第16話 クレアの魔術訓練
グラディオスとの話し合いの翌日の放課後、私は早速クレアに魔術を教えるために練習場に来ていた。
ちなみに今、ルゥはエンディに呼ばれているため、珍しく一緒にいない。
「それではエルル先生!今日はよろしくお願いします!」
クレアがお辞儀をしながら元気に言った。
「先生はやめて。とりあえず今がどの程度できるか把握してないから適当に初級魔術を撃ってもらってもいい?」
そう言って、私は練習場に設置してある的を指差す。
クレアは「分かった!」と返事をして初級魔術『エアカッター』を詠唱し始めた。
「我が身に宿る風よ、鋭き刃となりて切り払え!『エアカッター』!」
クレアが放った『エアカッタ―』は、ギリギリ的の端っこを切り落とすことができた。
「うん、大体わかった。とりあえず的に当たるかどうかは気にしなくていいから、詠唱する時に体内の魔力の動きに集中してもう一回やってみて。」
「体内の魔力の動き?」
クレアは首をかしげている。
「そう。現状だと呪文の暗唱に集中しちゃって、対象に対する意識が疎かになっちゃってるから、対象の視認に集中できるように、先に魔力の練り方を覚えちゃったほうがいい。」
「え、待って。魔力って自分の意思で動かせるの?」
今度は私が首をかしげることになった。
「いや、魔術の即発動をするためには魔力を自分の意思で動かして、魔術を発動する形に練らないといけないんだけど・・・。」
「そうなの!?何回も使ってたら自然と即発動できるようになるって教えられたんだけど。」
「それって教科書にもそう書いてあるの・・・?」
「うん、っていうかエルルちゃんが来た日の授業で言ってたと思ったよ?」
「あー・・・。(暇すぎてほとんど聞いてなかったなんて言えないなぁ・・・。)」
バツが悪そうに眼をそらした私をクレアがジトーって感じの目で見てくる。
「まぁ、私がちゃんと授業聞いてたかはどうでもいいとして・・・。基本的に詠唱は魔力の練り上げのイメージを掴みやすくするためのものだから、魔力に練り方を覚えたらこんな感じで適当なワードに連動させて撃つことができるよ。『カミナリ』」
そう言って私は決闘の時にも使った初級魔術の『サンダー』を適当な単語に連動して放った。
当然、私が放った『サンダー』は訓練場にある的のうちの一つを綺麗に撃ち抜いた。
「あとはまぁ簡単なアレンジ程度ならできるようになるよ。」
そう言って今度は別の的に向かって『サンダー』を放った。
今回の『サンダー』は途中まで的を少しそれたところに飛んで行っていたけど、的がある手前辺りで急に方向転換してさっきと同じように的を破壊した。
「これってホントに同じ初級魔法の『サンダー』?」
「そうだよ。二回目はちょっとだけアレンジ効かせて曲がるようにしたけどね。」
「そんなことができるんだ・・・。」
クレアは目から鱗が落ちたかのように感心したまま放心していた。
「一回魔力を動かすコツを掴んだらかなり自由がきくし、他の魔術の習得もしやすくなるからさっき言ったとおりに体内の魔力に集中して詠唱してみて。」
「わかった!やってみるね。」
そう言ってクレアはもう一度『エアカッタ―』を詠唱したけど、今度は的を大きく外れた。
「どう?感覚掴めそう?」
「うーん・・・。なんかもやもやしたものがある感じはするんだけど・・・。」
「初めてでそこまで掴めてるのならそのもやもやがどう動いてるのかに集中してみて。」
「わかりました!先生!」
「だから先生はやめて。」
そうして、クレアの魔力の感覚を掴む訓練は陽が沈み始めてルゥが合流するまで続いた。
結局、魔力を動かす感覚はつかめなかったけど、クレア曰く魔力の存在は結構はっきりわかってきたらしい。
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