第50話 自由裁量

5月19日21:40 カフェ


「時間通りだな。中井」


天堂たちに作戦内容を伝え終わった俺はカフェへと入った。


鍵(キー)となるのが、生徒会広報 杉本 付保斗 (すぎもと ふほと)。

生徒会活動のときも特に目立った行動はしていない。

いや、しない。

この作戦でも目立った行動をしない可能性が高い、と思っていたのだが、自分から行動してくるとはな。


俺は椅子の引き、杉本の前に座る。


「杉本広報。俺はあなたと協定を結びにきた」


5月21日12:40 空き教室(エアガン部)


中井が言っていた武器はエアガン部が使う空き教室の1番左上のロッカーから左に4つズレた位置から取り出せると言っていた。


注意事項としては、授業中以外でエアガン部以外が開けた場合、仕掛けた罠により、かすり傷とうめき声がするらしい。


これが白蓮大学七不思議とされる1つの正体だと知ったが、今はどうでもいいことだ。


俺は1番左上から左から4つ目のロッカーの持ち手に手をかける。


持ち手を引くのではなく、押し通す。

すると、ロッカーから微妙に忍者屋敷とかでよくあるカラクリみたいな音がしながら、ロッカーから武器が入った箱が出る。


その箱の電子パネルに16桁の数字を入力すると、箱は開き、武器が露わとある。


「これが中井が言っていた武器…か」


俺は中井たちが卒業した後、このロッカーをどうするのか、よく隠し通してきたなと思いながら、言われたことを確認する。


名前は確か「インフィニティブレイク」

厨二病満載な名前だと思うが、AIに任せたら、こう返事が帰ってきたため、しょうがないのか?

まぁ、きっとAIもゲーム一種だと思い、つけたことにしておこう。


俺はインフィニティブレイクを手に取る。

形状は猟銃で使う銃みたいだな。


俺は一度、使ってみたかったが、位置バレするのと使用する際に危険と中井から根気強く言われた………やめておこう………


12:53 体育館


遊佐木くんが気を失った直後、私の足に小さな振動が伝わった。


ポケットに手を入れてスマホを取り出す。


本当は健斗くんたちにポケットに入れるのはやめておけと言われていたのだけど、不便だから意地で聞かなかったことにしていた。

けど、落とすこともなかったし、壊れていないしで結果的にはオーライかな。


最悪の場合も想定することはすごいけど、便利性も重要だよと心の中で思いながら、電源を入れ、さっきの振動はメールだと認識した。


誰からだろう?


確認すると、健斗くんからのだった。


生存者と一緒に食堂に向かって。

そこで落ち合おう。


了解。

でも先に健斗くんたちは無事なのかを知りたいかな。

私は文字を打ち込む。


健斗くんたちは無事なの?


私が思っていたよりも早くに返信が来た。

返信してすぐ過ぎない!?と驚きながらも文字を見る。


ああ、気を失っているが、全員無事だ。


なら、良かった。


安心のため息を尽きながら、私は一件落着したようにしていたが、まだ終わりではない。

健斗くんの指示を思い出し、生きている人に伝える。


「みんな。健斗くんからの連絡が届いたよ!食堂に行ってだって!だから、降りて来てくれないかな?」


ギャラリーから降りてきている人は私たちのみ。

他の人たちは降りてこない…


でも、無理もない。

遊佐木くんが相手をしようとしていたゾンビが静止してまだ残っているし、美優ちゃんの武器は折れてしまっている。


それで須葉さんの能力は限界を迎えていて、作れたらとして、あと1回が限界。

今、ここで使うべきでもない…


「私たちはもうあなたたちを信用するべきではないと考える!それでまずそこのゾンビたちを倒しなさいよ!」


身勝手というべきなのだろうか…


私をイジメていた3人の中の唯一の生き残り高杉 真優美が代表して私たちに声を上げる。


仙道くんたちがいない中、遊佐木くんが気を失っている中、ここをまとめる人がいない………


唯一、声を出せていた私も口を閉じてしまった。


体育館が沈黙と化している中、1人の青年が声を上げる。


「じゃあ、俺がぶっ壊してやる。そうしたら、降りてくれるんだな?」


「いや、そんなことは」


須葉はその言葉聞かずに静止しているゾンビの頭を次から次へと殴り飛ばしていく。


私たちが気がついたときには立っているゾンビなんていなかった。


「これでいいだろ?早く降りてこい」


両手が血に染まっている須葉は不気味な顔で彼女らに問いかける。


一瞬ゾッとしてしまったけど、これで降りてきてくれるかな?


ギャラリーにいた人のほとんどが下へと降りてきてくれた。


「あなたたちも降りてきてくれないかな?」


残りは3人。

高杉さんとその取巻きくんたち。


「私は拒否するわ」


「僕たちも女王様に賛成だ」


なんで?敵はもう…


"信じる"


その言葉が頭の中で浮かび上がった。


この言葉で説得させれば、降りてきてくれるかもしれない。


12:47 カフェ


「ロヴルト、羽柴 夜光は今、どこに?」


どこに行くと思ったら、身代わりの確認か。

俺は呆れ呆れ答えてやることにした。


まぁ中井から好き勝手やっていいと言われていますしね。


「身代わりは中井さんが作戦結構前に排除しましたよ?」


言葉を話した瞬間、俺の脳が揺れ始める。


鴨島 弦の異能は洗脳。

中井に言われた通りの感覚ですね。


脳は一定の感覚(1秒おきに18回ずつ)で揺れ続ける。


鴨島の洗脳が発動する条件は、

・相手が鴨島自身に恐怖心を持つこと

・相手が鴨島よりも戦闘に弱いこと

の2点。


力を制御して、恐怖心を抱いてみたら、これ程までに気持ち悪くなるとは思いませんでしたね。


そろそろタイムリミット。

それでは、彼にはこけしとなってもらいましょう。


2つの洗脳の条件から一気に外れた俺は虎を身体で表現するように、両腕を前に両脚で構える。


「な!?洗脳の条件にあっていたはずだ!?」


鴨島は驚きながらも持っていた拳銃を突き出すが…


「もう、遅いですね!異能、変換」


その瞬間、鴨島の身体の身体が恐縮し、こけしとなっていく。


「ふ、私の方が発動条件が簡単なのですよ。触らせてもらい、Thank you from the bottom of my heart.」


俺は鴨島が完全にこけしとなると、そのこけしを踏み潰し、変換を解除した。


「そこで永眠しておいてください。our fallen general.」


俺がカフェを跡にした後、空間に亀裂が入っていた。




※ ・Thank you from the bottom of my heart

  → 心より御礼申し上げます

・our fallen general

  →堕ちた私たちの大将

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