第4話 彼女は俺に朝飯をくれた
ふぅー。
とりあえず着くまでに約6分はかかるから、一安心しておこう。
俺は一度、落ち着いた。
昼飯は食堂で朝飯は耐えるしかないか。
すると、美憂ちゃんは鞄から何かを差し出してきた。
「飼い主様どうぞ。」
えーと、おにぎりが2つ。
「ああ、ありがとう。」
咄嗟の反応でお礼を言ってしまったが、これは俺が食べていいのか?
そして、両方取ってしまったが、もう片方は美優ちゃんの分なのではないのか?
聞いてみるのが手っ取り早いがどうなのだろう。
俺が起きる前(侵入後か侵入前)に済ましているのだろうか。
それとも済ましていなく、俺が1つだけ取ることと判断して、渡してきたのか。
片手はハンドルを握っていなきゃいけないし、その説もある。
仮に2つともくれる場合は鞄に自分の分があるかもしれない。
でもある場合は食べながら、運転すると思うからこの説はない。
あぁー。なんで後部座席に座ったんだ?助手席なら、鞄の中身が見れたのに。
て、俺、女の子の鞄の中身見るとかキモくないか?
キモいよな。
ダメだ。本人に聞かずに確認することは紳士でありたい自分にとってはできない。
なら本人に聞くしかないか。
俺は聞こうとしたが、さっきからの美優ちゃんの反応を見てきて、自爆したときの代償が重すぎることに気づいた。
あれ?これ、2つとも俺にくれた場合でも1つだけあげようとした場合でも死ぬよな?
つまり俺はこの時点で詰んでいる。
本人に聞くという選択肢は自爆するという意味なのだ。
そして、自爆するということは序盤から気まづくなる。
すでに気まづい状態ではあるのだが、それをさらに悪化させてしまうことだけは何としても避けなければならない。
だから俺は美優ちゃんが2つともくれたということにすればいい。
そして、車内で食べる時間があるかを確認するために俺はスマホを開いた。
8:55
よし時間はあるな。そして、食べ始めようとしたとき。
美優ちゃんの口が動いた。
「すいません。飼い主様。私がお作りしましたものは食べられませんよね…。すぐ、回収しますので、お待ちください…。」
あ、やべえ。2分ぐらい考えているうちに勘違いさせてしまった。
ここはいっその事、考えていたことを全てを話して誤解を解くかそれとも誤魔化して、考え事をしていだけと言うか。
俺は数秒間考え、どうするかを決めた。よし、これでいこう。
「いや、食べるよ。でも食べる前に何の具材が入っているかな?と予想して当てるゲームをしていただけだから心配しないで。ちゃんと食べるから。」
俺は速攻で考えてでてきた言い訳に聞こえる言葉を言ってしまた。
最後の方が完全に食欲無さそうな感じやん…。
やらかした。俺は恐る恐る美優の顔を見る。
すると、美優は好奇心旺盛な顔をして応えた。
「左手で持っていただいている方がキムチでございまして、右手で持っていただいている方がイナゴでございます。」
なんか生き生きと喋ったな。
左手の方のおにぎりはキムチ。
俺が辛い物好きっていうことは親から聞いているのか。
でも右手の方のおにぎりはイナゴって言っていたよな?
俺、イナゴ食べたことないぞ?
これも親の仕業か?
それとも意図して入れたのか?
うーん。親の仕業にしか見えないのだけど。
俺がチャレンジャーということを伝えてイナゴにしてみたら?とか言って、無理矢理イナゴを入れさせたみたいな感じなのか?
それだったとしても、食べる事には変わりない。
せっかく俺のために作ってくれたのだから、食べないと気が済まない。
実際に勘違いもさせてしまったし、申し訳ないと感じている。謝るか?
いや謝ると余計にややこしくなるだけだ。俺は余計なことを考えていることに気づき食べ始めた。
8:57
俺は美優ちゃんが作ってくれたおにぎりを食べ終え、窓の外を眺めていると、1つやばいことを言っていたことを思い出した。
それは7階から美優ちゃんにおんぶされながら、飛び降りたときのことだ。
俺はその時、「heaven's gate 開門します。」という意味不明なことを言っていた。
しかも小声ではなく、普段の声の大きさより少し大きいくらいでだ。
間違いなく美優ちゃんには聞こえている。
そして、近くで見ていた人にも聞こえている。
マジで恥ずい。
俺の顔がどんどん赤くなっていく。
部屋のお隣さんが見ていると考えてしまうともう顔を合わせられない。
うん?それは美優ちゃんに頼めば…。
いやいやダメだろ?
俺が話さないと美優ちゃんが気まづいだろ。
はぁ、頑張るしかないか。
お、そろそろ、中部地方トップクラスの我の大学、白蓮大学が見えてきた。
知らない人の多くが「はくれん」と読むだろう。
だが、しかし読み方は「はくれん」ではなく「びゃくれん」である。まぁ有名な大学だから、知らない人は少ないと思うが…。
いやそれでも知っていても読み間違える人はいるか。
「飼い主様。そろそろ白蓮大学にお着きになります。」
そう美優ちゃんが言うと白蓮大学が見えてきた。
美優ちゃんは読み間違えなかった。
流石に俺の大学の名前ぐらい知っていて当然か。
すると、美優は大学内へと車で入った。
はい?美優ちゃん!?俺は慌てて美優ちゃんを止めに入る。
「美優ちゃん!?なんで大学内入ってるの!?」
俺は内心パニック状態に入っている。
どういうこと!?
確か白蓮大学には駐車場はあるけど、一般人及び生徒と保護者の車の駐車は禁止だったはず。
すると、美優は応えた。
「飼い主様。ちゃんと大学側に親御様が許可をお取りになられているので、大丈夫です。」
おい親。
そこまで読んでいたのか?と言わんばかりではあるが、なら大丈夫か。
俺は一安心した。
だが…。
この状態で外に出るのマズくないか?
絶対、俺の友達(男のみ)に見られるって。
しかも女の子連れているから余計に揶揄われたり、盛り上げられるって、詰んだのかな?俺よ。
そして、どうだ?俺よ。
女の子と一緒にいる気分は。そうだな。俺よ。良い気分だ、とキモいことを1人で演じていたら、いつの間にか車は止まっていた。
「飼い主様。行きますよ。」
美優が車の扉を開けて待っていた。
「ああ。今、出るよ。」
て、行きますよって、言ったよね?
今、そう言ったよね?え?ついてくるの?
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