第52話 恩返し
中井はただ一つを除き、誰にも関心など向けていない。
自分に利益がある側につくつもりなのか!?
だから、負けたフリをして、俺たちを………
それでもなぜ俺たちは生かされている?
それなら、鴨島と交戦したときに始末するはずなのでは?
「何をお考えになっているのですか?」
その言葉で俺は意識を現実世界へと戻す。
井山の刃が俺の右肩をかする。
危ないところだった。
後、もう少しで右腕とはおさらばだった。
すると、更なる介入者が入る。
「井山。とっととそいつを仕留めろ」
在間・ゲンミュス!?
まずい…この戦力ではまず勝ち目などない………
ここは一旦引くべきか?
やつはギャラリーにいる逃げ切れる可能性もある………
いや引けない…
俺が逃げ切れたとしても、他の仲間が逃げ切れないし、やつらの異能はステルスと裏世界。
名前だけはわかっていても、裏世界という未知の異能相手に、逃げる判断はあまりにも無謀すぎる。
戦う方も無謀過ぎるが、俺が戦わないと全滅は避けられない。
とりあえずは井山をどうにかしなければ、ならないが、今の身体と武器じゃ、持っていけても相打ちか重傷になる可能性が高い。
仮に井山を倒せたとしても、在間は倒せない…
中井なら倒しに行くか…
俺はいつの間にかまた自分だけの世界に入っていた。
危ない危ない。
俺はまた現実世界へと戻ってくる。
煽っても無駄だ。
逆に相手のやる気を増やすだけ。
倒すなら、今がチャンス。
相手が油断している隙に倒すしか、勝ち目はない。
「そろそろ本気出してくださいよ?遊佐木さん。私がつまらないじゃないですか」
井山は小さい子と遊ぶようなニコッこり笑顔をして、俺の闘争心を高める口調で言った。
もちろん、俺はそれに乗らないが……今は…ね…?
そんなことより、中井なら、どう対応するかを絞り込む。
逃げない選択を取ること以外はとらないが、戦う選択をするなら、自分より上の相手なら、どこかの部位を犠牲にして致命傷を与える。
俺は利き腕ではない左腕を盾にし斬るのではなく、なんとかして、井山の隙を作り出し、戦闘不能状態に持ち込む。
俺と井山がぶつかりあおうとしたとき、1つの罵声が上がる。
「おまえは中井の劣等人間のか!!」
その言葉で俺は直前でかわす選択をとってしまった。
あ…避けてしまった…
俺はギリ正気ながら、反射的に避けた俺は〇〇に引っ掛かる。
それに即座に気づいた須葉は不器用ながら、俺に言葉をぶつける。
「俺は見ていてエゴを捨て去っているやつにしか見えない!でも、正直に言って、俺も現状はそうだ!こうちゃんしか眼中にないからな!遊佐木。おまえの弱点は自分の判断を認めていない。自分の判断を信じろ。俺はそれを信じておまえたちに着いたんだぞ?そうして、もらわないと俺が困る!」
その言葉はみんなにとってはプラスに聞こえただろう。
しかし、俺には真逆だった。
俺は正気のラインから外れる。
自分の判断に信じちゃダメなんだ!!!
俺の判断のせいでみんなが!!!
井山の斬撃が俺へと飛んでくる。
遠くで誰かの声がノイズとして、耳に入る。
井山との距離がもう2mを切ったとき、
そのノイズに負けない気に出し始めたら、最後まで追ってくる人の言葉が聞こえた。
あいつなら…か…
その時、俺の大切な人の言葉をやっと思い出した。
俺は今だけは中井のことを忘れ去る。
俺たちの勝利への道は今、中井を捨て去ること。
逃げない…いや、逃げるわけにはいかない!!
俺は欠けてた刀で井山の斬撃を受ける。
お互いの刃がぶつかり合う。
さっきまで強気だった井山は反射的に距離を取る。
なんだこれは?なぜ僕は距離を取った?
さっきまで中井に洗脳されていたこいつに?
いや待て、在間の裏世界を見せていないから、こっちの方が断然有利。
まだ慌てる場面ではない。
俺はもうこれ以上、犠牲者は出したくない。
みんなと協力してみんなで生き残ろう、でいけば、断然そっちの方が良かった。
でも、理想論でしかない。
だから、俺がいる限りはこれの以上の犠牲を払いたくはない!
脳が活性化していく。
在間の異能が見えていない以上、相手には分がある。
だけど、一度、病院で戦闘した際、井山は。
(ああ、久しぶりに感じる)
日本で住み始めて以来ない久しぶりの味わいだ。
日本に住み初めて?どういうことだ?俺はどこに住んでいた?
俺の気が一瞬、緩む。
押し返される。
斬撃は俺の胴体を横断したかのように思えた。
だが、俺は誰かに轢かれそうな子供を飛び出し助けてくれたような感覚で抱きつかれた。
これは?
「馬鹿!何してるのよ!」
誰だ?
俺は認識が遅れる。
脳が削れていっていることがわかる。
頭が真っ白になっていく。
抱きついていたのは九井だった。
「何をしているは俺のセ…」
俺が言っていい言葉ではない…
九井に掛ける言葉を探すが、出てこない。
遊佐木の顔が真っ青になっている。
手足の先も震えている。
周りが見てなくなっている。
考えが自分よりになっている。
「自分の判断で戦うのはいいけど、少しは仲間を信頼して休みなさい!これ以上はあなたが死んでしまう!」
信頼?俺に信頼できるのか?
俺が信頼できるのは中井だけだ。
あいつの判断はときにわからない…
だが、いつも正しい未来へと持っていく。
俺がパニックになっていることに気づいた九井は更に言葉を掛ける。
「自分の決意に責任を持ちなさい!私はあなたの言葉で決意できた。あなただから、私は信用できた。だから、今度は私があなたを決意させてみせる!信用させてみせる!」
九井は真っ直ぐな思いを俺にぶつかる。
まるでさっきとは別人のようだ、と俺は感じた。
「どうやって、だ?」
今更どうやって俺を変えてくれるだ?
須葉の言葉で先の一瞬だけ、中井のことを忘れることができた。
でも、今はもう中井のことしか考えていない。
俺が作る勝利への道は閉ざされた。
「こうやってよ?」
九井は敵が目の前にいるのに、思いっきり抱きしめてくる。俺の顔に九井の胸がめり込んでくる。
「な、何をしている!?」
俺の顔は赤みをましてゆく。
「あなたはきっと、私みたいに誰に、助けて欲しかったんだと思うの。だから、私があなたの救世主になる」
「そ!それにしても、今はそういう状況じゃ!」
羞恥心で俺のあれが反応しそうだが、ギリギリで抑え込み、今はそういうときではないと伝えるが、全く聞いていない。
俺と井山の刀がぶつかり合っているのに、下手すれば2人とも両断されておさらばという状況なのに、九井はそれをやめない。
九井は俺に密着しながら、顔を上げて言う。
「大丈夫。今は美優と須葉が相手してくれてる。あなたの仲間は強いのよ?だから、見ていてあげて?」
誘惑するように満載な笑みで俺を見つめてくる。
ひ、卑怯だろ………
俺は考えていたこと、全てを忘れ去り、違う意味で頭が白くなってきいていた。
そして、いつの間にかまた思い出してしまった中井のことも忘れていた。
遊佐木様が戦闘から離脱した後、私たちは最後の戦闘員として、託された。
食堂に集まるのはおそらく不可能。
健斗様のご命令に従わないことは飼い犬として失格ですが、今は須葉様が作ってくれた最後の武器が折れなように戦う,勝利することを意識して戦いましょう。
私は一度、武器を折られているため、最新の注意を払っている。
そして、状況は、
須葉様が私についてくることで限界だと、思っていたのですが、勘違いでした。
2人とも息が合わないだけで、抑えきれてはいます。
実際には須葉様が私に合わせようとして、合っていないので、私の方が足が引っ張っていますが、そこは健斗様には伝えないでください。
戻ります。
息が合えば、この方を倒すことは可能。
ですが、この人を倒れそうになるとおそらくギャラリーにいるもう1人の方が襲ってくる。
その前に倒し切りたいところです。
「須葉様、私が援護します。好きなようにやってください」
「りょーかい」
その瞬間、まだ動かないと思っていた方が私と須葉様の間にいきなり現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます