第36話 人にはそれぞれの個性と事情があるものです
ヴゥー!
俺は前方から14体のゾンビ共が来ているに気づいた。
これはマズイな、と思いながら、脱出方法を探す。
残り4発。
さっきみたいに隙間を抜けて行くことが必要で進むなら、前方。
できるだけひきつけるゾンビを減らす…。
中井なら、地下室にできる限り落としていく…。
山田はどうなる?
俺たちが通ってきた換気口はある。
だが、そこを潰されてしまったら…
俺はスピードを落としながら、考えている間にゾンビは俺にどんどん近づいてきていた。
正面突破にしよう。
俺が前方に進むことを決めた瞬間…
「遊佐木様!!頭を下げて!!」
俺は頭を反射的に下げた。
後方のゾンビ20体と前方のゾンビ14体の生首が地面に一斉に着いた。
白田は美しく空中を舞い、地に立ち、刀を鞘に差した。
「ナイス。白田。本棟へと向かうぞ。」
白田が須葉に取られた新刀を使っていることに気づきながら、管理棟出入り口にいた4人と合流し、メールを確認しながら、本棟へと向かった。
15:49
俺たちは白田を先頭に駐車場を通り、連絡通路から西棟へと侵入した。
本棟5階まで行くには、俺と白田が行ったように西棟4階まで上がり、気づいてもらうしかなさそうなのだが、他に1つ本棟5階に行く方法がある。
それは白田が言った壁を登っていく。
壁ジャンプを見せた白田が言うのなら、きっとできるのだろう。
「白田。俺と2人で須葉のところへ乗り込む。その他4人は下で耐えてくれ。」
俺はこの策は無理だろうと思っていた。
那斗、香瀬、亜須原は賛成してくれる。
しかし、九井は私たちが危ないと反発してくる。
俺は頼むから賛成してくれ、と九井に祈っている。
「私は無理よ。」
九井は荒い息を吐きながら、反発してきた。
「那斗さんは元々賛成で、僕らも賛成するけど、九井はなぜ反対するのかな?」
香瀬は少しキレ気味に九井に聞いた。
「今でも死にかけているのに、走り死ねと言っているのと同じよ!」
俺は九井が少しずつスピードが落ちていることに気づいてはいた。
だが、それが彼女のプライバシーとしたら、敵を作ることになってしまう。
「ダメですよ!今、喧嘩したら!」
亜須原は2人の言い合いを止めようと割り込んだが、それを2人は聞こうともしなかった。
俺は少し差別になってしまうことになってしまうが、西棟と本棟を繋ぐ連絡通路に差し掛かろうとしたところで2人の言い合いに口を挟んだ。
「香瀬、九井は運動部ではないし、体力には自信がないのだろう。大目に見てやってくれないか?」
すぐに香瀬から反発が飛んでいた。
「そんなわけできることないだろ!?こいつの体力がないせいで!!松田先輩が犠牲になったんだぞ!?大目に見れるわけもだろ!!」
香瀬は松田を敬愛していたのだろう。
松田に憧れて弓道を始めたのだろう。
俺は管理棟のコンピュータ室から出る前に山田が2人のことを調べられたことについて、メールで送られていた。
何にせよ、2人は小学校からの親友だった。
「香瀬は毎日、走っているから体力には自信がある。亜須原は香瀬のトレーニングに付き合っていたため、彼女も体力に自信がある。人にはそれぞれ個性がある。香瀬と亜須原はたまたまその個性を持っていた。でも、彼女はたまたまその個性を持っていない。松田先輩の個性は人一倍正義感が強かった。そのため九井を庇った。自分の命と引き換えにしても、九井をおまえに託したんだ。」
香瀬は拳を握りしめ、やけになってしまった自分を、親友の思いに気づかなかった自分を悔やみながら…
「九井。俺たちと一緒に行くなら、いいんだよな?」
俺は九井の発言を元に推測し、問いかけた。
「それならいいけど…」
九井の許可が下りたため、白田が行けるなら、3人同士に。きついなら、2回に分けてもらい、九井、俺という順番に行く。
俺は白田に俺と九井を運んでいけるかどうかを聞いてみると、2回に分けてくれるなら、いけると答えてくれた。
「ここからは2グループに分けて進む。こっちが須葉を確保したら、連絡する。それまで耐えてくれ。」
「逆に確保できず、遊佐木たちが殺された、捕まった場合はどうすればいい?」
香瀬は右手を挙げ、最悪の場合を想定し、質問をしてきた。
「そのときは、俺たちを見捨てて逃げろ、と言いたいところだが、まず俺が負けるわけないだろ?」
俺は強気で香瀬に質問を返した。
俺は逃走経路とどこで待機しておくかを那斗に伝えた。
那斗、香瀬、亜須原と分かれた俺たちは連絡通路から外に出た。
案外ゾンビも追いかけてきていない。
操られていたゾンビを俺たちが殺し終えたか他の場所で待機させているかはわからないが、おそらくは当分は那斗たちのところへは行かないだろう。
「白田。九井を頼む。」
と言うと、すぐに九井が反発してきた。
「嫌よ。」
俺はなぜ?という表情を出してしてしまった?
「九井。それはなんでだ?」
上にいる1人でいると須葉に何かされるかもしれないか、か?
「見ればわかるでしょ?私は制服よ?先に行くと、丸見えにあるじゃない…」
国立京天学院大学は制服がある大学だが、よく見るとこの制服は国立京天学院大学のではない。
記憶を漁るとこの制服がどこの学校のものかが出てきた。
「九井。おまえ、国立京天学院大学…いや、大学生でないな?」
九井は何かを隠すかのように目を逸らし、右手で左肘を掴んだ。
「日本の名門 国立琴李高等学校3年生だな?」
特徴のあるエンブレムに琴の弦を連想させる方から腕への模様。
俺はなんで気づかなかった?と思いながら、九井の制服が琴李高校のものだと気づいた。
九井は目を逸らしたまま、頷いた。
「情報が間違っていると、俺たちにも危険が及ぶ。どんな事情があっても、嘘だけはつくな。」
とは、いっても今はあまり個人情報は使わなそうだが…
白田は俺に見えるように、指で1と3を表した。
「13秒。おまえが1人でいる時間だ。ACRをおまえに託す。耐えろ。」
俺は白田の背中に乗り、白田は登り始めた。
登り初め、9秒で5階まで着き、俺は窓ガラスを割り侵入しようとしたとき、須葉が窓ガラスを異能で蓄え、無くした。
「助けに行かなくていいのかい?君たちのお仲間はピンチだ!!」
ダダダ
須葉がピンチなことを言うと、下でACRの発砲音が3回鳴った。
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