第4話 最強とは

「よう、昨日も安藤組に絡まれたんだって?」

 元がドカリと隣に座りながら話しかけてきた。

「おう、まあな。」

「で、どんなやつだったんだ!?【百足】か!?それとも【風花】か!?」

「そんなに気になるのか?」

 俺がそう聞くと、ずいっ!と顔を近付けてさらに熱く語る。

「もちろんだ!安藤組には俺の憧れが何人もいるんだ!そんな人達に…くぅー!俺も絡まれてぇ!」

 多分そんな有名な人達に絡まれる時は、自分の命を犠牲に……だろうな。

「残念だが、俺が絡まれたのは【走り屋】って奴だったぞ。」

「【走り屋】?…………あぁ、確か最年少で隊長になったやつだったか。」

 途端にテンションが目に見えて下がる元。

 それはちょっと酷くないか?

「いや、テンション……」

「悪ィが、俺は武勇伝のないやつは興味ないんだよ。それで言ったら俺はお前の事も憧れの対象なんだぜ!」

 元はそう言って俺と肩を組もうとする。

「やめろ!テストがズレちゃうだろ!」

「あ、ごめん………」

 ……強く言いすぎたか?

 その後、徹が部屋にやってきて、元気印の迎えに行くまで元は無言だった。



 元気印が帰ってきた後も妙に覇気がなく、二人も今日は元が元気ないと、大好きなおやつタイムに心配そうに聞いてきた。わざわざ手を止めることは無かったが………

「うーん、俺があとで聞いときますんで、お二人はいつも通りいてください。」

 一先ず安心させるにはこれが一番だろう。

「分かった!」

「じゃあまた、ゲームしよ!」

「っ!……そっすね。」

 またハブられるのかぁ………


 二人がゲームの準備をしている時、元が俺を呼んだ。

「………」

「なぁ、元。いつもの調子はどうした?」

「思ったんだけどよぉ……」

「?おう。」

「さっきのヤツでさ…俺って【雷鳴】に喧嘩売ったってことだよな?」

「……うん?」

 さっきってことは、元が肩が組もうとして俺が拒否したやつか?

「つまり、俺はタイマンで【雷鳴】に挑んで生還できたって自慢していい……いった!?」

 なんかムカついたから元の足を踏んだ。

「そんなことかよ。」

「あぁ?俺には重要な……」

「そんなことで、坊と嬢に心配かけさせるな。そんなんじゃお世話係失格だぞ。」

 俺は耳元でドスの効いた声で呟く。今の怒りも込めて。

「っ!………そうだな。悪い。」

「そう思うならいつも通りのアホ面を晒せ。」

「アホ面は余計じゃい!」

 そう言って、元はいつもの調子で障子を開けた。



「あれ?元戻った!」

「ホントだ!」

 元気印の嬉しそうな声が響く。

「ごめんなー!心配かけて!」

「どうしていつも通りになれたの?」

 道理坊が尋ねる。

「んー?左近とちょっとな。」

「「っ!」」

 その瞬間元気印の顔が一瞬強張ると、突然元をバックに俺と元の間に両手を広げて立ちはだかる。

 ……あーそういや二人が頭に説教される時も"ちょっと"って言うわ。それのせいか。

「お?」

 アホはまだ気付いてないようだな。

「左近、ダメ!」

「怒っちゃダメ!」

「ナルホドナ」

 祈理嬢の言葉にアホも状況を理解できたようだ。

「二人ともありがとうな!三人でにっくき左近を倒すぞ!」

「「おぉ!」」

「は?」

 なぜそうなった?



 Lose 

 Lose

 Lose

 Lose

 Lose…………

「また……負けた………」

「ハッハッハ!天下の【雷鳴】様も他愛ないな!これならタイマンで勝ったとも自慢出来るな!」

「わぁーい!僕達の勝ちぃー!」

「やっぱ左近はゲーム弱いねぇー。」

 ガフッ!?

「お前ら………弱いものイジメは楽しいか!?」

「「「うん。」」」

「なっ!?

 ………なら実力行使じゃぁ!!」

 俺は立ち上がって三人を追いかける。

 このままじゃ元気印がイジメっ子になっちまうからな!元凶は断つべし!

「うわ!?逃げるぞ!」

「わー!左近怒ったぁ!」

「きゃー!逃げろ逃げろぉ!」

 

 ドタドタ!バタン!


「スマン、遅れ………」

 徹が障子を開けたタイミングで三人が部屋の外に逃げる。

「あ!………」

「な、何してんだ?」

「……いや、なんでもないぞ。」

 フフフ、勝ったな。

「ん?三人を追いかけなくて良いのか?何か用があったんじゃ?」

「あぁ、最強が君臨するからな。俺は巻き添えはごめんだな。」

「?…………あぁ。」




「暴れない!!!!!」

 しばらくして、案の定姐さんが君臨し、三人は正座反省会をしていた。俺が通った時に、三人分の恨めしそうな視線を受けたが華麗にスルーしてやったぜ。

 これで理解しただろう……俺を敵に回すという意味を………。

 あれ?これ俺が嫌われただけでは?

 ………道理坊と祈理嬢には頭の夜食のついでに何か買っておくか。

 アホは………別に良いや。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る