第32話 管理棟の地下室、そこにいたのは…

「白田、頼む。」


俺は白田におぶってもらった。


管理棟の位置はケアセンターと立体駐車場に挟まれた立体駐車場よりの南側にある棟。


そのため、1階に行く必要があり、連絡通路がないため、外を経由して行く。


西棟4階に来たときみたいに白田は非常口から壁ジャンプをして、飛び降りた。


西棟1階に着くと、俺は白田から降りた。


管理棟はL字になっており、入り口はL字の1番上の部分なため、西棟からは立体駐車場と繋がる連絡通路から、外に出て向かう。


俺たちは音をできる限り出さずと言いたいところだが、白田だけなぜかずっと無音であり、俺が足でまといみたいになっているが、気のせいにしておく。


西棟と立体駐車場の連絡通路に向かう俺たちであるが、まだゾンビを見ていない。


見ていない理由としては、2つ。


1つ目は、山田たちが全員殺したかひきつけているか。


2つ目は、須葉が操って、管理棟で待ち伏せてしているか。


だが、後者の方が可能性しては高い。


それも警戒すべきではあるが、何よりも金属がたくさん使われているところに近寄らないことが重要となる。


「白田、なるべく金属が使われているところには近づくな。」


白田は変わらずの無表情で頷いた。


連絡通路を抜け、駐車場に出た俺たちはゾンビの体数を目視で確認した。


立体駐車場付近に3体、駐車場中央付近に4体、管理棟手前に1体。


管理棟までの道に1体。

無視して行く、しかないが、それよりも今日から感染が広がっているのに、外が妙に静かだ。


政府が仮にこの事態のことを予測していたのなら、静かなこともわかるが、よりによって、医療従事者を見捨てるのか?


白田に俺は肩をポンポンと叩かれた。


俺はどうした?と反応すると、白田は行きましょう、と右手の人差しで管理棟を指した。


いつの間にか両足が止まっていた。


時間ロス?

いや気にしないようにしよう。


俺は白田に人差し指と親指で丸をつくり、答えた。


俺たちが管理棟に向かうと、管理棟内から銃声が鳴っていた。


パンッ!


俺は瞬間的に走った。


管理棟に近づくにつれ、どんどん銃声は大きくなっていく。


Glock19 Gen5の音、山田たちが管理棟にいる!


俺は一度、振り返ると白田はちゃんとついて来ていた。


いや、ついてきているより、白田の足が俺より速いため、俺がついていきそうになっている。


それにしても、ACRやMP40、APC9の他の銃声が聞こえない。


温存しているのか?


それはない。

後者があっている場合、銃を温存する意味がない。


そうなると、他の銃は使い果たしたか奪われたか、落としたかになる。


ついてきてもらっている白田には悪いが出入り口付近で待機してもらい、単独で俺が入る。


山田と那斗を連れ出し、一度撤退。

体勢を整えてから、管理棟に再びのりこむ。


管理棟の出入り口につくと、俺は白田に待機と指示し、管理棟に入った。


最後、無表情の白田の顔が残念そうに見えたのは気のせいにしておこう。


管理棟内装は少し荒れ果てているぐらいで廃病院ではない。


パンッ!   パンッ!


向かっているときよりも、発砲数が減っていた。


ゾンビの数が減っているのか、残弾数が少ないのか…。


そんなこと、今はどうでもいい。

早く山田たちの状況確認と救出に向かおう。


俺は発砲される銃声を頼りに管理棟内を手探りで探す。


パンッ!


管理棟は1階と2階。

銃声は1階でも2階でもない。


そうなると、地下か?


俺は近くにある植木を見つけ、手に取った。


管理棟に地下があるとすれば、L字の下棒あたりにあるのが、妥当!


俺は植木の鉢の部分を思いっきり床に叩きつける。


パキンッ!!


叩きつけた瞬間、俺は床に伏せ、右耳を床につけた。


鳴り響いている。

下に空洞がある。


俺は1階と2階を繋ぐ階段を探した。


おそらくそこに地下室へと繋がる道があると思う。


それが仮に知られても良い地下室ならば…。


俺はL字の外側を出入り口を目指すような感じで走っていると、L字の角に地下へと繋がる穴が空いていた。


穴の手前には、ACRが落ちていた。


俺はACRを手に取り、穴へと降りる。


パキッ


俺は降りた際にガラスを踏んでしまい、音を出してしまった。


ヴゥー!


やば。

すぐ右隣にゾンビがいた。


俺は反射的に右に身体を向け、ACRの引金を引いた。


ダダ


発砲した2発の弾はゾンビの右肩と頭を貫いた。


ゾンビの右腕は下がり、地面に倒れた。


やらかしたな。少し焦ってしまったせいで、1発余分に撃ってしまった。


俺は辺りを見渡すと、地下もL字型でゾンビの遺体があちこちに、APC9も破損して転がっていた。


おそらく俺たちも地下に落として、地下に貯めておいたゾンビに始末させる。


これがやつらの策というわけか。


でもゾンビごときで俺はやられないよ。


パンッ!


Glock19 Gen5の銃声がまた鳴り響いた。


俺は鳴り響いた音を頼りにL字型の地下をどう探すかを考えていると、前方と右方からゾンビの集団が来ていた。


前方14体、右方11体。


右方からが妥当と言えるが、さっきの銃声的には前方からの方が近いだろう。


俺は前方のゾンビたちを正面突破することに決めた。


「来いよ!!楽しくなってきたじゃないか!!」


装弾数は30発。

今、確認したところ、ACRは21発残っている。


前方だけだと、全滅はさせられる。


まずは先頭から5体。


俺はACRを構え、ゾンビに標準を合わせながら、走り出す。


銃口初速は792-990m/秒(2,600-3,250ft/秒)で、このACRの銃口初速はさっきの発砲で896m/秒とわかった。


先頭のゾンビとの距離は11mで、約0.01228m。


全然、攻撃速度は間に合う。


さぁ、俺に見せてくれ。

アメリカ合衆国!!ACRのすごさを!!


ダダダダダ


先頭にいた5体の頭を5発で仕留める。


流石、ACRといきたいところだが、ACRが使われたアフガニスタン紛争にて、アフガニスタン、北部同盟側についたアメリカ合衆国は開戦時にアメリカ合衆国側の軍が3000人のところ最終的には、2448人が戦死した。


俺からしては結構良いと思っているが、結果的に見れば、ACRは良きものとは言いづらいし、アフガニスタン紛争はターリバーン側が勝利している。


生産中止されるわけもわかる。

(本当は民間向けなのに、妙に高くて買いづらく売れなかったのが、実際の理由だと思うが…)


そんなことより、残り9体。

とっとと、排除して山田たちの救助といこうか。

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