第11話 後は任せた!
「ふぃー…………」
あぁ、やっぱ吸ってる時が一番落ち着くなぁ。
店の近くにある喫煙所で煙草を吸う。吐いた煙がボンヤリと消えていくのを眺めながら一日の疲れを癒す。
極限のギリギリまで、吸えるところを吸い込んで、煙草を捨てた。
「いらっしゃいませー。」
また、聞き慣れた自動ドアの音と共に、深夜帯にいつもいる店員の声を聞く。俺は毎日来ているが、この店員も深夜帯に毎日いる。学生かと思っていたが、改めて思うとフリーターなのかね。
今日は……くそ固い小豆のアイスだったな。それと、元気印用のソーダ飴も買っとかねぇとな。
俺はアイスと飴玉をレジに通して店を出た。
相変わらずの素早い手付きで会計が終わる。あの店員にもなんか異能力があるのかとたまに勘繰る時がある。
店を出ていつもの道を歩く。
「よお!久し振りだな!【雷鳴】!」
「………速く帰んねぇと。」
夜は変なやつも多いし、道中気を付けねぇと。
「おい、待てよ。まさか【走り屋】の名を忘れたとは言わせねぇぞ?」
俺の肩を掴んで喋りかけてくる不審者。
「………………」
このアホは学ばないんだろうか?
「よお、会えて嬉しいぜ?」
「今度はなんだ、ていうか部下はどうした?一人か?」
「目線合わせんな!子供扱いすんな!
……うっうん!今日は一人だ。俺はお前に、決闘を申し込む!」
【走り屋】が人差し指をピン!と伸ばして宣言してきた。
なんとなく元気印と重なるのは癪だが、幼く見えてしまうから仕方ない。
「ハァ?寝言は寝て言え。おねんねの時間だろ?とらちゃん。」
「なぁ!?【雷鳴】てめぇ!ふざけんなぁ!」
感覚的に腕を降ろしたところ、とらちゃんの足が当たって防御に成功した。
「やっぱ察知すんのはムズいな。隊長ってだけはあるんだな?とらちゃん。」
「ふっざけんな!俺の攻撃よゆーで防ぎやがってよぉ!」
続けて飛んできた拳にも風を切る音は聞こえなかった。【走り屋】の攻撃は目視のみでしか判断できない。簡単なようで意外と難しい。
「メンドクセーのは変わんねぇよ!」
救いなのは、こいつの一撃がそこまでってことだな。腹に食らっても耐えれるぐらいだ。
「………っ!」
「甘めぇな!」
とらちゃんの上からの拳を受け止めつつ、手首を掴む。
「てめっ!離せ!こらぁ!」
もう片方の手も掴み、片手でとらちゃんの両手を掴んで引っ張る。
でも、こいつどうしよっかなぁー。また沈めるのは芸がないし、見た目があれだからノシとくのはこじれそうだからなぁ。前は複数だったから容赦はしなかったが、一人だけだとなぁ………あ!良いこと思い付いたな。
「お黙り、とらちゃん。」
俺はとらちゃんがギリギリ歩けるくらいの速度で引っ張る。
「はぁ!?俺の攻撃止めたくらいでいい気になってんじゃねぇぞ!おい!ゴラァッ!」
「キャンキャン喚くな。はいはーい、黙ってついて来てね~。」
お前は犬かよ。
「あぁ!くそ!なんで力強ぇんだよ!」
おめぇが弱いだけな気がするがな。
しばらく歩いた後に、目的の場所についた。
「……あぁいたいた。
おーい!」
「あん?何だよ………っ!」
「ん?おぉ、左近くんじゃないか。元気だったかい?」
俺が手を振ったのは警察官の男。名を紅納三弥。
「ボチボチさ。」
「そうだ!今から打ちに行かないかい?勤務時間はもう終わるし、どうだい?」
三弥さんはいい人なんだが、根っからのギャンブラーでもある。正義感もあるし、悪人を絶対に許さない警察として立派な人だ。それとハズレ台も許さない。
「いやーならすまねぇことしたな。」
「ん?何がだい?」
「こいつ。」
俺はとらちゃんを三弥さんの前につきだす。
「俺!?」
とらちゃんは警察を見て存在感を消していたが、俺が見せたことで動揺して三弥さんにも気付かれた。
「ん?かの……かれ………?がどうしたんだい?」
三弥さんは少し見て、困惑しつつも俺に尋ねてきた。
やっぱ初見は分かんねぇよなぁ………
「未成年かと思ってよ、つれてきたわ。」
俺は嘘をついて、三弥さんの方にとらちゃんの背中を押した。
「あぁ!?ふざっ!てめぇ!嵌めやがったな!?」
俺に罵声を飛ばしはするが、警察の目もあって手は出してこない。そこら辺はちゃんとしているようだ。
「………確かに、ちょっと年齢確認させていただきますね。左近くん、ご協力感謝します!」
「はぁーい、よろしくお願いします。」
三弥さんのビシッ!とした敬礼に俺も軽く敬礼して返す。
「てめぇ!覚えてろよ!」
「バイバァーイ。」
俺は手を振りつつ、さっさと離れた。
う~ん、流石固いで有名なアイス。触った感じ大丈夫そうだ。
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