02 転生少女は大賢者を目指す 01
― ??? ―
神々に祝福された世界、フレエネート。
それが少女が転生した先の世界にございます。
この世界には人の上位存在としての神々がございます。
人が神々の力を借りて行使する神聖魔法も存在するのでございますね。
神々はかつて二つの陣営に分かれて戦い、現在は世界に直接干渉するのは控えております。
なにしろ神々の力は強大。
人の営みという
神々は人を絶やさぬように、直接干渉するのをやめたのでございます。
その程度、争う前からわかりきっていたことであり、愚かしい話にございますが。
私はそんな愚かしいことに関わりはせず、ただ観察していたのみでございます。
この世界には魔法もございます。
少女の前世の世界では空想の産物だった魔法が。
少女は魔法の才に恵まれてこの世界に生まれたようで、努力の
この世界には知的種族として人間以外にも多くの種族がございます。
人間たちが所属する人類勢力と対立する種族の総称としての魔族も。
私からすれば、どちらも人でしかないのでございますが。
延々と争い続けているのも愚かしいことにございますが、当事者たちからすれば己らの生存をかけた戦いなのでございましょう。
この世界において人間種族は絶対的な存在ではございません。
有力な種族の一つという程度でしかございません。
人間は種族としての結束力も強くはなく、人間同士で争うこともよくあるのは、愚かな種族にございますね。
少女の前世の世界において人間という種が絶対的な存在だったことは、少女は本や番組での知識でしか知らなかったので実感はないようでございますが。
さあ、物語の始まりでございます。
どうぞご覧あれ。
― エマ・ワイズ ―
前世の世界では何もなすことなく死んでしまった私のこの世界での名前はエマ・ワイズです。顔立ちは整っている方だとは思っていますが、私は自分の容姿にはそこまでこだわってはいません。
アーヴィン王国に所属する貴族の一員にして知の名家、ワイズ伯爵家の娘として私がこの世界に生まれて15年ほどがたちました。前世では一人ではなにもできないまま15年ほどで死んでしまったので、愛されて健康に生きて来られただけでも今世での私は幸せだと感じています。
「エマ。食事中に考え事はおよしなさい」
「はい。申し訳ありません。お母様」
私を叱ったのは、この世界におけるお母様オーレリア・ワイズ。魔法使いとしても賢者としても優秀で、私も尊敬しています。時々私を叱りますが、それも私を愛してくれているからこそということは私も理解しています。
華麗な装飾が上品に配置された食堂で家族と共に食事中なのです。給仕の召使いたちも控えています。そんな時に考え事をしていれば叱られて当然です。そうするべきではない場面でもついつい考え事をしてしまうのは私の悪い癖です。お母様や教育係たちにもしばしば
「オーレリア。
「あなたはエマに甘すぎます」
この世界におけるお父様オーガスト・ワイズ。ワイズ伯爵家当主で、アーヴィン王国でも有数の賢者として知られているそうです。ただお父様は私を
「まあまあ、母上。エマは大賢者を目指しているのです。常に
「オリヴァー。あなたもエマに負けない
「もちろん私も知の
「それはそうなのですが……」
「大賢者を目指すのはエマに任せます。私は伯爵家の次期当主としての責任を果たしながらエマの手助けをしますよ」
「オーレリア。君の負けだよ。オリヴァーも私たちの自慢の息子だ」
「……オリヴァーについては認めます。ですがあなたもオリヴァーもエマに甘すぎます」
この世界におけるお兄様オリヴァー・ワイズ。顔立ちも整っていて頭が良く性格も良いと、女の人に人気がありそうです。お兄様はいずれお父様の後を継ぎ、ワイズ伯爵家の当主に就くのでしょう。お兄様も魔法使いとしても賢者としても大成できるだろうと将来を
お兄様も私のことを温かく見守ってくれています。そのお兄様が私も大好きです。兄妹ではなかったら恋をしていたかもしれないと思うほどに。
私は幸せ者なのでしょう。前世でも、あの世界の家族たちは私を愛してくれました。今世でも、この世界での家族たちは私を愛してくれています。ただ前世と違うのは、今の私は家族たちのために何かをできることです。
そして私が今世の家族たちに貢献する方法として考えたことが大賢者を目指すことです。大賢者は歴史あるアーヴィン王国でもほんの数人しか例がなく、ワイズ家でも初代ともう一人しかいない伝説的な存在です。ワイズ家の初代、大賢者ザカライア・ワイズの再来となること。それが私の夢です。
「だが……大賢者ザカライアは正々堂々としたことにこだわる方ではなかったようだ。あるいはオリヴァーこそが大賢者に近いのかもしれんな」
「……ご冗談を」
大賢者ザカライアは伝説では高潔で
私には私的な
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