽さんからメールが入っています』

「アルニちゃんから?」

『なんのメールかしら?』

『食事のお誘いですね。どこか空いてる日に昼食でもどうですかと』


 まさかアルニちゃんに食事に誘われるとは。


 あの娘はちょっと変わってるけど可愛いし、誘われるのは嬉しいな。


 さて俺の空いてる日はいつかと言われると、むしろ空いてない日を探す方が難しそうだ。ダンジョンに潜るのはいつでもいいし。


「マクスウェル。だいたい三日前に言ってくれたら、予定は空けられると返信してくれ」

『承知しました。ただ少々気になるのですが、マスターは立花様と行動を共にしています。立花様のご都合も鑑みた上で考えた方がよいのでは?』


 ……確かにマクスウェルの言う通りか?


 まず俺の都合に立花が合わせてくれてるわけだし、彼女の都合も聞いておいた方がいいかな。


 それこそ立花が用事のある日はダンジョンに潜れないから、その日にアルニちゃんと会う方がいいわけで。


「立花の都合の悪い日はあるか? あるならその日にアルニちゃんと会うようにするけど」

『ないわ』

「了解」


 そういうわけで俺は三日後にアルニちゃんと会うことになった。



_______________________________

マクスウェルがメールを整理している→マクスウェルを作ったのは立花

この意味がわかるか('_')

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