第2話
「明後日さ、集合より早く来れない?頼みたいことがあるんだ。」
これは…そういうヤツか?遂に俺にもモテ期が来た…
「私を遠野くんと、ヒロインとして結ばせる橋渡しをして欲しいの!」
わけがなかった。
当日の朝、頼み事の内容を聞いて、分かってはいたがちょっとガッカリした。いや、そんな訳が無かったんだけど…
「本人に言うわけにはいかないし、割と口が硬そうというか…口数が少なそうな黒谷くんにお願いしたいの」
ここぞとばかりにディスりおって。
「そっか…。でもそれなら俺の力なんか借りずとも勝手にくっつけばいいじゃねえか」
「それがね、先生の考えてるシナリオだと、私たちがくっつくには悪役の協力がいるの。」
「日芽はシナリオ知ってるのか。流石学級委員だな。それで、先生のシナリオのジャンルは…」
「異世界玉の輿モノ恋愛マンガだよ」
「あっ!?」
「先生!?いつからそこに…!」
俺の質問に答えたのは、どこからともなく現れた道野先生だった。
「初めからかな。君らが来た時から。」
「「声かけてよ!」」
俺と日芽は抗議する。
それを涼しい顔で受け流して、道野先生は手を叩いた。
「さて、もうみんな来てるよ。準備もできてる。あと決まってないのがちょうどヒロインとヴィラン1人ずつだったから、決まりだね。」
***
日芽の役は「フィーア姫」。一国の王子に惚れた町娘で、最後にお姫様として王子と結ばれる役らしい。その王子…「キルフ王子」ってのが遠野ってワケだ。
そして俺の役は「ベルナール」。2人の恋路を邪魔するが逆効果となり、最後に処刑される悪魔の役だ。
帰還システムで、死ぬかエンドロールになれば帰って来れるらしい。
そして、先生は「管制室」で俺ら演者に指示を出すとのこと。
他の生徒もそれぞれ役を貰い、『メリー』のゲート…変な機械のくっついた組立式のアーチ前に立っていた。
「それじゃあ、準備はいいかい?」
「「「はい!」」」
「エンドロールまでは出られないけど、戻ってこれば時間はほぼ経ってないから、安心してね。」
遠野のお父さんだ。先生と一緒に管制室に入るらしい。
「大長編の予定だ、みんな気合い入れてね。
それじゃみんな、行くよ!」
俺たちはゲートに飛び込んだ。
***
「これが俺のアバターか…」
金髪で黒い服、帽子に隠されたツノ…随分怪しい見た目だが、もとは信頼されてる貴族だから、初めのうちはにこやかに振る舞えばいいらしい。
どこからともなくファンファーレが聞こえる。さしずめキルフ王子の御成…オープニングか。
「さて、じゃあ俺も宮殿へ行くか。」
***
エラーが発生しました。
エラーコード486:帰還システム不能
緊急メンテナンス開始
死亡回避システム起動
物語補完の準備が完了しました
メッセージ
物語の続行が可能です。
脱出が可能になり次第通告します。
脱出のために、物語を1度完結させてください。
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