第54話 IZPガス
とある物質…
それはこれまでこの世に存在していなかったあるいは発見されていなかった気体状の物質。
その物質は空気混ざり込んでいる。
異能を使う人間には害を示さない。
普通の人間が一定の量を急激に吸い込むと害を示す。
害とは、ゾンビ化現象のこと。
おそらくそれがこの世にもたらした害。
他の物質を退ける性質のあるほぼ最強の気体。
とある物質はいつまでもこの世に存在し続けるのか?
それとも、
このまま消滅していくのか?
それは現状はわからない。
だが、俺は存在し続けると確信している。
なぜなら、何をしても他の物質へと、状態へと変わらなく、少しずつ増えていっているからだ。
それはいつかこの世界全体の空気を締めてしまうなのだろうか?
いや、俺には関係のないことだな。
俺はそれをISPガス(Infinite zombie phenomenon)と呼ぶことにした。
-
インフィニティブレイク…
時短したいから、インフィイクにしよう。
今、考えるべきではなさそうなことに思考を働かせたが、言いにくかったからしょうがない。
今まで動かずにH&K MP7を連射していた鴨島がいきなり距離を詰めてきた。
こっちが負傷し、洗脳された銃弾がIZPガスを貫通するということが明確になったから対人線か。
切羽詰まった戦いになりそうだな。
IZPガスを圧縮させ、銃弾を取り出す。
それはカランッという音と共に落ちる。
俺は鴨島を待つことなく、仕掛けに行く。
鴨島はインフィイクのリターンが終わる前に俺を仕留めることが前提で動いてくる可能性が高い。
となると、こいつが起こす行動は…
鴨島と俺の距離は1mを満たなくなる。
先に行動したのは鴨島だった。
鴨島は違和感なく左腕を身体で隠し、右腕の拳を前に突き出した。
俺は鴨島の右腕を抑えられる位置に手を動かしたが、
"間に合わない"
俺は一瞬でIZPガスを前方に集中させ、一気に反発させる。
その勢いで俺は一気に進行方向と逆へとかわす。
鴨島の拳はIZPガスが反発する前に突き通っていた。
自身の身体まで洗脳できるということか。
そして、鴨島の身体の後ろから包丁らしきものが一瞬見えた。
刃先の幅が刃よりも長かった。
形状的にチョッパーあたりか。
拳を振り切った鴨島は地面を思いっきり踏み、容赦なく突っ込んでくる。
今度は左腕に持ったものを隠すことなく、両腕を全開にした。
「よくかわしたな。大抵のやつなら、これで仕留め切れている」
体勢がぶれることなく距離が縮めて来ている。
左手に隠し持っていた武器はチョッパーか。
さっきは、隠し札があるのがわかった。
だが、今回は全くわからない。
このままでは、俺が鴨島に葬られる。
何か打開策を………
そのとき、俺の中の何かが目覚めた。
ふ、ははは。そこが楽しいじゃないのか?
殺し合いとは、ピンチのときこそ、醍醐味だ。
まず、やつの体勢を崩す方法なんてない。
なら、崩すまでもないということだ。
乗ってやろうじゃないか!
俺は赤い液体を地面に垂らしながら、地面を踏み込む。
そのとき、鴨島は一瞬、ニヤけた。
受け身に回る必要はない。
だが、力任せでもダメだ。
0.7秒、それは俺と鴨島が衝突するまでの時間。
どんなにガタイが良く、力が強くても関節を壊せば、何もできなくなる。
俺は正面衝突をするが、力には任せない。
任せるのは自分の判断だけだ。
突く場所は、骨と骨のつなぎ目!
俺は神経を尖らせ、手のひらを閉じ、ナイフのように突き刺す準備をする。
0.2秒、お互いの拳と刺しが食い違うとき。
俺は右足で踏み込み、左足を軸として、右手を鴨島の右肩の関節、骨と骨の繋ぎ目に向かい刺す。
左腰部の負傷で0.07秒出遅れ、それは鴨島と少し遅れたタイミングになってしまう。
0秒、鴨島の右手の拳が俺の顔に、俺の右手の手のひらが鴨島の右肩を貫通した。
俺の右腕は血に染まった。
顔にめり込んだ右手の拳は簡単に俺の勢いに負けると弾け、俺は軽い脳震盪を起こした。
俺に弾かれた右腕が地面に落ちると、鴨島は残った左腕で、右肩を抑え叫ぶことなく、俺にチョッパーを振りかざしに来た。
チョッパーと背中の距離は2mもない。
それで受け止めることも不可能。
赤い液体が更に垂れ流れる。
インターバルは残り8.4秒といったところ。
安全にイフィイクはまだ使えない。
だが、無事にかわせる保証もない。
考えろ。何が適策だ?
俺の脳内で脳汁が溢れ続ける。
俺の脳内の記憶を徹底的に探り続ける。
"心臓"
俺の結論はその言葉が出てきた。
インフィイクを安全に使うためにはインターバルを過ごさなければならない。
逆に安全に使わなければ、インターバルを待たなくても撃てる、ということ。
だが、インフィイクは高熱に耐えきれなくなり、発射後、爆発する。
で、鴨島はインターバルがあるから、接近してきている。
なら、そこを有効活用する。
まず、なぜ野田の心臓が綺麗に繰り出されたときに心臓は動いていたのか。
それはIZPガスが心臓を完全に包囲していたため、胴体と離れた後も動いていた。
インフィイクが爆発する原理は瞬間的に高熱が乗じ、大きな圧力により、部品が耐えきれなくなる。
一般的な爆発の原理と変わらない。
なら、IZPガスを全身に纏えば、大きな圧力はかかり続けるものの爆発するタイミングを調整することができるかもしれない。
IZPガスがそれにいつまで耐えられるのかまずそれ自体ができるのかは不明だが、やってみるしかない。
俺は鴨島の異能 洗脳に気を配ることなく、インフィイクの銃口が左脇から飛び出るようにセットする。
す
そして、現在の距離は30cmも満たないところで、IZPガスがインフィイクを纏う。
俺は2度目のインフィイクの引金を引く。
左脇からレーザー光線を放たれる。
できれば、正面を向きたがったが、そんな余裕は言ってられない。
急激的に高熱がインフィイク内に圧力としてかかる。
IZPガスを纏ったインフィイクは何の振動もなく、静止し続ける。
レーザー光線が止むと、俺は周りに細心の注意を払いながら、後ろを振り返るが、鴨島らしき物や残骸は見当たらない。
仕留め切れたか?
そんなはずがない…と確信しながら、気を貼り続けた。
どこだ?どこにいる?
発射中、俺は後方を確認していない、いやできなかった。
かわされたのか?それとも、そもそも当たってなどいない?
なんだ?意識が…
思考を巡り張らせていると、俺の意識がだんだんと現実世界から離れていった。
すると、いきなり誰かが俺の目の前を高速で通り過ぎる。
「もらい!!」
そのとき、俺は一瞬にして、現実世界へと戻ってくる。
杉本!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます