終わりの物語 地獄ひとり輝く

 明るいなか空の塞ぐ。陰影さした。

 どこか草原、寂しい風のびゅうぅとし、単に曇ったのでない。

 空まったく宇宙戦艦の敷き詰まったがためだった。

 パズルのピース埋めるよう、戦艦で暗くなっていく。

 これ見上げ、だらしない着こなしした制服姿の少女たら一筋涙し睨んでいた。

「いやぁ、ロボット一掃して数年で、こんど異星人とはなかなかだね。アカロちゃん」

 アカロのスカートのポケットから声。

 携帯端末の取り出す。

 画面中で、ずいぶん解像度よろしくなった黒シルクハットの青年あった。

 もはや現実で出会ったときに遜色なく、うざったい。

「なんでどんどん不愉快にするの?」

「おや、バージョン八・一七嫌い? じゃあ次さ立体として浮き上がる僕とか……」

「いらねぇ」

 穏やかでなく、重たく戦艦よる垂れこめようも、この世間話のつづく。

「でも衿巻さんあのあと、いっさいドランカァドじゃなくなってミイラ化でしょ」

 映像の動き滑らか、指折り始まる。

 まず親指。

「音予さん亡くなって、地獄鳩の店じまい。ほんとうオリン次いでほしかったてさ」

 つぎ人差し指。

「で、アカロちゃんに僕たら、ドランカァドの力の件や、ロボットの問題で人類から追っかけられてる」

 中指。

「そして、いま天空塞いでいるの他惑星より侵略者らの宇宙船」

 薬指。

 余った小指にて、困ったようこめかみ掻いた。

「これだけ嫌気だらけなとき、僕ような愛の慰めが……」

「いらない」

 シルクハット目深に、落ち込むよな素振り。

 いちいちめんどいなぁ。液晶殴れば、ちっとましかな。

 アカロほうでも数年付き合い、飽きこそないながら苛立ちの多く考えものだった。

 するとハッカクのパッと笑顔なり、

「まあ、そうつんけんしたところ、まいど充電してくれるあたり恋人ではあるでしょう」

「私の機械よわいから便利と思っているくらい」

「それでもよろしい、愛ゆえに」

「まぁなんでもいいや。それよかあの戦艦連なんなの?」

 訊けば、まじめであった。

「戦艦内の情報ぬき取ったけど、好戦的な連中ようだね」

「まあ、なんの装飾なく鈍色なの多いし」

「一万隻ほどで、一隻つき長距離照射砲の八門。船底に重力波放射装置三つ。まぁこの辺り主力かな」

「なんでそのめんどくさく述べる癖、修正しないの」

「わかったよ。つまり下から攻めれば、重力で遠ざけられて、うえへいけば丸焦げ」

「端からそうしてよ」

「あと動力機関こそ危なくって、暴発するとあたり空間ごと消し屑にしてしまう」

「なんでそんな危険なもん使うの?」

「長距離ワープってそんくらいな動力のいると考えているんじゃないかな」

「ともかく穏便に殴ればいいんだね」

 すると、ハッカクただじっくりアカロほう眺めた。

「どしたの?」

「同じ質問で意地わるいかもだけど、なんで戦おうとするの?」

「はぁ?」

「これら戦艦の仇でないし、なんなら腕っぷし売り込めば、仲間に入れるやも」

「好戦的なんでしょ」

「試す価値ありでしょ。なによりもはや殆どの人の君へ敵意か、恐怖か無関心だよ」

「それが?」

「もうこの星や人ため戦うことないんじゃない。みんないないし」

「で?」

「もうひとつ言わせてもらうなら、戦力差からして君の生き残る可能性たら億が一にもないんだよ。奇跡なんて残っていない。ここまでやって訊く」

 なんでそんな馬鹿で無謀を犯すのさ、と。

 この問い対し、アカロすこし空の鈍く落ちてきているさま、見つめてから、

「私の晴天ほう好きだからかな」

「そんな曖昧なことでいいの?」

 うん、と深く頷け、また涙一縷。

「怖くても、楽しくても、悲しくても、嬉しくても、戦っても、逃げても」

 結局は気分なんだよ、私って。とまたてきとうであった。

「こんど僕のほうがめんどくさく述べられてるね」

 まぁ、わかんねぇならいいよ。

 アカロ、流れ星よう涙だった。

「あと、その涙もわからない。ドランカァドのそうした生理現象めいたのしなくていいはずで」

「これも気分」

「どういうこと?」

 ついに鬱陶しくなり、ポケットしまう。

 そして草原ふみしめ、侵略の曇り模様挑みながら、

「うるせぇ、黙って見てろよ」

 そう涙ながら殴るべき天へニッと笑い、拳固めた。

 これの聞いたハッカクなんだか面白く笑って、ポケットでこっそり独り言。

「そうだね、ちゃんと見てればわかるよね。愛しい人」

 黙ったハッカクとこ電子文通のあって、その振動にアカロ気づく。

 歩みながら端末覗く。

『我らなる絶望で包囲され、なお独り戦おうか人よ。その無謀へ敬意とし名ぐらい覚えよう』

 返信打つなんてまどろいなぁ。

 アカロは船団向け、大声張った。

「私の絶望ぐらい、私で決める! テメェの無謀くらい、テメェでひっくり返す!」

 張ったさきあった鉄塊な雲、この声さす威圧からひっくり返り、ほか船と衝突。

 爆ぜて、爆ぜた焔もろとも、なかったよう消えた。

「ほんとう、おっかない動力だこと」

 できた欠陥さき青く澄んで、陽の脚光の入ってアカロに優しく当たった。

 これに綻べ、やっぱいい天気だなぁ。と一抹のんきになった。

 それから歩の再開し、やはり前へ。

「あと名なんぞ何の役立つか知らないけど、言ってやらぁ」

 少女の、ただなんであれ殴りたいもの殴る。

 そんな非合理かつ正直のためだけ向かう。

 それこそ、これこそが、

「私は赤闢久地美、またの名をアカロ。笑い泣き怒るただ人……」

 そして、

「ドランカァドだ!」

                             をしまい 酔魔

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ド乱かァ奴 外レ籤あみだ @hazurekujiamida

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