第45話 無慈悲な道

5月21日12:29 α班


薮野が人間とは思えないスピードで俺を庇う。


「やぶ……」


バンッ!


薮野はブローニングM1900を盾にしたが、右膝の脛骨大腿関節ごとに銃弾が貫通する。


俺は瞬時に罪悪感を切り捨てる。


「白田!薮野護衛。サイト!畳みかけるぞ!」


救ってあげたい気持ちはある。

俺のせいで今、こうなっているから………


でも、ここで時間のロスをすると、足を引っ張るもしくは作戦失敗の原因になる。


中井なら、問答無用で殺す選択をする…


相手に引金を引く時間を与えずにサイトが前方に出る。

俺は後方でブローニングM1900を構え、相手の右肩の球関節を目掛けて発砲した。


パンッ!


銃弾は右肩の球関節を撃ち残ると、相手は右腕を下ろした。


その隙にサイトは相手の懐に潜り込み、顎に右手を当て、首を飛ばした。


相手は首から血を吹き出しながら、倒れていった。


「容赦ないな」


相手に隙を与えずに速攻で仕掛けた俺たちに薮野が感想を述べる。


「それはこっちも同じだ。おまえも容赦なく庇ってくるな。右足使えなったんだろ?これからどうする気だ?」


薮野は数秒間、黙り込む。


「俺を置いていけ」


その返答にサイトは笑う。


「置いておけ?そんなこと言っていいんですか?敵はおそらく1人ずつ潰していく気ですよ?しかも、相手が最初に狙っていたのは薮野さん。あなたですよ?」


そう…

相手は推測していた。


この人で俺が動揺し、俺に向かって撃つ。

動けない俺を見て、薮野は俺を庇う。

それで薮野は負傷し、置いていかれる。

置いていかれた薮野を仕留める。


「ああ、知ってる。だから、置いていけ」


「まぁ本人が言うなら、仕方がないですね。行きましょう。遊佐木さん。白田さん」


サイトは先に走り去っていく。


「遊佐木。後は頼むぞ」


俺は小さな声でああと返事をし、鴨島の無力化へと向かった。


食堂へ着くと、作戦通りに、白田は外から、俺とサイトは非常口から上がり、生徒会室に向かう。


作戦通りなら、先に白田が生徒会室に辿り着き、鴨島の気を引く…


作戦通りいくなら、そうなる。


だが、さっきの人をこの時間にあの場所で居させるのは、もう作戦がバレていると思っていた方がいい。


俺とサイトは非常口へと入り、階段を上がっていく。


作戦バレしているとなると、裏切り者か聞かれていたかのどちらかになるが、裏切り者がいると考えていた方がいい。


「遊佐木さん。それ以上上がると、屋上ですよ」


怪しい人を記憶を頼りに探っていると、いつの間にか4階に着いていたことをサイトに知らされ、生徒会室へと向かった。


パンッ!


ブローニングM1900の銃声が響いた。


最悪の場合を想定し、俺は全力疾走をする。


「サイト!俺が先に入る!」


俺はサイトに言い残し、サイトを追い抜いて、生徒会室に入る。


「白田!」


パンッ!


俺は銃弾を避ける。


「この銃、ゴミだな」


白田のブローニングM1900は鴨島に取られていた。


「すみません…遊佐木様…」


白田はナイフを手にし、取られたブローニングM1900を警戒していた。


白田の腰に2セットある。

入っていても残り6発。


「遊佐木!おまえは今から!俺の!」


パンッ!


何かを言いかけた鴨島の頭スレスレに銃弾が通った。


「は?」


「投降してください。鴨島 弦さん。今、投降すれば命だけは保証してあげます」


サイトが生徒会室に入ってきた。


鴨島はサイトに気を取られる。


俺はナイフを手にし、鴨島の懐へと潜り込んだ!と思ったが、目の前に拳が飛んできていた。


俺は受け身を取り、致命傷を避けれた。


壁に衝突することは避けれた。

問題はどうやって倒すかだが…


今ので、隙がないことがわかったため、どうやって無力化をさせようと考えていると、


「おまえら、舐めんじゃねぞ?」


鴨島は低音イケボで本気になることを知らせてくる。


こいつも異能を使ってくる可能性が高い。


「全員!距離をとれ!」


距離をとってくれれば、最悪の場合、俺が対処できるかもしれない。


俺はそう思いながら、白田がバックステップで距離をとったことを確認した。


独特過ぎやろぉとツッコミたくなったが、なんとか耐える。


後はサイト。


サイトを見ると、突っ立っていた。

しかも、両腕を大きく広げ、何かを待っているように見えた。


「サイト!?」


鴨島の異能が何かを確認するために身代わりに!?

いや、違う。

避けられる自信があるのと、異能をくらいたいだけなんだろう。


鴨島は右手を前に上げる。


「死ねっ!!」


なんだ?あれは?


一般人には見えない細い線がサイトに向かって放たれる。


サイトはそれをもろいに受ける。


サイト!?

避けられるから、くらったんじゃないの!?

もしかしたら、くらいたかっただけなのか!?


サイトは両腕を下ろした。


「サイト!無事なのか!?」


数秒間の沈黙の後、


「はい。遊佐木さん」


サイトは背を向けたまま、返事をする。

その瞬間、サイトは俺に向かって飛びかかってきた。

 

俺はそれを紙一重で避ける。


危な…あ………


サイトは勢いを止められず、窓を突き破り外へと落ちていった。


「サイト様!?」


白田はサイトを救おうと、飛び出した瞬間動くが、右腕でそれを止める。


「白田!待……て?!今はそれどころじゃない!今は鴨島の無力化が最優先だ。この高さなら、サイトは死ぬはずがない!」


右腕で白田の身体の柔らかいどころかを触れ、止めたのだが、本人も気にしてなさそうなので、ノーカンといこう。


ふぅ


俺は深呼吸をし、冷静になり直す。


サイトは死ぬはずないと言ったが、必ずではない。

そこは頭に入れて置いて今は鴨島の無力化を…


鴨島の方を振り向くと、鴨島はタックルをしてきた。


マズイ!!この状況下でまともにくらえば、外へ真っ逆様!!


仮に受け身を取ったとしても、落ちたときの受け身はできない!!


鴨島はどんどん近づいてきている。


考えている時間などない。

どちらの方が生存率と行動保証が高いかを瞬時に判断した。


白田を突き放した後、タックルへの受け身は諦め、落下時の受け身を最優先。


俺は白田を突き飛ばし、落下時の受け身へと備える。


「遊佐木様!?」


白田は俺に左手を向けた。


すまない…

白田を突き飛ばした罰として、タックルが来る。


絶対タックル当たったとき、痛いな。

鴨島の腕が俺の背中に当たりかけた寸前で鴨島は回転した。


え!?


「遊佐木 瑛太、また会おう」


鴨島だけが窓を突き破り、落下していった。


「先にサイトを潰す気か!?」


だが、鴨島の落下と同時に地面に落ちたサイトが立ち上がり、その場を後にしていった。


サイトは裏切ったのだろうか?

それとも、わざとなのだろうか?


俺は心の中でその2つが半々になってしまった。


それともこれは………





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