第30話 あいつの許嫁は人間なのでしょうか?
俺は左腕を垂直に上げる。
俺は非常口に入ると、階段などなかった。
何者かがこの病院を支配しており、なんらかの原因でヘリを飛ばせない状態でいるのか?
落ちてきた遺体から、カードキーを抜き取る。
落ちてきた人はここの病院の医師。
この人が反発して、落とされたのだろう。
問題はどうやって非常口の階段を無くしたか。
おそらく反対側も同じようになっている。
一度、戻って東棟か西棟から行けるか探ってみるか。
俺は引き返し、行けないことと東棟に向かうことを伝えた。
静岡県立総合病院の建物の配置は、
中心に本棟があり、その隣に西棟と東棟。
西棟の隣に立体駐車場。東棟の隣にケアセンター。
そして、本棟は北に長めのH型になっている。
現在地は本棟の北東の先端。
東棟と繋がる道は本棟の北東の先端。
俺たちはそこを通って、東棟に向かう。
本棟と東棟の距離は約21mといったところか。飛び移る系は無理そうだな。
となると、本棟の壁を登っていくしかないか?
俺は山田に上までどうやって上がる?と伝えようと前方の意識が抜けたとき、俺の足に金属製の紐状の何かに引っかかった。
カラン カラン カラン
「!?」
トラップ!?なぜ、ここに?
いや、その前に。
「分かれるぞ!山田、那斗は東棟から本棟に行けそうなところを探れ。俺と白田で西棟を探りに行く。」
みんなは頷き、俺たちは西棟に、山田たちは東棟に残り、捜索を始めた。
走りながら、白田は言った。
「あの1つ思ったことがあるのですが…」
「なんだ?」
「壁から登っていけばいいのではないでしょうか?」
それ俺が思ったことだ。
だが、上にいるやつらはおそらく敵対心を持って排除しに来るだろう。
登っている途中にバレたら、一貫の終わり。
「リスクが高い。それは最終手段としてとっておこう。」
「わかりました。」
今のところ、それ以外はなさそうだが…
ヴゥー!
ゾンビのお出ましかよ。
「白田、下がれ。俺がやる。」
数は今のところ2体で俺の銃は完全戦闘用散弾銃 SPAS12。
Special Purpose Automatic Shotgun
特殊用途向け自動式散弾銃
特徴としては、セミオート(自動式)とポンプアクション(手段式)を変えられるコンバーチブル機構があること。
セミオートは玉詰まりしやすい、定めづらいという欠点があるが、実際には玉詰まり以外関係ない。
俺はフォアエンド下部のボタンを押しながら、セミオートからポンプアクションに切り替える。
一気に2体仕留める。
バンッ!
ゾンビ2体は倒れたが、1体は仕留めれなかった。
「まだ生きているが、先に進むぞ。」
俺たちは来た道を走って戻る。
来たときはそんなにゾンビがいなかったためか、まだゾンビをそんなに見ていない。
曲がり角を旋回して曲がると、前方からゾンビが4体。
後方から3体来ていた。
前方の方が早くくる。
「白田、正面突破する。」
俺はSPAS12を構えようとしたが、白田が前にでていた。
「白田!?」
白田は刀でゾンビ4体の頭を斬り殺した。
「無事か!?」
「すみません。大丈夫です。」
「ならいいけど!?」
白田って、もしかして…
ヴゥー!
「とりあえず、西棟へ向かうぞ。」
俺と白田は走り出した。
この状況じゃ、まずエレベーターは論外。
となると、西棟の非常口の階段になるが、本棟と同じ。
立体駐車場の屋上が確か西棟とそんなに変わらないが、30m以上は離れているため、無理。
本棟からいけても2階までだから…
「遊佐木様、西棟の4階に行く案を1つ考えました。」
「!?聞かせてくれ。」
「はい。それは…」
白田が言おうとしたとき、後方から足の速いゾンビが接近していた。
「白田!先に行け!」
「わかりました。」
俺は白田に逃げてもらいたかったが、白田は背中に背負ってあったバレットMRADを手に持ち、引金を引いた。
ノースコ!?
ドダッ!
バレットMRADの銃弾は見事に足の速いゾンビの頭に命中し、転倒した。
「白田、ナイス?」
俺はあまりにもの技術に呆然としていた。
何が起きた?え?いや、中井ならできることだし、許嫁にもできて当ぜ…んなのか?
「遊佐木様、ゾンビが来ております。走りながらお伝えするので、行きましょう。」
「あ、ああ。」
とりあえず、これは置いておこう。
「白田。案とはなんだ?」
「はい。私が遊佐木様をおんぶして、4階まで上がります。」
ん?
「どうやって、上に上がるのかな?」
「壁ジャンプです。おそらく西棟の非常用階段も本棟と同じようになっていると思いますので、そこを使います。」
中井…。おまえの許嫁、すごいぞ。
俺たちは本棟と西棟を繋ぐ連絡通路を通り、西棟に入った。
上に行ければ、方法なんてどうもいい。
「白田。それで頼む。」
「わかりました。」
西棟の非常口は連絡通路を出て、右の突き当たり。
俺は手で右に人差し指を差し、いく方向を伝える。
右に曲がると、ゾンビはいなかった。
「白田、どれぐらいで登れる?」
「2階から4階ですと、4秒程度だと思います。」
俺は非常口のドアノブを握りしめ、開けた。
よし。開いていた。
「白田。行くぞ。」
「はい。」
俺は白田におぶってもらい、白田は壁ジャンプを始めた。
スタッ スタッ スタッ スタッ スタッ
白田におぶられながら、西棟4階まで上がってくると、俺は白田から降りた。
5回で上がれるとは。この子、人間なのか?
「よくやった。白田。」
問題はここからだ。ここからどうやって、本棟の屋上に行くか…
「本棟も壁ジャンプで行きますか?」
「じゃあ、頼む。」
これなら、二手に分かれる必要などなかった。
パンッ! パンッ!
銃声が2回響いた。
Glock19 Gen5の発砲音だ。
やはりあっちにもゾンビが行っているか。
リスクをかけて、一度、上まで行き、状況を確認しに行くか、それとも、山田たちと合流して行くか。
中井…おまえなら…
前者の方はヘリが最優先事項となる。
あいつなら、前者を選ぶ。
山田、那斗…
耐えてくれ。
俺たちは西棟4階の非常口から出ると、何者かが待ち構えていた。
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