第40話 狙撃者の罠
白田たちの援護として、バレットMRADを使おうとスコープを除いたが、力が抜けてしまった。
俺は本棟5階から頭から転落した。
一瞬、力が抜けただけなのに、転落とは………
俺は最後の力でゾンビを1体でも倒そうとした。
残り21体。
白田が九井を守りながら、抗戦している。
1体に標準を合わせ、バレットMRADの引金を引いた。
ドダッ!
1体の頭をぶち抜いた俺は地面と接触しようとした瞬間、謎の風圧が頭と地面の間に入り、落下ダメージはかなり軽減いやほぼないに等しいレベルになった。
「遊佐木様!!無事ですか?」
俺の最後の抗いに気づいたのか、あの一瞬で俺の位置を確認し、助けにきたのか!?
しかも、九井を連れて…
化け物だな………
俺は力を振り絞り、立ち上がる。
「白田、応戦する」
「いえ、九井様を守っていてください」
白田に守られながら、俺は意思表示をするが、あっさりと断れ、白田は溜めた。
大勢のゾンビがどんどんと近づいてくる。
真っ先に白田に被りこうと先行したゾンビが触れそうになった瞬間。
セーフティが壊れたかのように白田は刀を一振りし、残りのゾンビの頭を横断した。
さっきまで細々とゾンビにダメージを与えていっていた戦い方とは比べものにならない破壊力。
まさか!?俺を助けるついでに壁側に追い込まれ、ピンチになったフリをし、ゾンビをひとまとめにする。
最後に一振りで終わらせるつもりだったのか!?
いやピンチは関係ないな…
ゾンビはそんなことを考えることができないだろうしな………
そして、九井はこいつ本当に人間なのか?という目で驚愕していたが、とりあえずは全員無事ではないが助かった。
結果オーライというやつだ。
「で、この後、どーするのよ?」
九井に聞かれると、俺は頭の中で早く山田、那斗たちに連絡を入れ、山田の救出、みんなと合流し、白蓮大学に向かわなければならない、と浮かび上がった。
「那斗たちに連絡、山田の救出、合流、ヘリで白蓮大学に向かうという感じだ」
俺の意見に反論してきそうであったが、俺が何もないところで体勢を崩したせいかそのときに反論は飛んでこなかった。
体勢を崩した俺に白田は肩を貸してくれた。
「すまない」
白田はいえいえお互い様です、と言いたそうな目で俺を見てきた。
静岡県立総合病院に来てから、助けられているのはずっと俺の方なんだが?と思ったが、今はなかったことにしておこう。
連絡を入れようとスマホを取り出し、周りの安全を確認すると、
ケアセンター方面から駐車場を通ってこちらに向かってきている5人の人影が見えていた。
「遊佐木様。那斗様たちがご帰還されました。」
俺はカッコつけ言っているのか?と思い、白田の表情を確認したが、無表情だった。
まさしく昔の俺………
まぁいい。それより、帰還という言葉が合っているのは俺たちの方だも思うが…
俺たちに気づいたのか遠目で那斗が手を振った。
それから何事もなく那斗たちと合流した。
那斗、香瀬、亜須原 、残り2人はMP40を持った男と手ぶらの男。
MP40を持っている時点で、武器持って逃げた男2人だと思うが、念のため確認をした。
「那斗、そいつらは持ち逃げしたやつらか?」
那斗は頷いた。
やつらから脅されている気配は感じない。
だけど、MP40を持っている男からは嫌な空気が漂っている。
「私は藍川・ロヴルト・最愛 (あいかわ さいあ)と申します。サイトと呼びください」
!?
こいつはサンドラ王国三皇と呼ばれた家系 ロヴルト家の次期当主候補の1人。
「俺の名前は!!バヴィオレスプリンズで恐れられた!!ジュージ村上だ!!」
俺は一度、気持ちを落ち着かせる。
力を使いきってしまったせいか、顔に出してしまう失態とそれ以上は思い出せなかった。
「遊佐木さん。Nice to see you again.お久しぶりですね」
俺のことを知っている!?
そうなると、ザンベジ戦争でロヴルト家の地位と名誉をボロボロにされ、復讐でポーカーフェイスと勝手につけられた俺を抹殺するために日本にきたと思わ………
いつの間に………
どこからか俺の左薬指に麻酔針が刺さり、気を失ってしまった。
「ゆ?遊佐木様!?」
遊佐木が気を失った後、冷静でいられない者はいなかった。
「みんな!物陰に!ないなら、かがんで!」
すぐに遊佐木の代わりとして那斗が指示を出す。
橙子と九井と遊佐木を連れた白田は連絡通路の下に。
戦闘狂は銃を構え、四方八方を見渡し、サイトと俺と同じく突っ立っていた。
バンッ!
戦闘狂が狙撃されたが、それをなんなりと交わした。
「どこだ!?どごだ!!」
俺らのリーダーは撃たれて気を失った。
リーダーを失った、てことは=負けに等しい。
「あー、もうこれは駄目だわ」
俺は半ば諦めていていた。
あの戦闘狂はVReスポーツのプロゲーマーだが、傲慢かつ乱暴で使った銃もすぐに駄目にする、数々の事件である意味で有名。
そのため、あいつから奪った銃もすぐに使いものにならなくなる。
バンッ!
次は銃を少し掠った。
サイトは本棟の上層を見上げていたが、視線はケアセンターを見ているようだった。
サイトは何かを企んでいるが、考えていることはわからない。
白田は使えるが、居場所のわからないところから狙撃されているから、使えない。
実際に俺も相手がどこにいるかわからない。
バンッ!
3度目の狙撃は戦闘狂ではなく、サイトの右頬を掠れていった。
俺は深い深呼吸をする。
おそらく狙撃しているやつに殺されて、ヘリ壊されるか奪われて終わるだけか…
「最後に弓道をしたかったな………」
どこから少しずつ聞き覚えのある心地良い声が聞こえてきた。
「那糸…那糸…那糸!那糸!!!」
橙子が俺に向かって走ってきた。
バンッ!
4度目の狙撃は橙子の足元に放たれた。
「キャッ!」
橙子は驚き後ろへと倒れる。
1,2度目の発砲には明確な殺意を込められた部位に撃たれていた。
これ以上踏み出してくるな、という威嚇だろう。
これで橙子は来なくなるはずだ。
「那糸!!!」
橙子が俺の名前を呼んだ。
橙子は震えている手足に力を振り絞り、俺に向かって再び走り出した。
なぜ来るんだ?
さっきの威嚇がわからなかったのか!?
「来るな!!橙子!!」
バンッ!
順番的に俺に向けられるはずだった5度目の発砲は目の前にあった。
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