第43話 置いていかれた者たち
静岡県立総合病院の生き残りは計7名となった。
20:12 白蓮大学に到着&合流
〜
5月21日12:27 作戦開始直後 α班
俺を含む計4人で構成されるα班の役目は鴨島の無力化をさせること。
そのため、非常に戦闘力にかける俺、薮野(左腕損傷中だけど…)、サイト、白田(?)で構成されていた。
白田を入れる理由はよくわかるが………
これ以上は差別(?)になってしまうかもしれないから、やめておこう。
それで全員に渡された武器はナイフとブローニングM1900一丁と変えが2セット。
実段数は計24発とかなり少ない。
戦争では到底使い物にならないし、1900年にベルギーで作られたからな。
俺があやふやとブローニングM1900について考えていることに気づいたのか、薮野が左肩に手を置いた。
「行くぞ、遊佐木」
俺はいつの間にか足が止まっていたようだ。
「すまない。行こう」
俺たちは鴨島のいる生徒会室。
中井が天堂たちを惹きつけている間に野球場からテニスコートまでを回り、俺、薮野、サイトで食堂に入り、2階まで侵入。
白田には化学の実験室から生徒会室まで登ってもらい、鴨島の気を惹きつけてもらう。
食堂2階から連絡通路を渡って、学校内へ。
あらかじめ開けておいてくれた非常口を使って4階に上がる。
鴨島が白田に構っている間に生徒会室に潜り込み、無力化させる。
そこからは隣にある放送室で相手の投降を申し出る。
俺たちがプールを差し掛かろうとしたとき、ハプニングが起こった。
俺の中で戦慄が走る。
「あなたは………」
目の前にいたのは、静岡県立総合病院で置いていってしまった(忘れてしまっていた)俺が助けた病院のスタッフの人だった。
「あのときは!」
俺は謝罪をしようとしたとき、その人は恨みをぶつけてきた。
「あなたたちが!私を置いていかなければ!!」
俺の唇は石化したかのように動かず、何を言えばいいかわからなくなってしまった。
「遊佐木、あいつ銃を持っている。言葉には気を…」
俺がただ立っている人になってしまっていることに薮野が気づいた。
その人はマクミランTAC-50を向け、発砲してきた。
「遊佐木!」
バンッ!
〜
5月18日19:52
乗っていたヘリは俺たちの街に1番近い山に着陸した。
「ゆ…ゆ…きさま…遊佐木様…遊佐木様、到着いたしました」
遠くから徐々に近づいていく。
俺は目を覚ました。
「白田、病院から脱出したみんなは無事か?」
頭の中がすごく痛くて混乱しているが、俺はみんなに心配をかけたくないため、大丈夫そうな顔でみんなの安否を確認する。
「はい。全員無事です」
ふぅ。
俺はため息をつき、その言葉で一安心し、周りの確認をする。
着陸するとき、相当な音を出していたはずだ。
ゾンビが寄ってきている可能性が高い。
ヘリ周辺から少し離れたところは木々が生い茂っていた、が周辺はクレーターになっていた。
ここに小隕石か何かが落下したのか?
それより、俺が救った女性のスタッフの人は無事に逃げれたのだろうか…
俺は仲間のことで精一杯で忘れてしまっていた。
おそらく須葉との条件で、静岡県立総合病院はもうない。
無事だと、いいのだが………
俺はいろいろと考えていると、
「遊佐木さん。ここ一体を須葉さんと確認してきたのですが、誰もいませんでしたので、ご安心してください」
サイトが微笑んで俺の腰を持ち、起こしてくれた。
「ああ、すまない。こんなときに…」
俺は何もできなかった悔しさを胸にした。
すると、遠くから気違いが手を振って走ってきていた。
「遊佐木!!こうちゃんはどこにいるんだ!?」
あれから、雰囲気がかなり変わってしまっているが、須葉の異能は使える。
できるだけ友好的に関わっておきたい。
とは、言っても今、香江に会えるわけではないが、な………
これ先にも会えないのかもしれない………
俺はその思いを、事実を胸に閉じ込めて置くことにした。
「須葉、すまないが、今、香江と会えるわけではないんだ。必ず会うことになっているから、それまで待っていてくれないか?」
須葉はにこやかに何の疑いもなく、すぐに答えた。
「ああ、わかった!」
こいつと今、会話するのはきついな、と思った。
ここからは歩きで白蓮大学に向かう。
俺は歩けるかどうかを3、4歩前に踏み込んでみた。
よし、歩けないことはないし、走れないこともない。
俺はみんなに集まれ、と言い1人以外は集まってくれた。
「遊佐木様、どうなさいますか?」
白田は木にもたれかかっている香瀬をどうするのか、と判断を委ねてきた。
みんなの意見を聞いて…
俺は聞く意味がないじゃんと思い、にこやかな顔をする。
みんなの表情からどう思っているのかを予測した。
全くわかっていなさそう須葉はどっちでも。
サイトからは殺意が溢れていたので、置いていく(おそらく殺せという意味なのだろうが…)
那斗は全身から連れて行きましょうオーラが出ているので、ついていく。
白田は表情でも、仕草でも読み取れないため、保留。
1対1対1(1名保留)でちょうど均等になっているから、俺の判断したしだいか。
まずもちろん中井なら、問答無用で置いていく。
使えない・足手纏い・メリットがないやつ…
それらのどれかが当てはまった瞬間、見捨てる判断をする。
香瀬はもうそれに当てはまってしまっている。
置いていくべきなのだろうか………
俺は少しばかり悩んでしまった。
「瑛太くん。本人に聞いてみたらどうかな?」
本人に?
確かに本人の意思を聞いて見た方が良いのかもしれない。
俺は頭の痛みに耐えながら、香瀬の方へと歩いていった。
「香瀬。俺たちと一緒にくるか?」
もぬけの殻のようにブツブツと何かを言っていた。
もうこれは置いていくしかないと俺は思ってしまった。
「遊佐木さん、お仲間さんが待っているので、さっさと行きましょう」
俺は頷くと、那斗は連れて行こうよ!と何度も反感してきたが、白田が抑えてくれた。
すまない、香瀬………
みんなは先に白蓮大学へと、歩み始め、俺も行こうとしたとき、
『連れて行って』
!?
俺は踏み出そうとした足を固めてしまう。
後方から幼い子の声が聞こえた。
『置いていかないで』
身体中に戦慄が走る。
頭の痛みは一瞬にして、消え去る。
聞き覚えのある声に似ている。
誰の声だ?
「遊佐木様?どうなさいましたか?」
声に気づき、俺は正気を取り戻した。
白田が立ち止まる俺に気づいてくれたのか。
その後、俺はみんなを追いかけ、その声は聞こえなくなったのであった。
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