第49話 願望と掟
12:49 体育倉庫
私はゾンビのなった2人にバレないように跳び箱の近くなったマット裏に隠れている。
ここに隠れる意味があるかと聞かれると、そんなに意味はないのかもしれない。
なぜなら、そのゾンビたちは体育館で鳴り響く音に反応し、扉を引っ掻き回しているから。
私は跳び箱に隠れていたとき同様に蹲っていると、いきなり壁に振動が響く。
「はぁ」
驚きはしたものの私のに特に何かがあったわけではなかったため、それだけではゾンビに気づかれることはなかった。
そうそれだけでは…
その振動の影響で、響いた数秒後、何か入っているダンボールが棚の上から落ちてくる。
「!?」
あんなところにダンボールあったけ!?
気を取り直して、私は考える。
あれが落ちたら、バレてしまう。
私はダンボールをキャッチしようとしたが、嫌な予感がした。
今まで、それがあったとしても、ひとかけられも気にしなずに努力してきた。
でも、私はそれをキャッチせずに咄嗟に離れてしまう。
ダンボールが地面に落ちた。
ガタッ!と音が鳴る。
ゾンビが反応する。
早くこの場から離れないと!
離れようと立つがビリッと何か破けた音がした。
え?
私のスカートの一部が破損した器具に引っかかり、立ち上がりと同時に破けていたのである。
これじゃあ外に出られない。
何か巻けるものは…
周りを見渡すが、巻けそうなものはなかった。
すると、盾にしておいたマットからゾンビ2体の体重が加わってきた。
まずい…潰される。
私はそれを全力で押し返し始めた。
12:51 体育館
余計なことを考えるな…かあいつらしいな…
「遊佐木様。ゾンビの殲滅及び生存者確認が完了し…」
ガタッ!
白田の身体が一瞬でも、ビクッと動いた。
俺は珍しいなと思う暇もなく、音のした方へと飛び出す。
物音がした場所は体育倉庫。
もしかしたら、そこに生存者がいるのかもしれない。
そのとき、俺の中で嫌な予感が走る。
脳の消費。
一瞬、床に両手をつける。
頭が真っ白になっていくことがわかる。
それより、体育倉庫内の状況確認を。
壁、床に伝わっていく音波を使い、体育倉庫内を構築する。
人が1人,ゾンビが2体。
体型的に女性がゾンビに襲われている。
位置の把握はできた。
俺はスタートダッシュし、扉を蹴り破る。
1体のゾンビは飛ばした金属の扉の下敷きになり、もう1枚ゾンビは首を折り、殺した。
「無事…か……?」
そこに居たのは運動マットを盾にしていた九井がいた。
余計なことを考えるな………か…
無駄なことはするなとは言われていない。
自分が余計だと思わなければ何をしてもいい、てことだよな?
俺は頭が真っ白な中、できる限りで頑張った。
「あのとき!見捨ていってごめん…
言い訳になっちゃうけど…
本当は助けたかった…
俺を信用しなくても、ゴミだと思って
いられてもいい。
もう一回、俺と一緒に来てくれないか!!」
私の中で優しい風が吹いた。
後先を考えなくて不器用でドジでかっこよくて、唯一この私を助けてくれる…
正直、あの時は嘘だったんだ…なと思ってしまったけど、今になってようやくわかった。
あなたにまとわりつく呪縛がいたから、あんなことを言ったのだと………
私は嬉し泣きを我慢するようににっこりと左手を胸上に、右手をあなたに伸ばし、疑うことなく、ついていくことを伝える。
「よろしくお願いします」
もうこの人になら、裏切られたり、見捨てられたりしてもいいや。
後から絶望するぐらいなら………
今を幸せに生きていたいから………
俺の中で一驚の風が吹いた。
え?
まさかこれだけで九井が来てくれることを思っていなかったのと、今まで死んだようなは言い過ぎだが、全く嬉しそうな感情を出してこなかった九井がそれをした。
なんで?あんな酷いことをしたのに?
"余計なことを考えるな"
その言葉が真っ白だったはずの脳に響き渡る。
「あ゙ぁぁぁ!」
俺は脳を抑えながら蹲る。
なんだこれは!?
中井の命令に逆らったからか!?
それとも脳を消費したからか!?
「遊佐木くん!!」
俺は九井の言葉を聞きながら、気を失ってしまった。
12:46β班 4階天文室前
「立ち止まってどうした?仲間が全滅した姿を見て、絶望しているのか?生徒会長」
「それはどうかな?俺は1人でも戦えられるがな」
ここにいる生き残りいや動けるのは俺と神崎のみ。
最初から俺だけでこいつの相手はできたが、ここで雑魚を片付けて置くことが条件になっているor会長側の最終手段。
この二つの条件で立ち止まっている。
「先手を譲ってやる。来い」
木刀を武器とする櫂須磨は神崎に先手を譲る。
神崎は木刀を手に突っ込む。
「おらぁっ!!」
神崎は木刀を大きく降りかかる。
これは決して、自暴自棄で突撃しているわけではないし、俺は中井に捨て駒にされる運命からは流れならない。
なら、櫂須磨の一瞬の油断に持っていけるように、雑魚に成り切ろう。
あれじゃ隙を与え過ぎ。
一撃で落とされる。
せめてこれを神崎に作戦だと、考えるとしたら、4階到着と同時に俺が障壁となり、杉本を逆ルートで向かわせることを伝えている。
櫂須磨にこの隙を突かせて、杉本に仕留めてもらうということか?
だが、杉本には他の責務を与えた。
そんなことは起きない。
残念だ、神崎 法政。
少しは使えるかと思ったことに損したよ。
櫂須磨は隙を逃すことになく、神崎の懐に打ち込んだ。
「ア゙ァ」
神崎は数メートル吹き飛ばされ、俺は手で神崎を受け止め、捨てた。
「次はお前だ」
「あぁ、そうだな。それより楽しんでやらないか?」
俺は真剣を前に突き出し、櫂須磨に提案する。
櫂須磨はふざけているのか?と反論してくる。
「何を言っているんだ?俺はお遊びに付き合っている暇などない。命を懸けないのならば、おまえに刀を握る価値などない」
櫂須磨は今まで変えなかった無表情から、激怒した表情へと変える。
「貴様は俺の何がわかる!!!」
「真剣が握れないゴミ。ただそれだけだ」
「クッ!!後悔するなよ!!」
真剣を櫂須磨に投げ、もう一つの真剣に手に伸ばす。
2人が真剣を手にした一刹那勝負が決まる。
両者が床を蹴り上げようとしたとき、櫂須磨の真下の床が崩れ落ち、0.1秒出遅れる。
これで櫂須磨が倒せるとは一言も思っていないし、櫂須磨のスピード、技術には勝てない。
だから、最初から狙いは出遅れさせること。
俺の刃先と櫂須磨の刃がぶつかり合う。
切るのではなく突く。
俺の刀は櫂須磨の刀の鯖の部分を貫き、刀は折れさる。
「ッ!?」
俺は飛び蹴りをする体勢に入る。
真剣が折れた櫂須磨の腹に蹴りが入る。
櫂須磨は動くことなく、どこか悲しげに蹲る。
こいつは腕に相当な自信がある、と確信しているだが、その確信が一瞬の油断を生んだ。
「き、貴様…真剣勝負ではなかったのか?」
「俺がいつそんなこと言った?」
櫂須磨は俺に見下ろされるように顔を上げる。
「あ…あぁ…これが敗者の気持ちか…早く殺せ。中井 健斗」
「なぜ俺がおまえを殺さなければいけない?」
「それがやつとの掟だ…」
俺は櫂須磨 響鬼が天堂の方へついたのか確信はできていなかったが、これで繋ぎ合わさった。
今から、第2フェーズに取り掛かろう。
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