10 時間外の食堂にて 01
お兄様に私が並び、その少し後をコニーがついて歩いて食堂に来ます。食堂では全生徒が食事を取れるように広い部屋が三つあります。始業前でまだ学院内の人数が少ないので、昨日と今日は一部屋しか開放されていなかったのですけどね。
「うわー……広くて立派な食堂ですねぇ……」
「貴族の子女が利用する食堂だから、簡素にするわけにもいかないのだろうね」
「私としてはここまで飾り立てなくてもいいと思うのですけどね」
この学院に通う人は大半が貴族の子女ですから食堂も立派です。平民のコニーは気圧されているようですね。通路や寮の部屋はそこまで飾り立てられてはいないのですが、食事の場くらいはということでしょう。
平民には、貴族と同じ空間で食事するのは落ち着かないと最初のうちは自室に持ち出して食べる人もいるそうです。そんな人も多くはそのうち慣れるそうですが。
事前に申請しておけば、持ち出し用の箱に入れて料理を持たせてくれて好きな場所で食べられるそうです。無理を言えば事前申請無しでも持たせてくれるそうですが、お兄様は貴族として特権を振りかざすようなことは感心しないと言っていました。私も同感です。
食堂ではグループで会話をしたり勉強をしたりしている人たちがいますね。その人たちのテーブルにはティーポットとカップが置かれています。食堂に行けば時間外でもお茶やお茶菓子を出してもらえるそうなんです。
その中の一人がこちらの方を見て立ち上がりました。他の人たちもお兄様に向かって
「オリヴァーさん。こんにちは」
「ああ。こんにちは、トビー。君は今日戻ったのか」
「はい。そちらの子たちは?」
「こちらは私の妹のエマと新入生のコニーだ」
そうして自己紹介をします。この男の人はトビー・コノリー先輩。お兄様の同級生だそうです。トビー先輩と呼んでくれていいと言ってくれました。この人も私服ですが質素で、平民出身なのでしょう。人の良さそうな人ですね。
「ところで
「ああ、どうせだからこの場で話しておこうか」
人道派と貴族派?
聞いた覚えのない単語です。お兄様が説明してくれるようですが。
「このザカライア学院の生徒たちは、おおまかに人道派と貴族派という派閥に分かれているんだ」
学院特有の派閥ですか。それは私が知らなかったのも不思議ではありません。
「人道派は、
「オリヴァーさんはその人道派の中心人物なんです。僕たちもオリヴァーさんたちにはお世話になっていて」
「級友として当然のことをしているだけだよ。人道派にもいろいろな考えの人がいるけどね」
トビー先輩の言葉と態度にはお兄様に対する敬意が見え隠れしていますね。お兄様は立派な方ですから。私も妹として誇らしいです。
「それで平民出身の人たちは基本的にこちらの人道派に所属することになる。コニーも考えておく方がいいよ」
「は、はい。オリヴァー先輩がいるなら、私もその人道派に所属したいです」
「それは貴族派のことも聞いてから考えてくれ」
「は、はい」
人道派の説明を聞いて、貴族派についても察しはつきますけどね。ですがお兄様は公正な人です。説明も聞かせずに私とコニーを自分の所属する派閥に所属させる気はないのでしょう。
コニーはお兄様について行きたそうな様子ですけどね。トビー先輩たちも当然そうするべきだという様子ですし。トビー先輩たちもコニーの服からこの子が平民だとわかっているでしょう。
「そして貴族派は、王家や貴族が民を統治し、民は黙って支配されればいいと考える人たちだ。彼らは基本的に平民を見下している。当然と言うべきか、学院では貴族派の方が主流だね」
この学院に入学するのは大半が貴族なのですから、貴族派が主流なのは当然でしょう。むしろ貴族にも人道派の人がいることの方が驚くべきなのかもしれません。
「貴族派にもいろんな考え方の人がいて、貴族は民の
「……」
「だけど民を奴隷同然にしか思っていない人たちもいるのは残念ながら事実だ」
お兄様の様子からすると、民を奴隷同然にしか思っていない人は決して少なくはないのでしょう。高潔な人たちもいるようですが……
「正直に言うと、学院の生徒が二つの派閥に分かれているのは愚かしいことだとは思う。だけど平民たちの権利を
「はい。そのお兄様の考えは私にもわかります」
「それで私たちは人道派を名乗り、平民たちが酷い扱いをされないように気を配っているんだ。人道派と貴族派は学院創設当時からあるらしいけどね」
やっぱりお兄様は素晴らしい人です。コニーもお兄様を見る目にますます熱が
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