第37話 遊佐木の過去①
俺は本棟5階に入り、白田は九井の救出に向かった。
ハメられた。
残りの残弾数は1発。
俺は須葉に落とされない位置で下を確認する。
10,20,30,40…
42体…
俺も救出に向かわなければ、と言いたいところだが、武器もない以上、あの集団に突っ込むのは無防備過ぎるのと、足手纏いになるだけた。
白田を信じてここで須葉に邪魔されないよう、見張るしかないかって!?
俺は下を見るとのをやめ、須葉を見張ろうと、振り返ると、5階にいた病院のスタッフと患者計9人が一斉に俺が入ってきた窓から飛び降りた。
「待!?」
俺は外を目掛けて飛び込んだ。
ギリギリ1人の右足首を右手で掴んだが、窓から上半身を突き出し、左手で窓の蓋を掴み、耐えている。
だが、俺は今、格好の的になっており、落とそうと思えば、落とせられる。
俺は頑張って、引き上げようとするが…
クソ…ダメか…
中井なら、容赦なく離すだろうが…
あの戦争前の俺なら、もっと…人を救えたのに…
4年前
-
僕は南アフリカ大陸南部の小さな村で生まれ育った。
17歳の頃、僕らの村はサンベジ戦争に巻き込まれた。
サンベジ戦争は、
北部 ザンビア、モザンピーク北部
vs
南部 ザンドラ、ジンブエ、モザンピーク南部
が、サンベシ川を中心とする戦争であり、僕らはそのサンベジ川の南部側だった。
始まりは南部へのザンビアの侵略で、その最初の進路に不幸にも僕らの村があった。
僕らの村の最初の犠牲者は、サンベジ川に水を汲みに向かっていた僕より4つ年下の少年であった。
サンベジ戦争1日前 ジンバブエ北部 バブエ砂漠
毎朝5時に僕は4つ年下の男の子のヒージュとラクダを連れて、14km離れたサンベジ川へと水を汲みに行っている。
「○○○、今日もどっちが早く着くか勝負しよ!!」
「今日も僕は勝つが、大丈夫か?」
「○○○!開始!!」
ヒージュはいつも通りフライングする。
そして、ラクダも連れて行くのも僕。
だが、それは4歳差のハンデというものだ。
僕はいつも天候、気温、ラクダの体調、足場を見て、ルートを決める。
砂嵐はない、砂もサラサラしている、ラクダの体調と気温も安静。
僕は少し楕円を描いて汲み場まで向かった。
村からおよそ3時間かけて、サンベジ川の水汲み場に着いた僕はヒージュが先に着いていていないかを確認した。
「今日も僕が勝ちだな。」
その数分後、ヒージュが水汲み場まで辿り着いた。
「○○○、早いよ。」
「それでも、少しずつ縮まっていっている。すごいぞ。ヒュージュ。」
「そ、そうかな?じゃあ!明日は出発時間を遅らせようよ!」
このバブエ砂漠では、1年に数回、酷い砂嵐がやってくる。
ヒージュはその日を予測して、明日の出発時間を遅らせ、砂嵐が酷い時間に行きたいのか?
「すまないが、それはできないヒージュ。流石に危険過ぎるし、明日の勝負はダメだ。」
悪いと思っているが、命に関わることだけはダメだ。
その後のヒージュはええー、と言い、不機嫌なまま、一緒に帰った。
後日5時、砂嵐は少し吹いていたが、いつも通り、僕はビージュと一緒にサンベジ川へと水を汲み行こうと、支度をしていると、村長からヒージュとラクダがいなくなった、と伝えられた。
僕はまさか!?と思い、全速力でヒージュを追いかけた。
まだそんな酷い砂嵐でもないし、視界は全然見える。
僕した判断が悪夢であったことに気づかずにただヒージュを追いかけていた。
村とサンベジ川の中間あたりについたとき
僕は遠目でもわかったそいつらがどんな奴らかを…
ヒージュが殴り殺されていることを…
僕はこのことを早く村の人々に伝えなくては、と思い、村へと全速力で走った。
さっき、奴らとはおよそ2km。
全速力で迎えば、村まで34分。
そろそろ僕の村が見えてくることだ。
村のシンボルの大きな大樹の先端が見た。
翠色の…
僕らの村の大樹は綺麗な翠色の葉がついていたんだ…
翠色の葉は赤く燃えていた。
遅かった…のか?
僕はさらに急いで村全体を見たが…
村全体は赤い色に染まっていた。
兵から逃げ惑い撃ち殺される人々…
炎で焼け死ぬ人々…
僕は両膝を地面につけ、絶望した。
あ…あ…
僕の視界は真っ黒に染まっていった。
「ここで何が起こったんだ?」
「おいおい、どうしたんだ?な!?ザンビア兵もたくさん死んでる!?」
「ここは戦争の1番最初の勃発したところでだぞ?南部はこれに気づいていたってことかよ?」
あ…あ…何か、声が聞こえてきた…
僕はあの後、記憶がなく、周りのことがどうでもよくなった抜け殻になっていた。
「おい!ソーシ!生存者がいるぞ!」
生存者?何を言っているだ?
ここにはもう生きている者なんていないんだぞ?
1人の兵が僕に走って近づいてきた。
「大丈夫か?君?」
僕に話しかけてきた人は武器を持っていた。
僕の気持ちは怒りへと…殺意へと変わった。
「アンドリー!逃げろ!」
「おまえも…」
「どうした?」
僕は奇襲のように、1人の兵の首をへし折り、殺した。
グギ
次に向けられた僕の殺意は残りの兵だった。
「おい、待て。落ち着け。」
その兵は持っていた銃とナイフ、グレネードを全て地面に置き、1歩離れた。
僕は相手に戦う意志がないとわかっていながらも、1歩踏み出したとき、僕は意識を失った。
目が覚めると、自分は知らないところにいた。
「ここは?」
「ここは軍の病院だ。いわゆる体の傷を治すところ。それで君に名前を聞きたいのだが、まずの俺の自己紹介からだな。俺の名前は登美 蒼士 (とうみ そうし)、アメリカ軍の日本人だ。」
自分は言語が通じないと思っていたが、この人の声ではないが、通じた。
「名前は…忘れた…」
「そうか…なら、まずは俺の家に行こう。落ち着いたら、これからについて話そう。」
自分が何があったのかも…何者かだったのかも…
忘れてしまった。
そうしについて行き、謎の物体に乗り、そうしの家に着いた。
「とりあえず、名前が必要だな。」
そうしは腕を組み、難しい顔をして何かを考えていた。
「名前…?」
「よし!決めた!君の名前は遊佐木 瑛太にしよう!」
「ゆさき えいた?」
不思議な名前だな、と思った。
「そうそう!」
その後、自分はそうしに服を脱がされたり着せられたり、髪や爪を切られたり、と色々された。
「ふぅ。一通りは終わったけど、何がしたい?」
そうしから、自分の意志について、聞かれた。
「自分はこの世界を知りたい。」
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