第5話 ナカマガフエタ!
さてさて、今日も一服……
「おい、面貸せや。」
「…………」
いや、きっと人違いだ。俺じゃねぇ。
俺は煙草を咥えて火をつける。
「てめぇ、舐めてんのか?」
男がそう言うと、俺の煙草をブンどって靴で踏みつけた。
これには、仏でお馴染みの俺もブチギレよ。
「てめー、俺の赤マルどうしてくれんだよ?」
「あ?知るか!てめぇがシケタ面してっからだろ?」
そいつの発言に後ろの取り巻き含めて笑いが起こる。
こちとら一日の疲れを落としにここ来てんだから、シケタ面してんのは当たり前だろうが!?
俺は内心の怒りを必死に抑えながら話しかけてやる。
「で?何のようだ?」
「いやぁ、俺らちょっとスっちまってよぉ…お前から金貸してくンねぇかと思ってよ。」
後ろの奴らの噛み殺すような笑い声。
「は?なんで俺が?」
「まぁまぁ、良いじゃねぇか。俺の顔に免じてな?」
いや、俺はお前のこと知らんし、お前がどんくらいの地位にいるのか知らn臭!?こいつ口クセェ……それに、加齢臭がキチー…………良い年してカツアゲかよ。
「嫌だが?」
「そうか……おう!おめぇら。
てめぇも、ちょっと来いや。」
あーイライラするぅ~~~!!!
こいつらどこまで歩くんだよ!?一吸いも出来てないのに地面から上がる香りだけしか嗅げなかったせいで焦らされてンだよぉ!
クソォ……頭の夜食の時間まで、そろそろヤバそうだ。それに今日は元気印の分も買わないと。
「おい!いつまで歩くつもりだ?いい加減にしろよ?」
俺が少し凄んでも、こいつらは飄々とした態度を崩さないで薄ら笑いをしながらこちらを向いた。
「おうおう、子猫ちゃんが威嚇してらぁ。」
「へっへっへ。」
…こいつらのバックは相当なとこってことか?それとも野良のアホ?
「落ち着けって、俺達のボスがお見えだ。」
「………」
これ長くなるぅ?
「よぉーこいつが今日の…か?」
「へい!」
現れたのは二メートルはあるであろう巨漢の男。
まぁ、一般人なら圧倒されるだろうが、俺からしたらほーん…で?としかならん。
「お前、自分の不運を呪いな?」
「…そうだな?俺もその言葉、返してやるよ。」
俺は能力を使用してアホどもの目の前に蹴りを放つ。
「あ……?ヒィィ!?!?」
巨漢の男は情けない声を出し、さっきの奴らは腰を抜かしている。
「なぁ、答えろよ?お前らはどこのモンだ?場合によっちゃあ……」
「ま、待て!こた、答えるから!」
あ……頭の夜食タイム突入………
とりあえず計六人のアホを正座させ、巨漢のみ回答することに許可を出した。
「さ、言え。」
「お、俺達は流水組を抜けたんだ。今は根無しの野良だ。」
その時、全員から悲壮感が漂った。
「フゥー…流水か……あんま良い噂は聞かねぇな。」
俺はやっと吸えた煙草を噛み締めるように味わいながら呟いた。
「へい、俺達も嫌気が差して脱退しやしたが、手を回されちまって……」
あらぬ噂、流されたってとこか。
「それでこんなことをしてた、と。」
「へい、でもカタギは狙わないようにしてたのは俺達なりの矜持でさぁ。」
………使えそうだな。
「そうか、俺は松井組の苫成ってモンだ。困ってンならうちの組に入る口添えをしてやらんくもない。」
「っ!本当か!?」
アホどもの顔が輝く。
「あぁ、だが条件がある。」
「「「「「「「……ゴク。」」」」」」」
「頭、只今…」
「遅いぞ!」
怒号が俺を襲う。
「すいやせん、ですが代わりと言ってはなんですが………」
俺は袋いっぱいの駄菓子と今日の夜食を手渡した。
これ全部、アホどもの持ち金から出した。へへ、得した気分だぜ。
「ほー良い心掛けだ。だが、それで許されるとでも?」
頭は腕を組んで不機嫌オーラを出している。
「へへ、それともう一つ。いい拾いもんがありましてね。」
「ほう?詳しく?」
頭は何が来るかと嬉しそうに笑う。
「お前ら。」
「「「「「「へい!」」」」」」
六人がぞろぞろと玄関に入ってきた。
「……誰だ?」
あからさまに頭が不機嫌になる。
「こいつらは、元流水組のモンです。」
俺は少し声を抑えて話す。
「っ!………ほぉー新顔、こっち来いや。」
アホ六人が頭の部屋に連れていかれた。
まぁ悲惨なことにはならんだろ。頭が目を光らせて笑っていた。昔、酒の相手をした時に流水組がメンドイとか愚痴ってたし、潰す大義名分が手に入るかもしれないと喜んだのだろう。もし、情報がカス程度でも男六人便利な駒…ウォッホン!部下が出来るし、アホは就職出来る。どちらもウィンウィンだと思う。
「さて、俺は二人にお詫びを渡すか。」
いつもの部屋を開けると、いつもの四人でゲームをしていた。
「あ、左近おかえりー!」
「おかえり!」
「ただいま帰りました。それと、お二人にはお土産を。」
俺は袋から二人にお菓子を手渡す。
「わあ!これ、積木堂のどら焼きだ!」
「やったー!左近大好き!」
「へへ。今日のお詫びです。」
「「?」」
覚えてないみたい。まぁ、良いか。可愛い笑顔が見られたし。
「じゃあ、お母さんにお茶貰ってくるね!」
「私も行くぅ!」
タッタッタァー、と二人で部屋を出ていった。
「なぁ。」
「………」
「なぁ。」
「なんだ?」
「今日の…お詫び?」
元が顔を斜めにして両手を差し出してきた。それは女子どもがするから効果があるのであって、お前がやっても吐き気しかでんわ。
「お前には無いぞ。」
「っ!?何故だ!?」
元が愕然とした顔を向けてきた。
「お前が良い大人だからだ。」
「………チキショー!」
膝をついて畳に拳を叩きつけている。
こいつ、教育に悪すぎだろ………
「ハァ。」
苦労人の徹がため息をついた。
お前も大変だなぁ。
そう思っていると不意に目が合う。意志疎通をしたように、俺と徹がグータッチをした。
「あ、ずるいぞ!俺も混ぜろ!」
子どもか?こいつは………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます