第9話 回る回路
「チッ!調子に乗るなよポンコツが!誘き出された分際でへらへらしてんじゃねぇ!」
臼杵が怒号と共に俺の顔に蹴りを入れてきた。
まぁ、頭をずらすだけで避けられるちんけな攻撃だが。現実が辛いのは分かるよ?あんなアホよりも弱いって自分で言わなきゃいけない俺も辛いんだから。
「おいおい、熱くなるなよ。この部屋の家具はこの建物持ってるやつのだろ?」
「お生憎様、ここは流水の所有物だ。うちのボスも笑顔で許してくれるサ。真っ赤に塗装してくれてありがとうってなァ!!!」
こいつ、やけに狙いが正確だな。達人ってわけでもなさそうだが、俺の動きを読んでいる?臭いな。
「お前、なんて異名?」
駆け引きなんて面倒だから、正面から聞けば良いか。
「なんだ?知りたいのか?」
食い付いた!あの余裕、よほどのペテン師でもない限り、異能力は確定で持ってるな。
「悪ぃ~勤勉な俺でもぉ?小粒までは網羅出来ねんだわぁ~。教えてくれよぉ?」
「は!礼儀のなってないガキが。良いだろう。俺の異名は【人形師】。俺の前から逃げられるかな?」
んーなんつーか。
「弱そ~。」
「本音を出すな!
俺を舐めてること、後悔させてやろう!」
自分でも思っているのか、そう突っ込んだ後、青筋を浮かべながら怪しい動きをする。
臼杵の目が怪しく光ると、近くにあったティーカップを上空へと投げた。
「なにを……」
無意識に視線を持ってかれた。
「そら!」
間髪いれず、臼杵の回し蹴り。
だが、雷を纏える俺ではこの程度の攻撃は無力。
「当たるか、バァー…痛!?」
こいつぁ、ティーカップか?
後ろに避けたら脳天に直撃してきた。
「ザマァねぇな?雷鳴くぅん?」
うぜぇ。このオッサン芸人になった方が良いんじゃねぇかな?その顔の可動域気持ち悪いわ。ぜったい変顔を年末の隠し芸でやってるタイプだな!
「フゥー。」
さ、リセットリセット。
「まだまだ終わんねぇぞ?」
臼杵の左フック。こんな一般人よりちょっと速い程度の攻撃、食らうわけ……がっ!?
何でだ!?思ってるほうとは逆に俺の身体が動きやがった!?
これが【人形師】?あいつが作者で俺が駒ってか。
「久し振りに痛いって感じたぜ。」
チッ、異能力なんて持ってても、防御に使えなけりゃソイツはただの人。俺だって雷での回避がなくなったらナイフ一本で御陀仏だ。
「フッハッハ!もっと楽しんでくれよ?」
どういうカラクリだ?人形師、対象を操るは分かるが、まだ分からない。今のは間違いなく操られたのだと自覚出来たが、ティーカップの時は?操られたのか?それともまぐれか?分かんねえ。
「【人形師】………厳つい顔のクセにずいぶん可愛いお名前だこと。おままごとがお好きですか?ってな!」
全身に雷を纏い、全速力で臼杵の厳つい顔を殴……れなかった。
っ!躱された!?………いや、奴は動いてなかった。つまり、俺が外した………!
「必死だなぁ、雷鳴くぅん。」
「てめぇ……」
俺が目測を誤ったわけじゃなさそうだ。だったらあいつの余裕そうなあのムカつく顔は出来ねぇはずだ。
「睨んでも良いことなんか起きないサ。」
クソ!分かったことと言やぁ、俺を意のままに操ることは出来ないってくらいか?こうなったら……
解決するまでひたすら殴る!
「く!」
「当たらんね。」
「うら!」
「あくびが出てきたよ。」
「そこぉ!」
「ダメダメ。」
あぁ!クソ!全ッ然当たらねぇ!
「おら!どりゃ!」
「無駄無っ!?」
当たった!?
俺と臼杵はお互いにバックステップで距離を取る。俺は驚きで、臼杵は追撃を恐れてってとこだな。
「………」
さっきと前の、違いは………
「なんだ、まぐれか!脅かしやがって!」
俺のラッキーヒットだと悟ると、再び臼杵は余裕そうな笑みを浮かべた。さっきまで、警戒していた顔が嘘のように、だ。
いや、待てよ、まぐれ?まぐれ、まぐれ………っ!不意打ち!
「へっ!あぁ、俺は拳で話すタイプなんだわ。だからもっとお喋りしようぜ?なぁ!」
悟られない。これが今俺に出来る最善手!
「一人寂しく喋ってろ、ガキ。」
乗った!ここで、回し蹴り!
「っ!」
やっぱ外れる、予想内。
「おいおい、同じ手は効かねぇぞ?」
だから、もう一発!
後ろ蹴り!
「フッ!」
と、見せかけての裏拳!
「がっ!?」
臼杵が耐えきれずに後ろに飛ぶ。
身体で隠した虎の子だ。
「俺の力どう……
おぉーい、臼杵ー。」
ペチペチと頬を叩いてみたが反応がない。
「……かーくほ。」
今日のお仕事は終わりだな。
あとは頭に連絡してぇ、あ、表の二人も連れてってぇ、えぇー。とりあえず縛って頭に丸投げでいいか!
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