第31話 2人目の異能使いが立ち塞がる
誰だ?
見た感じは完全にゾンビ。
でも、俺たちを襲ってもこない。
その位置にいるなら、確実にドアを開ける音、小さい音でも反応できるはず…。
ゾンビと俺たちのいる場所の差は1mである。
聴覚が通常のゾンビと比べて、劣っているのか?
俺は白田にスルーしていくぞ、と伝えた瞬間…
「こ…んにち…は…。」
俺はそいつの心臓に向けて、SPAS12を構えた。
なぜ、喋れる?
そういう個体もいるのか?
それとも、まだ完全にゾンビ化していないのか?
「我々は…あな…たたちを…クラウン…に招…待し…ます…。」
俺はいつ襲ってきてもいいように構えていたSPAS12を下ろした。
「ぜひ、招待してくれ。」
味方か敵かもわからないまま、突入するのはかなりリスクが高いが、突破方法が見つからない今、危険を冒してまでやらなければ、先には進まない。
白田は大丈夫なのですか?という表情を一切出さなず、俺を見ていた。
やっぱり、何を考えているかわからんな。
すると、そのゾンビは入り口を指さすように、本棟が見える窓に体を向けた。
「こち…ら…が入り…口…となりま…す…。」
俺は入り口なんてどこにもないけどな、と思いながら、警戒心を高めていると…。
本棟の5階から、金属の階段らしきものが伸びてきた。
表面光沢がない銀白色、ステンレス鋼ぽいな。
それが西棟の4階まで着くと、ゾンビは動き出した。
「で…は…どう…ぞ…。」
そう言うと、ゾンビは窓を割り、金属の階段を上り始めた。
俺は白田に手で待てと伝え、階段を一段上った。
本棟から西棟の距離は本棟から東棟の距離とほぼ同じの21m。
その21mを落ちたら、18〜22mの高さから落下することになる。
そして、階段の横幅は約2m。
俺は相当な神経を使いながら、5段上がったところで白田に上がってこい、という合図を出し、引き続き、上っていた。
俺たちは約21mの階段を上りきると、本棟の5階へと着いた。
ここのリーダーらしきやつが患者を運ぶタンカーに足を組んで座っていた。
「待っていたよ。新たなる兄弟よ。」
首に炭化ケイ素でできたネックレスが3つ、両腕に超硬合金でできたブレスレットが4つずつ。
肩幅と比べて、腹部が少し膨らんでいる。
防弾服をきている可能性が高い。
「早速ですが、4つ質問します。」
「おやおや。早速過ぎるね。」
俺は5階に着いた瞬間、話しかけてきたリーダーらしきやつに質問した。
「質問を許可しよう。その前に…。」
グチュッ
やつはゾンビの頭を金属の塊で殴り潰した。
おそらくこれとさっきのはやつの能力と見て間違いない。
「1つ目の質問です。この階は安全なのですか?」
見た感じはゾンビではない人が17人いる。
そのうち、5人はこの病院のスタッフ。
4人は患者。
やつは最初からその質問をするのか、と驚いていた。
「ああ。安全だよ。ただここから下の階にはゾンビがいるね。」
占領するということは、この階が1番安全であるということ。
でも、6階を使わないということは6階に何かを隠しているか、それともただ単にゾンビがいるのか、どっちかはわからないが、とりあえず6階に入ってみなければ、わからない。
俺は6階に入る方法を考えながら。2つ目の質問をした。
「2つ目の質問です。この金属の階段はあなたが作り出したものですか?」
やつはタンカーから立った。
「ああ。そうだ。あれは医療機械器具から作り出したステンレス鋼製の階段だ。丈夫だっただろ?」
これはやつの能力だと、考えると最適回は加工。
白田は興味心身の顔でやつを見ていた。
白田?
白田の顔を見たのか、やつは地震ありげに話した。
「え?俺の異能を知りたいだって?しょうがないから、教えてやろう。錬金だ。」
卑金属から貴金属に変えているわけてもないから錬金ではなくないか?
まぁいい。
「3つ目の質問です。ここにいる人たちは静岡県立総合病院にいた生き残りですか?」
俺は周りにいる人たちの表情,仕草を確認したかったが、ここはやつの目を見るしかない。
「ああ。そうだ。ここにいる人たちは俺が助けた生き残りだ。」
やつの表情,仕草から見てこれは本当の可能性が高い。
だが、仲間ではないと言い切っていない。
「4つ目の質問です。屋上のヘリは使えるのですか?」
やつはニヤけながら俺に近づいてこう言った。
「動かない。いや、動けない。俺が固定させたからな。」
やつはニヤけていた表情から死んだ表情に変わった。
これ以上踏み込んだら、まずい気がする。
だけど、踏み込まないと先には進まない。
俺が踏み込もうとすると、白田が喋り出した。
「では、何をすればヘリをくれるの?」
白田!?
いきなりくれる前提はマズイと思うが…
「管理棟に落としたヘリの鍵を回収してきてくれたら、ヘリを渡そう。」
なんかいけた?
俺は念のため、周囲を見渡す。
周りにいる17人が襲ってくる気配は特にない。
「だが、その前に持っている武器を置いていってもらおう。」
ここで下手に戦っても、勝ち目はない。
「白田、渡すぞ。」
「あ、うん。わかった。」
俺はSPAS12を、白田は新刀とバレットMRAD をやつのところまで行き、渡した。
「よし、いい子たちだな。あとは名前だ。俺の名は須葉 伯道 (すば ほくどう)。」
名前を自ら明かしにきてくれるとは思っても、いなかったが、偽名の可能性もある。
俺から名前を言おうとしたが、白田が先に言った。
「私の名前は白田 美優。」
俺は続けて言う。
「名前は遊佐木 瑛太。」
俺がいい終わると、間もなく須葉は条件を言った。
「じゃあ、ヘリのの鍵を取ってきてくれ。」
俺たちは須葉が作った階段を降り、管理棟に行くか、山田たちと合流するか悩んでいると、白田は気まずそうな顔をしていた。
「白田。那斗たちと合流したい気持ちはわかる。だが、今は管理棟に鍵を取りに行こう。須葉の能力で、監視カメラを作って設置してあってもおかしくはない。」
白田の顔は気まずそうな顔から落ち込んでいる顔に変わった。
「いえ…。そういうことではありません…。私が遊佐木様に対して、タメ口を使ってしまったことです…。」
そういうことか。確かに敬語を使ってなかったな。
俺は気にしていないことを白田に伝える。
「ああ。あの状況だと、タメ口の方がいい。状況に応じて、変えてくれればいいし、元々タメ口でいいから。」
「はい。わかりました。」
この会話が須葉に聞かれてないと、いいがな…。
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