第53話 "洗脳"
5月21日13:00 食堂 2階
「我々は停戦協定を結びにきた」
中井?何を言っている?
俺はおまえにあのとき、こいつらをぶちかますために協力してくれと言われたから…じぃちゃんから中井 健斗という青年に従いなさい、と………
それでも、じぃちゃんの占いは本物だ………
こいつらを野放しにしてはいけない………
俺は一歩、前に踏み出そうとしたが、トントンと左肩に刺激がくる。
「仙道?」
仙道は手を震わせながら、首を振っていた。
俺は仙道がそうした意味を一瞬で理解した。
生徒会副会長の天堂が先に一歩前に、中井の提案に返答する。
「それはできないな。俺たちはおまえらを完全排除する、て決めちまったんだよ」
そう言ったとしても、おまえの兵はほとんど死んだんだぞ?とこのとき俺は勘違いをしていた。
「こいよ。まだそこにいるんだろ?鴨島ぁぁ!!!」
食堂の階段から、黒いヘドロみたいなものがゆっくりと上がってくる。
俺たちが止まっている中は天堂は勝ちを確信したかのように、はははと笑い続け、中井はそれを見続けていた。
このヘドロは一体なんなのだろうか?と俺は見続ける。
食堂のドアが開く。
そこには杉本が何かを投げ飛ばした。
何かは中井の足元に落ちる。
落ちたときに鳴るはずの音が出ない。
これはなんなんだ?
杉本がインフィニティブレイクを持ってきた。
こんなに時間が掛かったということは、どこに寄り道をしていたか敵と遭遇したかだな。
インフィニティブレイクを取ると同時にヘドロは2階へと這い上がり着く。
俺はインフィニティブレイクのセーフティを潰す。
ヘドロは鴨島へと成り変わっていく。
「ふ、久しぶりだな。中井。本性を表したか?」
「ああ、そうだ。やっぱり、おまえとは気が合いそうにないな」
「おまえはこのゲームを仕掛けた理由は白蓮大学生徒の壊滅と青灯幹部の座を賭けるためだろ?」
「いや、1つは合っている。青灯幹部の座は9席。3枠空いていたが、今さっき1枠埋まり、残りは2席。そこにへ入らせてもらう。そして、生徒の壊滅は俺が最初から選んだ選択肢ではない。壊滅は仙道が甘かったからだ」
仙道が体育館にいた生徒をまとめ上げていれば、壊滅なんて起こっていなかった。
これは俺が望んだ選択肢でも、望まなかった選択肢でもない。
俺が望んだ選択肢は鴨島排除及び青灯幹部の座になることだ。
「仙道か。確かにあいつは甘かったな。それやり、待てよ?あとは1席だぜ?」
「言わなくてもわかるだろ?」
「そうだなwこの俺を倒してから、言えよ」
その直後、鴨島は腰に手をかけた。
あいつも戦う気満々だな。
俺も満々になりたいが、その前に言うことがある。
「待て。戦う前に言わなくちゃいわないことがある」
「なんど?言ってみろ」
俺はあいつらに背を向けて言う。
γ班壊滅の原因はあいつらにある。
「なぁ、前田 翡翠歌,野地 奏多。おまえらは仙道のお言葉が心に刺さらなかったから、このクズ共についたんだろ?」
机の下に隠れていた前田と野地は顔を出し、立ち上がる。
「なんで?わかったんだ?」
「俺が考えた作戦には穴場などない。誰かが裏切ったとしか考えられない。じゃあ、誰が裏切るのか…それを推測し、おまえらに辿り着いた。そういえば、1人足りないな。死んだのか?」
俺は野地たちを煽り、情報を引き出そうとしたが、すぐにわかったため、自分で言うことにした。
「死んでなんかない!!真優美は!!」
俺は話しを遮るように割り込んだ。
「理由なんて言わなくても、今からわかることだ。それよりおまえらの処分についてだが、仙道と薮野を無事に守り切れたら生かしてやるよ」
すると、野地は机から少し乗り出す勢いでドンッと音を鳴らす力で手を着き、力強く反論してきた。
「そ、そんなことするわけないだろ!!」
俺は振り返り、冷淡でクズを見るような目で言った。
「じゃあ守り切れよ」
「ふ。始めようじゃないか」
俺たちは先手を取ることなく、突っ込みはしなかった。
こいつの異能は藍川で試し、新席の異能もだいたいは把握した。
残りはこいつは殺すことと藍川と共に幹部の座を取る。
洗脳発動条件は、
・相手が恐怖心を抱く
・相手より、弱いと思い込む
の2点。
いや、この自信に満ち溢れた目は勝ちを確信している。
条件は他にもある。
あいつの言動と行動の原理は遊佐木に基づいている。
遊佐木は俺には歯向かいはしない。
俺の行動に手は出さない。
そうなると、藍川は無視。
鴨島と接触したときを探り返す。
おかしな点は特になさそうだ。
この思考は時間は0.7秒で終わり、鴨島は腰からH&K MP7を取り出す。
インフィニティブレイクは弾薬ではなく、レーザー光線に近いもの。
弾薬ごとでは通用しないが、裂け目を生成させたやつがいる中で、真っ直ぐと銃弾が飛んでくるわけではない。
やつよりも早く撃ち殺すのは、論理的だが、インフィニティブレイクを一度、見せればいくらでも対応策ができてしまう。
メリットとしては、戦車の弾薬を消すほどのレーザー光線を出せる。
デメリットとしては、17秒間のインターバルと拳銃よりも発射速度が遅い。
撃つ時は確実に当てなければならない。
19m離れている中、今は撃つべきではない。
鴨島はH&K MP7を連射する。
頭狙い…
しゃがんでいれば、薮野に当たることはない。
俺はしゃがむことなく、違和感のないように、最小限の動きで、銃弾の軌道を変える。
俺は壁へとぶち抜く音に違和感があることに気づく。
野田戦で何者かの乱入もしくは俺たちの中の誰かが謎の力を使ったと思っていたが、乱入していたなら、俺も巻き添えを喰らっていなければおかしい軌道、仙道なら、自覚していないもしくはフリをしている、薮野ならもっと前に使えていたもしくは自覚していない。
そこから、異能を使ったのは俺、思った通りになっていた。
数日間、試した結果、俺の異能は大気が可能性として高い。
その大気で銃弾の軌道を変えている。
余裕で倒せると確信していた鴨島は焦りへと変わっていく。
「なぜだ!?なぜ当たらない!?」
俺は少しずつ距離を詰め、隙を窺う。
俺は鴨島より強いその心を胸にし、前に一歩。
また一歩と踏み出す。
4m
インフィニティブレイクを確実に当てられる距離。
「ッ!」
鴨島は容赦なく連射し続けるが、俺には一方に当たらない。
全身の周りを空気で固める。
俺の異能 大気は空気を操ることができる。
そのため、その場から酸素を無くせば勝ちとなる。
だが、それはできない。
なぜなら、どう試しても、とある成分配分以外を操ることはできなかったからだ。
その成分は他の物質を避ける。
だから、野田の心臓を貫いたときに心臓が綺麗な状態で取り出された。
それに気づいた俺はこの3日間で猛練習し、掴むことができた。
猛練習の精神的のキツさは美優から「飼い主様」と呼ばれたときよりはマシだった。
肉体的のキツさは10倍こっちの方がキツい。
俺は周りを気にすることなく、インフィニティブレイクの銃口を鴨島に向ける。
青灯幹部たちは鴨島が死んでも、俺が死んでも、どうでもいいと思っている。
3人中、1人は面白い方に、もう1人は強い方に、最後の1人はどっちでもいい。
鴨島はH&K MP7を投げ捨てる。
俺は引金を引く。
「死ねっ!中井!!」
そのとき、俺は後方から大きな殺意を感じ、インフィニティブレイクのレーザー光線はその殺意へと向かっていった。
大きな殺意は一瞬にして、何もかもなくなっただが、そこから大きく旋回していった小さな殺意がとある物質の層を貫通し、俺の左腰部に鉄のなまくらが入る。
左腰部から赤い液体が流れ出す。
鴨島の洗脳は物にも作用するというなのか?
そうだとしたら、軌道を逸らした銃弾を洗脳し、壁にめり込む寸前で止め、鉄のなまくらたちは時を待っていたということになる。
周りの物全部に意識していなければなくなる、と考える人が多い。
だが、そうすれば、相手の思う壺。
洗脳された俺が不利になる物だけに意識しておこう。
俺たちはそこに向かう影に気づかずに、青灯幹部の座をかけた戦いをしていた。
インフィニティブレイクのインターバル残り17秒
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