第28話 信頼と裏切り、あなたはどっちを信頼するのか
グレネードが爆発しても、扉は壊れない位置だ。
櫂須磨が新刀で俺に斬りかかろうとしたが、薮野が右腕だけで櫂須磨の新刀を持っている右腕を抑えたため、寸前で止まった。
ドカーン!!
「外で惹きつけたゾンビはこれで全滅だ。」
俺はそういうと、生徒会の全員は驚いていた。
ドアを破壊せずにグレネードでゾンビを一掃させたのだ。
「櫂須磨。刀を下げろ。」
生徒会長は副会長にSFP9を預け、俺たちについて来い、と言い、俺たちはついて行った。
生徒会長の神崎 法政 (かんざき ほうせい)。
彼は2年生の前期から3年生の前期までの3回の間、生徒会長に選ばれている。
馴染みやすく冷静な判断できるところから人気を集めている。
俺たちを生かしたということは使えると判断したからであろう。
「神崎会長。質問があるのですが、みんなは無事ですか?」
今まで、そんなに喋っていなかった仙道が質問した。
何か糸があるのかを俺は考える。
おそらくみんなの安否な心配なだけだろう。
「ああ。不登校な生徒以外はみんな、無事だよ。」
神崎の表情が一瞬歪んでいた。
嘘だな。
一部、感染してしまった生徒がいるはず…
問題はその生徒たちをどこに隠しているかだ。
俺は使えそうな教室を思い返す。
いや待て。大学が始まるのは9時からなはず。
今は8:31。
全員が来ているわけはない。
となると、仙道を安心させるために言ったのか、感染者を隠すために言ったのかはわからなかった。
向かっている進路的には体育館ぽいが、それだと一度、外に出ることになる。
校舎と体育館を繋ぐ外の通路に着く前に神崎は静かに、と言った。
俺たちはその通路を通り、体育に入ると、推定370人がいた。
俺たちの大学は計780人。
半分もいない。
俺は仙道を騙しきれるのか?と思った。
「体育館に来て、何をさせるつもりなのですか?」
俺は神崎にそう聞くと、体育館の扉が閉まった。
バタン!
「!?」
「ハマられたか。」
さっきの生徒会7人うち、ここにいるのは3人。
神崎と風紀委員長の甲斐 乃咲 (かい のさき)、書記の久道 宮孤 (くどう みやこ)だけ。
すると、神崎は扉を叩き、扉の向こう側にいる生徒会の人に聞いた。
「おい!どういうことだ!?天堂!」
天堂 道哉 (てんどう みちや)、副会長。
長年、神崎を支えていた。
だが、山田の情報だと、対立している噂はあったらしいが、まさかこんなことをするとはな。
「会長。あなたたちとは気が合わない。だから、私たちはあなたを見捨てる。では、さようなら。」
俺は脱出方法を考えるが、窓はゾンビが入って来れないように外側から金属の板が何枚も貼り付けられている。
扉も鍵がかかっているが、無理やり壊そうとすると、ゾンビが寄ってきてしまい、この人数だと全員は逃げきれない。
武器もない今、ゾンビを引きつけるのはかなりマズイ。
武器があれば、問答無用で開けているが…
それは薮野は望んでなどいない。
仲間が危ない状態じゃない限り、俺はそんなことはしないと決めた。
俺が考えているうちに神崎が焦っていることに気づいたのか体育館の中はパニック状態になっていた。
「え?私たち閉じ込められた!?」
「どうすればいいだ!?」
体育館の中は不安に満ち溢れていた。
マズイな。声のボリュームがどんどん上がっていっている。
このままではゾンビに気づかれて、正面突破されて終わるぞ。
すると、薮野はもう隣にはいなかった。
「みなさん!落ち着いてください!!我々が対処します!!だから!落ち着いてください!!」
薮野…。
おまえの声じゃ、全員に響かない。
残念だが、これはもう…
俺が諦めかけているが、この状況でただ1人だけ、全員に届くとしたら…
「みんな!!落ちついて!!俺たちがどうにかするから!!落ちついて!!」
そう仙道が大声で言うと、みんなは一斉に仙道の方を向き、落ち着いた。
ああ。よくやった仙道。
この状況じゃ、おまえの声以外、通りはしない。
「神崎会長。1つ考えがあります。」
俺がそういうと、神崎は俺の考えを聞いたが…
「俺は生徒会以外、信頼する覚悟なんてない…」
これは妥当と言えば、妥当だ。
1番信頼しているやつに裏切られた直後に、ほとんど知らないやつを信頼していいのか…
それはほとんどの人がそう思うに違いない。
だが、ここで何かを信頼しなければ、人は崩れる。
「あなたは自分を信頼しなければ、もう会長として、立っていれない。でも、俺を信頼するかはあなた次第です。あなたが本当に会長なら、今ここで、決めてください。神崎先輩。」
神崎は決意すると、俺の考えにのった。
その後に薮野にも伝えた。
おそらく、やつらは白蓮大学を脱出する際の俺たちを囮にするはず。
そうなると、俺たちに死なれては困る。
食料や飲料は持ってくるはず。
12:36
扉が開いた。
銃装備の副会長の天堂と広報の杉本 付保斗 (すぎもと ふほと)、会計の名波 優希 (なべ ゆうき)、剣道部エースの櫂須磨が入ってきた。
「おい、おまえたち!膝まつけ!食料を持ってきた。下手な真似だけはするなよ?」
そういうと、全員が膝まつき、天堂に従う生徒は大学にある非常食を置いた。
俺は食料を置き終わると、立ち、隣にいた薮野を思いっきり蹴り、薮野は倒れた。
「天堂副会長。俺と手を組みませんか?」
俺がそういうと、天堂はそれにのったように喋った。
「中井、いいだろう。ついて来い。」
杉本と名波は俺に銃を向けながら、俺は天堂に着いていく。
「待て!中井!裏切りのか!?」
「俺は利益にある選択を選ぶ。おまえなら、知っているだろ?」
薮野は惜しむ顔をし、下を向いた。
12:39
俺は天堂たちの本拠地に着くと、そこには鴨島がいた。
「よぉ。中井、久しぶりだな。」
青灯の幹部、鴨島。
俺はこいつを完全に信頼しているわけではない。
なぜなら、紗耶香のイジメの原因はこいつから始まったからだ。
少なくとも仙道はこいつに支配されていた。
「久しぶりだな。」
鴨島は少しにやけながら、こう言った。
「まずは野田を殺したことに対して、褒めよう。おめでとう。そして、感謝する。野田は手に負えなかったからな。」
やはり野田は青灯だったか。
「ああ、野田はてこづったよ。それで俺は何を試されているのかな?」
俺は仲間に入る条件を聞き出すために言った。
「流石だ。俺が聞きたいのはなぜこっち側につくことにしたんだ?」
それは速攻で答えた。
「利益のためだ。」
「合格だ。おめでとう。中井。これからは俺たちのために働け。」
人は金で動くやつの方が信用しやすい。
俺は次に、こっち側で仲間になりそうな生徒会のメンバーを引き入れる行動にとった。
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