第47話 進歩と退歩

5月21日12:45 体育倉庫


私はあれから体育倉庫の跳び箱の中にいた。

あの人は結局………


あれこれ考えていると、体育倉庫の扉が開いた。


跳び箱の隙間から除く。


そこから、2人が入ってくる。

何しにきたのだろうか?

あの人に指示されて私を探しにきたのかな?

いや、それはない…

あの顔はもう………


私は見つからないように隙間から目を離す。


そのとき、謎の叫び声が聞こえた。

なんだろう?と再び隙間から様子を見てみると、その人たちが苦しみ出していた。


1人は首を抑えてもがき始め、もう1人は痙攣し動いていなかった。


ど、どうしたのだろう!?と思って数秒間経過すると、その人たちは何事もなかったかのように立ち上がった。


そして、私はようやく理解した。

それは2人はゾンビ噛まれ、ゾンビ化していたことに。


私は病院で教えられていたことを実戦する。

音を出さない。

とりあえず、じっと………


やばい………

ずっと同じ体勢でいたため、腰痛になってきた。

この体勢のままだと、数分後にはバレるし、逃げららなくなる。 


音を出さないように、跳び箱から抜け出し、ゾンビの手が届かないどこに身を潜めよう。


私は跳び箱に手を置いた。


12:37 生徒会室


もしかしたら、この作戦の全てを………


「遊佐木様。健斗様からのご命令です。一度、サイト様のことは放置し、γ班へと合流してください、とおっしゃっていました」


俺がやばいことを考えていると、白田が俺たちへのメッセージを教えてくれた。


確かにサイトのことを放置して置く方が妥当。元々仲間かよくわからなかったし、思考があれだし………


俺は一度、心を取り乱す。


「白田。体育館へ行くぞ」


「かしこまりました」


12:47 体育館 出入り口


体育館内が静かすぎる。

嫌な予感がする。


白田に小声で走るぞと言う。


扉が壊れている!?


出入り口ギリギリの壁に身をつけ、ブローニングM1900を構える。


左手であらかじめ決めていたハンドサインをする。


本当は薮野のところにやって行きたかったが、連絡通り、仙道に任せよう。


俺は体育館に乗り込む。

館内は半崩壊状態8割近くと久道の死亡、生き残りはギャラリー、ゾンビの数51体。


生き残りの攻撃が見られない。

那斗たちの銃弾は尽きたと見られる。


俺と白田の銃弾数は俺が16発、白田が11発の計27発。

銃弾が貫通しないため、飛び道具で倒せる数は27体。

残りは接近戦になる。


パンッ!


銃声が鳴り響き、たったの2秒で16体を葬り俺の銃弾が尽きる。


「白田!援護を!」


俺はナイフに乗り換え、ゾンビへと接近する。


正直に言うが、接近戦に厄介な体格のゾンビを先に殺したため、ナイフだけで殺せるのだが…

まぁいい、まずは1体目。


一気に加速し、ゾンビの懐に潜り込んだ。


顎から突き…


その瞬間、俺の視界は真っ白だった。


「え?」


何が起きた!?


「遊佐木くん!!うし…」


パンッ!


銃声が鳴った直後、ドサッと後方で音が鳴る。


何が起き…


俺は後方を振り返ると、視界がもとに戻り、すぐ近くに包丁を斬りつけてくる男がいた。


狙い首、距離は約20cm。


人間の神経じゃ間に合わない。

ここで使うしかない。


手に持っているナイフを音速で首横にセットをし、受け身を取る。


「ちっ」


俺は15m近く飛ばされた。


受け身を取れたのはいいが、ナイフは完全に折れ、俺はもう置物になってしまった。


だから、脳を削るしか…


俺は男を警戒しながら、対策をしていていたはずなのだが、那斗の叫び声と同時にその男は目の前にいた。


「遊佐木くん!!」


12:51 プール付近


やっぱり!!俺は!!


振り返り薮野さんの方へ走り出す。


全員で5人!!

矢は20本あるけど、大切なのは1本1本当たる気で撃つこと!!


左腕を水平にし、左手で弓を握り、右手の親指で矢を押さえ、人差し指、中指暇を引っ張る。


大きくて走りづらいけど、走れないことはない!


薮野は仙道が戦おうとしていることに気づく。


「バカ!!くるな!!」


「うぉぉぉ!!!こっちこいやぁぁぁ!!!」


俺は命令違反して、弦を引き切る。


5月19日10:40


みんながさすまたの練習をしているときに薮野さんに舞台裏に来て、と言われてきたのはいいけど…


誰もいない?

来る時間を間違えた?

10時40分、て言っていたはずなんだけど…


俺は周りをキョロキョロし始め、数分後に疲れ果て体操座りしていた。


来ない………


いつの間にか「の」の字を書いていている。


「待たせたな」


この声は!薮野さんじゃない………


俺は顔を上げて立ち上がると、そこにいたのは弓を持った中井さんだった。


気まずい…


「仙道、おまえにはこれを持ってもらう」


「はい」


弓矢をそんなに使ったことない俺はなくなく返事をした。


5月21日12:53


俺は一本の矢を放つ。

右へと回転しながら、先頭のゾンビの頭に突き刺さる。


薮野さんの目の前に倒れたゾンビ。

倒れたゾンビに躓く2体のゾンビ。

そのゾンビにさらに躓くゾンビ


その隙に薮野さんに肩を差し出す。


「おまえ、逃げろ、て言ったじゃないか」


「背を向けてしまったけど、友達(恩人)は見過ごせません」


びっくりしていた薮野さんは過去一で温かい顔をしていた。


「ありがとうな」


俺の肩に薮野さんの右腕がのる。


手足はまだ暖かい。

貧血にはなっていなさそう。


薮野さんが立ち上がると、俺たちは走り出した。


弓矢持ちながら、肩を貸すとかなり重い。

薮野さんのことを重いと言っているじゃなくて、弓と矢が重い。


運動していて良かったぁと思いながら、薮野さんの状態を確認する。


「薮野さん。意識は保てていますか?」


「ああ。だが、銃弾が右膝に残っている。戦場復帰は難しそうだな」


薮野さんは悔しそうで、申し訳なさそうな顔をした。


なんとか励ましたいと思った俺は、


「大丈夫ですよ!俺がいる限り!γ班は…」


大丈夫です…と言いたかった…

あのとき、隠れてしまった俺が…


「弱音を吐いてしまってすまない。右足が使えなくても、やれることはあるよな。とりあえず、どこかに避難しよう。ここから1番近くて安全そうな場所は食堂だが、ここままでは追いつかれる」


「俺の出番ということですね!」


薮野さんは少し勘違いをしているが、数秒前のことを忘れ、ポジティブに戻った。


「ああ、頼む」


俺は一度、薮野さんを下ろし、4体のゾンビに弓わ構えた。

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