01-3 『焼滅』のエマ 03
防がれたなら、次です。コニーから言ったので、次も私の順番です。
「では、次です」
私は先程と同じように優雅に右腕を掲げます。魔法の前兆を見たコニーの表情が引きつりました。
「あの……エマさん。今度は火球を十個放とうとしているように見えるのですが……」
「はい。五個ではあなた相手では全く不足のようですから」
コニーは涙目になっています。この子はもっと自信を持っていいと思うのですが。
「コニー。あなたはもっと自信を持っていいですよ。先程の感触では、火球十個程度なら余裕で防ぎきられる感触がありました」
「……はい!」
「あの……それも防ぎきったら、次はどうなるのでしょうか?」
私はにっこり笑って答えます。
「頑張れば、二十個はいけます。それが防がれたら、負けを認めるしかありませんね」
「……」
コニーが固まってしまいました。どうしたものかと、私も準備していた攻撃魔法を使うわけにもいかず、止まってしまいます。
次の瞬間、コニーが絶叫しました。
「無理――――――! 無理無理無理――――――! 死んじゃいます――――――!」
どうしたものでしょう。コニーは恥も外聞もなく泣きわめいています。とりあえず腕は下ろして魔法の準備も解除します。
「は……はっはっは……僕はワイズさんに手加減をしてもらって、命拾いしたようだね……」
「エマさん……ちょっと怖いです……」
観戦している皆さんも私に対してドン引きしているようですし……
「エマの異名を思いついたよ。『
「はっ。彼女にふさわしい異名かと」
クリフさんは強調するようによく通る声で言っています……
ひどいです……
それでは私が怖がられてしまうのではないでしょうか……
ですがへたり込んで泣いているコニーをそのままにしておくこともできません。飛行魔法で
「すいません。コニー。あなたを怖がらせてしまいました」
「エマさん……」
「今回の試合はこれで終わりにしましょう」
「はい……私の負けです……」
コニーはまだ涙目で、顔も涙で濡れています。その顔をハンカチでふいてあげます。まるで幼い子供をあやしているようですね。
そこにアボット先生が声をかけてきました。
「あー、ワイズさん。君は授業中の試合で本気を出すのは禁止です」
「……え?」
その先生の言葉の意味がわかりませんでした。
「ファイア・ボール十個分くらいなら、君の魔力で放たれても私の無効化結界はなんとか耐えられると思いますが、二十個だと間違いなく結界が吹き飛びます」
「……お母様の無効化結界は、二十個でも全く揺るがなかったのですが」
「ワイズ伯爵夫人と比べないでください。君が本気で攻撃魔法を使うなら、教師級二人以上の魔法使いが無効化結界を張るか、それともオリヴァー君に張ってもらいなさい」
「……はい」
もしかして、私の常識は
観戦していた級友たちと騎士科の人たちは、この会話にさらにドン引きしているようです……
「ですが、穏やかな性格のミス・ワイズには、『
「まあね。でもエマを周囲の
「はっ。殿下のご
クリフさんは楽しそうに見ながら、なにか小声で話しているようですが……
― ??? ―
少女が
これは少し未来の話にございます。
私にとっては時を進めるのも戻すことも
未来と過去を見ることなどそれこそ
もちろん人の運命などどうとでも変わります
さあ、次よりは少女が学院に入学する前の話にございます。
この世界でも少女は家族に恵まれ、優しい性格に育ったようでございますね。
人などいくらでも変わるものであります
私としてもこの少女は面白そうな観察対象でございますね。
私には少女の行き着く先も見えておりますが、本当にそうなるとも限りませぬ。
揺れ動く未来を見るのも楽しいもの。
さてさて、期待に応えてもらいたいものでございます。
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