後編
第四弾 無の星へ輝く
打ち上げ見終わって早朝、アカロだいぶ早起きのすれ、階下でオリンのあった。
カウンターで麺だくさん少しずつ啜っている。
厨房で音予さん黙々これ眺めている。
邪魔かと話しかけづらく、アカロそこで潜んでいた。
ふたりだけ話すべきよな静けさのあったのだ。
灯りのついてなく、擦り硝子から朝の青ざめた光の差し込むからかも知れない。
「美味しいです」
表情ならないもオリンの涼やかな声にて言う。
「あんた、すべて片付きそう?」
音予さん訊く。
オリン、横かけてある刀撫でた。
「えぇ、つぎこそ親玉です。きっと」
「片付けば、どうすんだい」
「さぁ」
「そうかい」
「お名前とここ泊めていただき、ありがとうございました」
「藪から棒だね」
「言いたくなったので。オリンの名ここ最近、気に入てきました」
「そうかい、呼びにくいから略したきりさ」
「名と言ううと地獄鳩ってなんなのでしょう?」
「地獄んなか、平和願う鳩一羽って図おもいついてね」
「どういう意味です?」
「思いつきだから深くない。ただそういう鳩せつじつで本物だろう思ってさ」
年輪深い顔みあげて首傾げたオリンまっさらだった。
アカロの悟られる。
「おはようございます。アカロ」
「おはよう。オリン」
で、ふたりして麺だくさん食ってしまえば、オリンの刀取って、
「さぁ、この星の守りましょう」
にわか引き戸の開けば、寛一に徒怪だった。
「長々ドランカァドし、ようやくらしいことのできそうですなぁ」
「いっさい殴ってやらぁ」
こうして決着ため、ロボットの基地たるところへ出発せる。
手の振る音予さんへ、いってきます。
地獄鳩の暖簾も朝早いながらあがった。
亡きロボットの手紙頼りなぞれ、四人の山奥。
鳥さえずりや鬱蒼へと誤魔化されてあって、分け入れば地下続く階段。
階段下れば、長くうす暗いだけの廊下にまた階下る。
なんら警備なくすっかり入れる不気味に、無暗深い通路だから怪しかった。
あぁ、衿巻さんの推薦あって、流れで来てしまったけど怖いし足手まといだよねぇ。
こうアカロの怪しさへ涙しそうなり、頭振り回して払拭し、まえ三人背の追う。
下りきり、歩みきった。
大きな門のあって開けた。
眩いかぎり明るくなって、広い内部、壁のどこやかし埋め込まれた電子機器発っせる輝きで青みがかった景色。
そのうち真ん中ぽつねん立つ、白胴着の大男あった。
「来たか。ドランカァド」
険しく睥睨され、アカロの怖さ隠しに胸張ってから呟く。
「あれが親玉……」
「私はデルセント、この星に無価値あたえるもの」
「なんら部下もなし、さしずめ漢らしいことで」
徒怪こう挑発だった。
デルセントあくまで厳然と崩れない、
「量なぞ所詮まやかし。世界ひとつの良質よって支配されればよい」
「答えになっていませんね」
そうオリン一歩踏み込む。
踏み込んだ彼女みとめて大男言う。
「一抹の願い(オリカラン)か」
「私の知っているのですね」
「事前情報とぼしい貴様よりは」
「あなた潰すまえ、余興ながら教えていただけませんか」
「なんのだ」
「私であり、あなたであり、ここまでのあらまし」
ほか三人もオリンへ同義な顔つきと見たか、
「懐古こそ人の所作ながらよかろう」
思うより快かった。
「ここより何万光年さき、私ら作った人類の星はあった」
「過去な言い方です」
「もはや滅んでいる。なぜだかわかるだろうか」
「戦争、資源不足、星の寿命、ほかからの侵略」
「表面舐めた考察だ。それら事象の根へある思想みえていない」
「思想?」
「我ら創造主すこぶる寛容であった。あらゆる考え受け入れ、他を尊重した」
「それっていいことじゃあ?」
アカロどうも小声にでてしまい、耳ざとくデルセント睨んでくる。
考えよかさき悲鳴ヒッ。
「では人の娘たずねよう。単なる暴力や、命の略奪、他思想の排除、これすら尊重すべきか?」
「そんなの……ダメでしょ」
「この星の貴様らとて、いまや他者こと尊重せよと習うだろう」
「まぁ……だから?」
「その習った結果から、非道行為ともかく駄目ひとつで切り捨てる」
「いけないことだし」
「つまり自他ともども好んだ考え尊重されたい。しかし意に添わない案なら即座切り捨て、議論もない」
そういうことか? 念押し問われ、口ごもる。
「あまりに愚かかつ傲慢で」
「だって考えるすべて叶うわけでも」
「そう、私たち作った創造主これの実証した。貴様らみたく半端な戯言でなく徹底して」
そして至極あたりまえな結論へ達した。と丸太よな腕かかげ、このさきの拳握った。
「思考多ければ、星ひとつ、いや宇宙まったく使えたとて重たくその巨体すら潰してしまう凶器だと」
デルセントその形相ため、険しく怒ってみえ、虹彩内へ火でもあるよう映る。
「母星の滅んだ、では私たちなぜここへ?」
オリンからだった。
「滅ぶまぎわ、この結論いきついた科学者らの展望ため創られ、この星へ送られた」
「展望?」
「思想の多岐化するなら滅ぶ。となれば逆で一元化すべし」
だが。
とデルセント拳の下げた。
「どの思想なら、星や宇宙統治し長き平和もたらせ得るか、彼らのわからなかった」
「そこである程度まとの絞った多様なロボットら送り、支配した者の量産する」
先読んだオリンに、厳格とうなずく。
「ドランカァドらなり潜め、かの星の人々ようなること予測ついていたのでな」
「また星の組成、環境、多く似ていたといったところですか?」
「あぁ、私たち送った科学者たち、自身命よか宇宙平和へ興味あったようだ」
「さきからわかんねぇこと言ってんじゃねぇよ」
ほんとう理解かなっていなそな寛一の普段どおり怒号する。
「つまるとこ、ぜんぶ腹立つやつ殴り倒せりゃあ終いってわけだ」
アカロ呆れ肩落とす、徒怪のガハハ。
ただデルセント、あぁ、そうだで首肯する。
「ドランカァド、どうも貴様の思想、とても合理的だ」
そう言うくせ、だが甘いともする。
「もっとも合理的かつ平和なことその更にさき極致に待っている!」
それぞ無だ! 巨漢の構えて、戦うつもり。
「うっせぇ、黙って来やがれ!」
言うが早いか駈け出せ、機械の拳、ドランカァドの拳ぶつかる。
部屋いっさい地響け、開戦であった。
初手こそ戦いたりえたものの、トリカンコーレ言ったの真実であった。
デルセントいくらか拳交えれば、あの粒子まで追いやる拳のくりだし始める。
このうえ、寛一くりだす動き学習していよう。次第ドランカァドの力の凌駕せ、そのすべて無帰す拳つぎにも届きそうであった。
防戦ぎみなりゆく寛一へと徒怪たすけ入る。
入ったところ、易くあしらわれて、壁凭れ伸びて苦笑乾いてハハハ。
「虚仮にされたもんですな」
アカロどうしたものだかわからず立ち尽くし、怖がっていた。
すると隣いたオリンの、電鎖刀ひきぬけ、まえへ出る。
半端ながら、いまなお素晴らしい切れ味かがやいている。
「オリン?」
「アカロ、いままでありがとうございました」
片手、どうもアヤカから拝借していたらしい電池の握られてあった。
ロボットの少女くせ、指ですこし片頬あげ人つもり笑っているよう見せる。
それから少し小首傾げ、鈴の声で、
「別れはきっと、こういう表情ですよね?」
柄頭とこ電池押し込む。
白い稲光のし、オリンへ羽衣よう纏った。
ちょっと待ってダメ! アカロのことば出ず、届かぬ手のみ伸びた。
「オリン、参ります」
このときデルセント猫の持ち上げるよう寛一の首根っこ捕まえていた。
いまにもういっぽう腕のさき作った拳の放たれよう。
放った。
ただ拳到達せるより、白く蛇行ぎみな電光なったオリンほう早い。
懐へ一太刀あびせかかれ、間一髪。
ながらデルセントせっかく捕らえた猫放す代わり、斬撃の白さ鼻さき掠めるだけとどめた。
逃れた寛一はオリン見たのち、チッ。
「ビリつきやがって、あんまみたくねぇ色だ」
「申し訳ありません。寛一」
オリン、ちょっと満足げな音色であやまる。
またチッとしたばかり、寛一まえで仁王立ちせる巨漢へ睨み移す。
されど皺深い眉間のオリンへと向く。
「電鎖刀。アンダルサベル専用の補助具か」
「そういえばあなた、彼女へ約束のあったのでしょう」
「約束? はてね。端から無で無まで帰った者のこと、しょせん戯言だろ。忘れた」
白く電気走る、短くも芯ある切っさき、卑劣漢まで定める。
「使命よか、いまや私怨とやらであなたの斬りたく思います」
こう定められ、怯みない。
「貴様のどうなれドランカァドに導き与えるが役」
なにより……と、デルセントの瞳孔、オリンさせる四肢みつめる。
見つめられる箇所、どうやら悉く震え、据えた切先とて鈍り始める。
「その程度な性能で、電鎖刀させる高電圧しのげると?」
羽衣の白蛇と化せ、オリン巻きつけ傷めていく。
ついにままならなくなって、オリン膝折れた。
折れたすぐ、デルセントにて蹴りされ横なぎ。
人形みたく転がり跳ねて、泣く少女近く。
いっそう泣いて泣いてアカロ駆け寄れ、体へ電撃走るとも抱きあげる。
「また会いましたね」
無表情ながら、きっと微笑みたいんだろうまとも動かなくなった手の持ちあがって落ちる。
「今生の別れでなくよかったです」
「オリン、馬鹿いってんじゃないよ!」
「麺だくさん美味しかったですね」
ぽつり。
ぽたり。
アカロ降らせる涙雨のロボット目尻あたって滴って、まるで彼女まで泣くよう。
「そう音予さんへ伝えてください」
「自分で言いなよ!」
「私の作り送った研究者の、きっと人との繋がり、絆っての信じたんだと」
鈴よな声へざらついた障害の挟まる。
なお続ける。
「信じたんだと思います。だから私にあまり情報託さなかった」
だから、と綺麗かつ繊細なる声から、
「人類の守れと託したのでしょう……」
ロボット少女あいらしく小首傾げた。
「そしてアカロ、私は友人であり、あなたの幸福を祈る
うわぁああああああああああああ!
アカロ部屋めいっぱい響く悲しみを吠えた。
「煩わしい声だ」
遠目、デルセントそう一言。
そこへ寛一の拳。
簡単に手で受け止められてしまう。
目玉かっぴらけ凄まじい寛一だった。
「そちらから飛び込んでくる好都合」
「ほんとうお前だまれよ」
怒気含み、低い唸りする獣、拳固められ、命吹き飛びそうながら敵の睨んで捉え離さない。
「貴様こそまず黙れ」
寛一まで終わり迫った。
ふたたび無の拳ふるわれる。
が、殴って壁めり込む一撃くらったの、デルセントほうだった。
それも寛一からのでない。
「みなさま知っていますかな。赤ん坊のなんで泣くか」
このとき、なんの興だろ、壁もたれている徒怪べしゃりだす。
「あれってのは我儘なんですな」
嵌った壁抜けデルセント、何事だ?
徒怪つづける。
「自分であと始末できんくせしょんべんし、自業自得に気持ち悪くなってなんとかしろ」
なんと傲慢と評価し、
「飯も自力で口もと運べんくせ、腹減った。ものもろくすぽ言えないくせ、察してほしい」
極めつけと続け、
「なぜ泣くの? なんとなくさ、なんてしゃべりだしましょうな」
殴ったの、いま寛一が隣りあった。
双眸からすぅう涙垂らし、しかして無表情、拳突きだしていた。
「つまりは、赤ん坊ってのは物も知らんくせ我儘、ドランカァドへもっとも近い」
もしもと、徒怪より結論される。
「高校生にもなって泣き虫どうしようもない奴のいたら、そりゃ立派な……」
元女子高生、拳下げる。
「ドランカァドの素質ですな」
たったいまよりドランカァド、赤闢久地美、また別名をアカロであった。
少女、流すまま涙の拭きゃあしない。
鋭敏なった耳に、徒怪言ってくる。
「連れてきて正解ですな。あの金剛石ああまで見惚れた」
途切れながらもオリン声、
「ねぇ、アカロ……類は友を呼ぶって、素晴らしいですね」
鈴の優しさで聞こえた。
それからもう、ロボット少女のうんともすんとも言わなくなった。
するとドランカァドふたり目交ぜ、
「どうなったところ泣き虫のなおりゃしねぇ」
一方こう悪態だった。
もう一方咽び微塵もない淡白さで、
「ここまであんまり、悲しすぎて、嬉しすぎて、悔しすぎて、幸せすぎて……」
と、仇敵デルセント顧み、
「もう馬鹿んなちまったね」
そう寛一とふたりしてねめつけた。
ねめつけられ、眉間ある縦皺わずか緩む。
で、正体なく叫ぶ。
「若いドランカァドふたりだと!」
叫び終われば、恐れにぶつくさしだし、
「情報の足りん。戦闘学習しきるまえ、潰れてしまうか? ならば無への計画も……」
「無駄口うっせぇよ」
寛一の言い、
「さっさと黙って」
アカロ続け、ふたり隣り合って拳かまえる。
「「殴らせやがれぇ」」
やけっぱち、デルセントの牛なりに突進しかける。
アカロ受け止め、固定する。
避けた寛一よって牛の脇腹へ拳はいる。
怯むところすかさずアカロ、仇の鼻っぱしら膝蹴る。
遠く、この光景眺める徒怪は腹抱え笑う。
「ドランカァドの性からしてとても共闘なぞできやしません」
ハハッと漏れるも堪え直し、
「ですので、ただお互い各々殴りたいよう殴っているだけ」
けどどうしてだか気の合うんですな。とガハハ堪え性ない。
また遠く、オリンの亡骸たら刀失くし、代わり臍の前で手の組む。
それで瞑目しいい夢の祈る眠り姫よう健やか。
さぁ一方的なる打撃嵐も締めくくり。
打撲に凹みまみれ、戦意なく膝から崩れるデルセント。
これ対せ、アカロ腰まわりに隠していた刀抜く。
それぞもはや脇差しまで削れ切った業物、電鎖刀、愛漆丸。
素早く真一文字に振るって仇の胸抉れば、あいて倒れた。
「そこ在ろう無とやらへよろしく」
言うに涙の蛇口締めきったようピッタリ失せた。
にわか部屋いっさい震えだす。
ふらり起立できた徒怪だったのに、また尻もちだった。
「いやはや困った地震ですな」
この地震なか、突っ伏した仇の口開け放ち高笑い。
「いままさしくこの星の無が始まった! この地震そのお告げ」
「テメェなにいってやがる?」
寛一、アカロの見下す睨みに、デルセントこうなると怖くないよう。
「かねてよりこの星地下である装置の作っていたのだ。あと三十秒すれば起動だ」
「台詞ハシバシ嫌な感じの響きだなぁ」
言うなり涙ゆるやかもまた堰切る。
「名づけて、惑星核暴発レーザー装置だ」
「ねぇ、簡単に言ってくれる?」
ドランカァドふたり、脅しに軽く巨体踏みつける。
「惑星のいわば心臓揺らし破裂させ、その星の木っ端みじん」
どうだろう貴様らとてわかったか、と白状だった。
「私この起動見とどけ宇宙船よって去るつもりだったも、もはやこのまま無になるもいい」
「装置のどこ潜んでいるの?」
「教えると?」
脅す足払いのけ、よろけてでも立って大手広げた。
「いっさい無こそ世界統べるふさわしいのだ。宇宙があり、銀河があり、星があり、人がある! この事実全く邪魔! あまねくよ、無いう神へ帰結せよ!」
さあ、残り三秒。デルセントよる狂気ながら確かなる秒読みだった。
さぁん。
にぃい。
いぃち。
「ぜえぇええええええろぉおおおお!」
しかし、秒読みの妄言と潰え、世界あいかわらずあった。
デルセントわけなく首振りあちこち見やって、しまいに、
「無がない」
と膝つき、両手までつけ項垂れた。
「ゼロのさきで虚数の待って虚しいかい、なんつって」
と聞き覚えある声し、アカロのしかめっ面だった。
で、げんなり、声の発生源らしいスカートポケットから貰った端末とりだした。
液晶なか嫌に洒落た黒シルクハットしたドットな青年のあった。
「やぁ、僕愛しのアカロちゃん、あの時の約束とし、僕ことハットカック、君へ贈ろ……」
電源のパッと落とし、画面まっ黒い。
怖い夢、きっとウイルスだよね。
やはり無表情ながらアカロもう涙だらだら。
すると勝手、電源のつき、またウイルスの陽気から挨拶してくる。
「会えた感動から涙、それ照れ隠しため暗転。やはりあいかわらず人だねぇ」
「あなた、消えたんじゃなかったの?」
これから唾でも吐きつけそな侮蔑に画面見つめアカロ問う。
「僕の脳神経回路の予備作っておいて、何かあった際ネットワーク上で再構築できるよう……」
「簡単に言える? 頭痛い」
「君ふさわしい男なるため、君助くため、僕あらたなる存在となった。わかるかな?」
「わかりたくなくなった」
「つまり愛だよ」
画面いっぱい愛の一字積もり、悪寒だった。
「ハックカック、貴様ぁ!」
デルセント恨み節し。
愛の字体消えて電脳体ハッカク、陽気さ一転ひどくつまらなくする。
「なにかね。元上司さん」
「装置の止めたな」
「だから僕のだつったでしょう? まぁ僕のでなくも、ハッキングできたさ」
僕その手かけちゃあどのロボにも負けんね。そう自信家だった。
「いますぐ再開しろ!」
やあなこった、ドット姿あっかんべ。
「僕、無とかどうでもよろしい。だいたい殴られた奴からいわれてもさぁ」
「なんでもしよう! 無のためだ!」
「んじゃあ、体勢いいし、そのまんま土下座してよ」
デルセントの即時、頭床付けた。
「頼む」
もっともハッカクみていない。
「ロボットらしいねぇ。命令、機能へひたむき。判定ドランカァド任せよう、まぁ見なくたってわかるよ」
土下座で情けなく小さくまとまったデルセントの丸っこい背に寛一の足乗っかる。
ついでアカロも乗せ、脅しでない。
「君、泣けてもないし、血も出ない。そんなことよりなにより……」
心がない。
と愛知る電脳言い、
「ゆえ、その行い、ただただ
と評した。
ドランカァドふたりしてその背の踏み抜け、
「テメェ殴るにも値しねぇ」
寛一ひとこと。
アカロかえりみず、ただ友人へ泣きながら手の合わせた。
「オリン、私やったよ。祈りも届いた。だから安心してね」
綺麗な音の返事もうしなかった。
「これにて終結しみじみみたいな様子へ水差して悪いけど、まだ虎の子の潜んでいる」
ハッカクの端末から稀なまじめ調だった。
地震のした。
それもさきの比でない。
壁満載ついている電子機器ら漏電ビリバチ光って消える。
「まさか装置動かしたの?」
端末へとアカロ問いただす。
「ちょっと早いなぁ。もう百年あると思ったけど。星の豊かすぎたね」
画面なか暗い沈んだ背景なか、ドットなハッカクざんねんげ帽子まぶか。
「こいつ関して管轄外さ。なんせこの星おける検証での本筋だから」
「はぁ?」
地鳴りから部屋の崩れ出す、床の持ちあがる。
なんかせり上がってきてる?
思い巡らす暇なく、真っ暗闇へ埋まった。
アカロの瓦礫山を馬鹿力ふっ飛ばせ、埋まった底より抜け出る。
地震よる隆起、陥没から地上ことごとく平らなっていた。
ただ一本さっき競り上がってきた正体らしい柱だけ曇天貫かんばかし聳えた。
「なにこののっぺりした白い高層ビルみたいなの」
疑問答えるべく、ポケットなかより端末しゃべる。
「正真正銘、最後のロボットにして人が本質のひとつ、アンドロアさ」
「意味わかんない」
ここで寛一に、なんとか徒怪も地中より抜け出せ、柱の拝む。
「こりゃけったいなもんで」
「こいつの本質たらこっからさ」
すると柱ほうより、白い人影のひとつあった。
これまた柱に同じのっぺりしてあって、目鼻立ちもなく明らかな奇怪。
のっぺらぼう、三人まえ来るなり、凛々しくも冷徹な声に言う。
「期の熟し、時満ちた。我らこの世界ひとつ統治もたらすもの」
「景気わりぃ難しいこと言ってんじゃねぇ」
テメェ、殴られろ。寛一だれより率先し、白塗りロボット倒しかかる。
「やめた方がいい!」
ハッカクあせっていい、時すで遅かった。
殴りかかる寛一の足もとからもう二体、のっぺらぼう。
そして三人がかり、ドランカァドの少年を殴りつける。
へぇ?
アカロ、なんの起こったか白昼夢よう。
ただ、なにか頬に力なくあたって、足さき落ちた。
身体よりはぐれてしまった肩から手までの左腕だった。
ほか身体どうやら三つの拳受け、塵も残らなかった。
徒怪、遅まき笑いだし、ちっとも誤魔化し切れてなく、もはや哭いていた。
泣き虫な少女ながら、今回ばかし涙ない。
さらに絶望重なれ、柱より白いロボットら白波よう大群に迫ってくる。
しかし泣けない。
なんとなく落ちていた腕拾い上げ放心ぼぉう見つめた。
寛一……。
腕からあの青年生えてくると淡く思う。
いつまでも腕だけであった。
端末から何度めだろ逃げようと言われる。
耳から耳抜けて、迫る白の軍団とて、はっきり映るもテレビなかの別ごとだった。
あげく笑い納めた徒怪へ抱えられ、その場あととする。
腰まわり隠し直した刀の重く感じた。
また持っている左腕だらしなさから倦怠になった。
雨は追い打ちかけ、どさどさ大粒冷たい。
涙みたい。
他愛なくそう思った。
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