第30話 ギャラリーが多いな!?


 俺たちはバロネットのコクピットに乗り込んで、決闘場所へと平野へ到着したのだが……。


「……なんか迷宮魔導機ダンジョンモビルが大量にいるんだけど」


 周囲には多くの迷宮魔導機ダンジョンモビルが立っていて、空にも戦艦がいくつも浮いていた。


『キンキンに冷えたビールはいかがですかー!』

『ポップコーンだよー!』


 などと戦艦からアナウンスまで聞こえてくる始末だ。


 すると迷宮魔導機ダンジョンモビルの一機が手を挙げた。それを見てか戦艦から人の顔くらいのカプセルドローンが落ちてきて、空中を浮遊しながら手を挙げた迷宮魔導機ダンジョンモビルに近づいていく。


「なあ立花。あれは?」

「聞いた通りよ。戦艦が観戦用の飲食物を売ってるだけね。迷宮魔導機ダンジョンモビルのコクピット内で通信注文したら、カプセルドローンが品物を届けてくれるわ」

「なんでそんなことを?」

「儲かるからよ。ダンジョンに潜る人間は多かれ少なかれ、それなりのお金を持ってる者が多い。それなりの値段でも売れるもの」


 観光価格ならぬダンジョン価格か。商魂たくましすぎるだろ。


 ちなみにお値段の方だがヤバイ。たまにアナウンスが聞こえてくるのだが、こちらポップコーンのSが五千円となっております。


 誰が買うんだよ馬鹿か! と言いたくなるのだが、戦艦を出撃したカプセルドローンが飛び回ってるんだよな……。


「あ、もしかしてダンジョンでしか取れないモノで調理してるのか? それなら高いのも納得……」

『基本的には百パーセント地上産ですよ。オーク肉の串焼きなどを除けば』


 マクスウェルが普通に答えてくれた。原価率がどれくらいか問いただしてみたいところだ。


 いやまあ燃料費とかが大きいのだろうけどもさ。


「わからん。こんなとこでお高く買うよりも、最初から持参で来た方がいいだろ……」

『野球場でビールを片手に飲む球場飯は美味しいそうですよ。戦艦内なら調理もできますので、出来立てホヤホヤの食事が楽しめます』

「塩なんかの調味料も不足しないものね」


 なるほど。確かに迷宮魔導機ダンジョンモビルのコクピット内で火を使うわけにもいかないし、美味しい食事を食べたいなら注文するしかないのか。


「ちなみに味は悪くないわよ。高値を取るだけあって、ちゃんと料理人を雇ってるし」

『以前に味が酷い時もあったそうですが、悪質クレーマーが迷宮魔導機ダンジョンモビルのマシンガン撃ちこみましたからね』


 流石はダンジョンだ。悪質クレーマーの規模が違うな。


 そんなことを考えていると、俺たちの方へと銀色の迷宮魔導機ダンジョンモビルが近づいてくる。


『国際ダンジョン機構の者です。今日の決闘で使う武器に関して、違反行為がないか確認させてください。応じない場合、決闘は許可できません』


 迷宮魔導機ダンジョンモビルはバロネットのすぐ側で止まると、電子音声でそんなことを言いだした。


 はて。武器確認なんてルールがあるとは聞いてなかったが。


「渡しておきなさい」


 と立花がハッチを開いたので、俺は銀色の迷宮魔導機ダンジョンモビルの手の上にガトリング砲とヒートサーベルを置いた。


 すると銀色の迷宮魔導機ダンジョンモビルの目から光が放たれて、しばらく俺の武器をスキャンした後に。


『ありがとうございます。違反はありません。回収してください』


 などと言われたので武器を回収して、またコクピットの中へと戻る。


 すると銀色の迷宮魔導機ダンジョンモビルはさっさと去っていく。なんだったんだ?


「あら。マスオも来たみたいよ」


 立花がそう言うと同時に、他の機体たちが一斉に道を空けた。


 その先にいたのは漆黒の人型機である【タナトス・ヘル】だ。スサノオの乗機としてやはり有名なようで、他の迷宮魔導機ダンジョンモビルたちが露骨に距離を取っている。


『いい心がけだぞ雑魚ども。この俺様に恐れをなすなら、多少は長生きできるだろうよ!』


 スサノオの声が聞こえてくる。でも恐れをなして退いたんじゃなくて、厄介で面倒だから離れただけだろうな。


 そんなスサノオの機体は俺たちの方へとゆっくり歩いてくる。


『よお生身野郎。俺を怒らせたんだ、楽に死ねると思うなよ』


 と言われているのだがどうしようか。


 ここで過激なマイクパフォーマンスをして、スサノオと同類に思われるのは流石に嫌だしなあ。ほんの少しだけ、たぶん三秒くらい返事に迷っていると。


『てめぇ……! この俺様の言葉を無視だと! 殺すっ!』


 なんとスサノオは三秒でカンカンにブチギレてしまった。こいつ、冬でもヒーターいらないんじゃなかろうか。


『マスター。さっさとコクピットから出て決闘して、速攻で勝利して終わらせましょう。ちなみにこの決闘はネットで配信されていますので、今度はネタ素材にならないようにお気を付けください』

「そうだ。回らない寿司でも食べに行きましょうか」

「おい立花。ネタ素材で思いついただろそれ……いいけどさ」


 時価おいくらの寿司は食べたことがないので、行ってみたい気はしている。


 たぶん一度行ったら満足しそうだけどな。


 コクピットハッチが開かれたので外に出ると、【タナトス・ヘル】は俺の方をジッと睨んできた。


『おいおい! 本当に生身で戦うつもりかよ! ……殺してやるよ、ゴミが』


 どうやらスサノオは堪忍袋の緒どころか、袋自体が切れてしまったようだ。


 ブチギレを通り越して大人しくなってる気がする。まあ俺のやることは変わらないが。


『やっと始まるのか! 本当に生身で戦うのかよ!』

『やれぇ! あの迷惑野郎をぶっ潰せ!』

『なんなら誤って殺してもいいぞ! あの野郎のせいで何人もの奴が犠牲になったんだ!』

『ジャイアントキリングを見せてくれぇ!』


 周囲の迷宮魔導機ダンジョンモビルは俺たちを囲むように観戦し始めた。


 それに小さなカメラのついたドローンが、少し離れた場所で数えきれないほど飛び回っている。どうやら全方位で配信用の録画をされているようだ。


 そんな中でさっきの銀色の迷宮魔導機ダンジョンモビルが、俺たちの間に歩いてきた。


『国際ダンジョン機構から来ました氷室です。今回の決闘の立会人をさせていただきます』


 おや? さっきと違って電子音声じゃないぞ。


 というか氷室さんが乗っていたのか。それならさっきは少しくらい話してくれてもよかったのに。


 ……ところで立会人が身内なのはいいのだろうか? まあいいや、俺に損はないし。


『では二人とも距離を取ってください』


 言われるがママに俺と【タナトス・ヘル】は互いに背を向けて歩き出す。そして一キロくらい離れた場所で立ち止まった。


『生身野郎。今日がてめえの命日だ。お前は絶対に俺に勝てねえんだよ』

「やってみなきゃ分からないだろ?」

『いいや、分かるね』


 スサノオは先ほどとは打って変わって、薄気味悪い笑い声を出してきた。


 なにか策があるのかもしれないし警戒しておこうかな。


 すると氷室さんの機体が片手を大きく振り上げる。


『では双方とも正々堂々と戦ってください。また私が止めた時点で戦いは終了するように。止めない場合は犯罪行為とみなします』


 そう言い終えて少しの時間が経った後、氷室さんの機体は勢いよく腕を振り下ろした。


『決闘開始!』


 さっそく俺はガトリングを【タナトス・ヘル】に向けて構える。


 さっさと終わらせて回らない寿司を食べようと、引き金を引くのだが。


 ――ガトリングの砲身がまったく回らず弾丸が出てこない。


『ククク、ククク。おいおいぃ! どうしたあ? 武器の整備は基本中の基本だろぉ? まさか知らない奴に武器を渡したなんてことないよなあ?』


 少し困惑しているとスサノオの笑い声が聞こえて来た。


 あー……さっきの銀色の機体ってこいつの仲間だったのか?


『ぐはははっは! 武器も使えないんじゃもう俺には勝てないよなぁ! 死ねヤァ!』



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