第21話 魔法+少女=?


~立花所有機体ドック内部~



 ゴーレムを狩った翌日。俺は立花の機体ドックの中で、武器を調整してもらっていた。ちなみに有馬さんとここで待ち合わせしているので、そのうち彼女も来るはずだ。


 相変わらずここには機体がいくつも並んでいて、その中にバロネットもある。


 ちなみに有馬さんが今日乗る機体も、立花が貸し出すことで話がついた。有馬さんは新しい機体を購入する予定だったみたいだが、それに立花が待ったをかけた感じだ。


 待ったをかけた理由については「無償でテストパイロットが得られる貴重な機会よ」と言っていた。


「なあ。立花はバロネット以外の機体には乗らないのか?」

「乗ることもあるわよ。それこそこないだのローパーの場所は、行くのが分かってたら他の機体に乗ってたわよ。ただ余ってる機体があるのも事実だけどね。自分で作ったけど私だと魔力不足で乗れない機体もあるのよ」

「なんで乗れない機体を作ったんだ?」

「作りたかったから」


 作りたかったなら仕方ないかー。巨大ロボットなのにプラモデル感覚なのはすごいが。


 そんな立花は空中コンソールを叩きながらため息をついた。


「ゴーレムの魔核でも貴方の魔力に全く耐えられてないか。そのうち壊れてしまいそうだから、もっと多く魔力貯蔵できる素材を手に入れたいわね」

「今回のヒポグリフはどうなんだ?」

「あれには期待できないわね。軽いわりに丈夫な素材だから、飛行系の迷宮魔導機ダンジョンモビルを作るのには役立つのだけれど」

『ゴーレムよりも魔力貯蔵できる素材は、Eランクエリア以下では取得できません。探索者ランクを上げないと』


 立花の言葉にマクスウェルが付け加える。


「そういえばランクを上げるにはどうすればいいんだ? Eランクになった時は倒した魔物の数だったけど」

「ランクごとに昇格条件は違うわ。Dランクに上がる条件は二つ。ゴーレムとヒポグリフの討伐よ」

「じゃあ今回の狩りがうまく行ったら昇格できるのか」


 ヒポグリフと戦うのは対空戦闘に慣れるためと言ってたが、ランク昇格の方がメインな気もするな。


「そうね。ただヒポグリフは……」

「お、お待たせしましたっ!」


 立花の言葉に被るように、リュックを背負った有馬さんがドックへと入って来た。

 

 彼女は俺を見つけるとペコリと頭を下げてから近づいてくる。


「ほ、本日はありがとうございます! よろしくお願いしますっ!」

「こちらこそよろしく頼むよ」


 ……なんか有馬さんの距離が近い。手を伸ばしたら普通に身体が当たってしまいそうなので、コッソリと少し距離を取る。


 女の子に触ってセクハラと言われたら困るからな。ましてや有馬さんはかなり可愛らしいので、余計に目を付けられかねない。


 正統派美少女は俺には眩しすぎる。


「あの! ダンジョンに潜るときに少し変な恰好してもいいですか!?」


 前言撤回、異端派美少女だったかもしれない。


「へ、変な恰好とは?」

「ええと。こんな感じです」


 有馬さんはリュックを背中から外して、チャックを開いて何かを取り出した。


 なんか魔法少女のドレスっぽい服と水色のカツラだ。いやウィッグって言うんだっけ? 違いが分からないけど。


「実は迷宮魔導機ダンジョンモビルに乗る時は、いつもこの服を着てまして……それであの、この服を着てるとちょっと強気になれるんです」


 なんで? と口に漏れそうになるのをこらえる。こういうのは下手に触れない方がいいのだ。


 ほら他人の趣味とか好きなことは、下手に悪く言うと嫌われるし。


「……いいんじゃない? 慣れ親しんだ服装が一番だろうし」


 迷宮魔導機ダンジョンモビルにはパイロットスーツが不要だし、服装は各個人の自由だ。立花だっていつも白衣だしな。


 むしろここで急に服装を変えて、そのせいで失敗する方が困る。それこそジンクスとかがあるかもしれないし。


「ありがとうございます! じゃあ着替えを……」


 有馬さんはキョロキョロと周囲を見回した後、立花に視線を向ける。


「立花さん、着替える場所ってありますか?」

「ないわね。元々私しか使ってない場所だったから、その辺で服を脱いでたもの」

「あの。私、外で着替えてきますね」

「必要ないわよ。ここで着替えなさい」


 立花の言葉に有馬さんは固まってしまった。少し顔が赤くなってる気がする。


 そんな有馬さんは俺の方をチラリと見た後に。


「あ、あのっ!? 流石にここで着替えるのはちょっと……!」

「大丈夫よ。問題ないわ」

「でもっ!」

「コクピット内で着替えればいいじゃない。なにか問題があるのかしら?」


 なるほど。確かにコクピット内で着替えればいいだけだな。


 自動車の中で着替えるのとノリ的には同じか。


 有馬さんはホッと息をついた後に、


「あ、そ、そういうことですか……」

「これが貴女の機体のキーよ。まあお望みなら別にこの場で脱いでもいいけど」

「お、お望みじゃありません!?」


 有馬さんは立花からカードキーを受け取った後、並んでる機体たちに向けて走り出した。


 すると機体のひとつが勝手に膝をついて、コクピットハッチが開く。有馬さんはその機体に乗り込んでいった。


「……自動で動くのか」

「そうじゃないと乗り込めないのよ。宇宙空間ならともかく地上だとね。コクピット部屋をエレベーターにするのも考えたけど、やはり機体を動かしたほうがいい」

『機体を倒しておけばいいのですが、そうすると横長になって場所を取りますからね。並べて立たせておく方がいいんですよ』


 そういえばコクピットが高い位置にある機体って、宇宙空間じゃなかったら不便だよな。


 ワイヤーで上がってコクピットに乗り込むの見たことあるけど、あれけっこう怖そうだし。なら自動運転で機体が膝をついて、コクピットを下げるのもありなのかね。


『マスター。有馬様から通信です』


 有馬さんが機体に乗り込んでしばらくすると、空中ディスプレイが表示された。


 そこにいたのはコクピットに座る魔法少女だ。シュールである。


 流石に魔法少女がロボットに乗る作品は知らないな……組み合わせがカオス過ぎるし。


『初めまして! 以前は助けて頂いてありがとうございます! アルニ・ミウムと言います! ボクも頑張りますので今日はよろしくお願いします!』


 ……んん? なんかいきなり初対面みたいに挨拶されたぞ?


 困惑しているとマクスウェルが話しかけてきた。


『おそらくですが二重人格に近いノリなのでは? たまにいるじゃないですか。家と外で別人格みたいな人とか』


 そんなレベルの話か? 


『自分に催眠をかけている可能性もありますね』


 そういえば昨日、有馬さんがなにか言いかけてたな。私が潜るわけじゃ……って言ってたけどこういうことだったのか。


 だがまあ俺の取るべき行動はひとつだ。


「初めまして、俺は神崎だ。今日はよろしく頼む」


 ムダにトラブらないように相手に合わせる! これ最強の処世術なり!


 すると立花が小さく笑った。


「思ったより面白いことになりそうね。じゃあ出撃しましょうか」




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ロボットに乗る魔法少女。

流石にないやろと思って調べたらゲームがあった('ω')

まあアイドルやサラリーマンや魔法騎士がアリなら、魔法少女だってアリでしょう。


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