第23話 今日のカレーはいつもより甘く、少しだけしょっぱかった。

エルル様が国王を殺しかけた件についてはエンディミールが何とかしてくれました。

偶然王宮に雷が落ちたことにでもしてくれてるのでしょう。

しかし、私としては今それ以上に懸念すべきことがあります。


「エルル様、夕食のご用意が出来ました。本日はエルル様のお好きなカレーライスです。」


エルル様の部屋のドアをノックし、声を掛けました。

しかし、返事がありません。


「入りますよ、エルル様。」


私はドアを開けようとしましたが、鍵がかかっていました。

普段であれば、私が起こしに来る時の為に鍵をかけずにいらっしゃるので、わざわざ鍵をかけてることは今まで一度もありませんでした。

私はつい扉の前で立ち尽くしてしまいました。

おそらくはただ一人になりたいだけなのだとは思いますが、どうしても拒絶されてしまったように感じてしまったからです。

本日の一件、最後にエルル様は謝ってくださいましたが、私にはただの謝罪には聞こえませんでした。

どちらかというとこれまでのことより、これからのことに謝られたように感じたのです。


(果たして、エルル様は何について謝られたのでしょうか・・・。)


私は開かれない扉の前でしばらくの間、何もできず立ち尽くすことしかできませんでした。


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「エルル様、夕食のご用意が出来ました。本日はエルル様のお好きなカレーライスです。」


ルゥが晩御飯に呼びに来てくれたけど、今の私はご飯を食べるどころか誰かと会う気にもならなかった。

ルゥの呼びかけに返答することもなく、抱き枕を抱きしめながら布団に引きこもっている。


「入りますよ、エルル様。」


ルゥがドアを開けて入ってこようとしたけど、鍵をかけているから入ってくることはなかった。

これまでかけたことのない部屋のカギをかけてしまうほど、今は誰かと顔を合わせたくなかった。

ルゥの前であそこまで頭に血が上ったことは無かった。

今更あんな姿を見たところでルゥが私を怖がったりなんかしないのは頭では分かってる。

それでも内心、ルゥに怖がられていたらと思うと、顔を合わせるのが怖かった。

抱き枕を一層強く抱きしめた時、部屋のドアが再度ノックされた。


「エルル様、ドアを開けなくても結構ですので、もし起きていたら私の話を聞いていただけませんか?」


私が反応を返さなくてもルゥは言葉を続けた。


「エルル様が今、誰ともお顔を合わせたくないのは何となくわかります。しかし、なぜ落ち込まれているのかは私にはわかりません。国王を殺そうとしてしまったからなのか、今まで私に見せないようにしていた一面を見せてしまったからなのか、或いはその両方なのか・・・。ただ、理由は関係ありません。私にとって、エルル様はどこまで行かれても、何をされていてもエルル様です。それだけは絶対に忘れないでください。それでは私は食堂に行っておりますね。」


やがて、ドアの前から気配が消えると、私は泣きながらつぶやいた。


「ありがとう、ルゥ。」


その後、2時間たった後に食堂に向かった私に、ルゥは何も言わずに微笑んでカレーをよそってくれた。

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